膨大な時間を費やして学術論文を完成させ、研究を世界と共有するため、オープンアクセス(OA)誌で論文を公開しようとする際、論文掲載料(APC)の高さに疑問を持つかもしれません。
オープンアクセス出版に掲載料がかかる理由と、それがコストに見合うものかについての考え方について解説します。
OA出版はなぜ高いのか?
OA出版の最大の特徴は、読者に無料で研究論文が公開されることです。この出版形態は、ユーザーが定額料金を支払うか、各論文をダウンロードする際に料金を支払うことで論文にアクセスできる従来の方式とはまったく異なります。
OA方式であれ、従来の方式であれ、ジャーナルの出版費用は誰かが負担しなければなりません。オープンアクセスの場合、料金は読者ではなく著者が支払います。
論文の出版に関連する諸経費には、以下のような使途があります。
- 事務と運営
論文を投稿する際に支払う投稿料の一部は、ジャーナルの運営費に充てられます。
- 編集と校正
一流のジャーナルであれば、厳密な編集・校正プロセスを経て論文が掲載されます。投稿先が品質保証プロセスを実践しているジャーナルか事前に確認しましょう。
- 盗用・剽窃のチェック
ほとんどのジャーナルの必須要件となっている剽窃チェック。投稿前にも剽窃チェックツールを使って自分で確認している著者がほとんどですが、ジャーナル側でも投稿された論文がオリジナルであり、引用が適切にされていることを確認します。
- 査読プロセスの管理
同じ分野の研究者から査読を受けていることが、出版後の論文の信頼と評価にとって不可欠です。出版社は、適正な査読者をアサインし査読プロセスの進行を管理しなくてはなりません。
著者が負担する掲載料の額はジャーナルによって大きく差があり、支払いが特に経済的に困難であると証明ができる著者には、掲載料を免除とするOAジャーナルもあります。また、掲載料のかかるジャーナルを選んだ際に、大学やその他の組織の支援制度を通じて補助を受けられるケースもあります。
OA出版は費用に見合う価値があるか?
掲載料が高額と感じる研究者も少なくないですが、オープンアクセスで論文を出版するメリットは多くあります。
– 人目につく
OAジャーナルで研究を発表することで、論文がより多くの人の目にとまり、従来型の発表と比較してより多くの読者を獲得できます。それにより、国境を越えた関心を呼び起こすことも可能です。
– 共同研究者と出会える
著者の知名度が上がれば、他の研究者と知り合うチャンスも増えます。同分野の研究者との共同研究に興味があるなら、OAジャーナルへの投稿は人脈作りに役立つかもしれません。他の専門家と協力することで、そのテーマに関連するフォローアップ研究を行うこともできます。
– 出版までの時間が速い
ほとんどのOAジャーナルはオンラインで発行されるため、投稿から出版までのターンアラウンドタイムは、従来の紙媒体のジャーナルよりもはるかに速くなります。つまり、より早く研究成果を一般に公開することができます。
- 被引用数が増える
研究が引用されることは、その研究が評価されていることを示す最も重要な指標の一つです。被引用数は研究者者としての地位の確立や、継続雇用や昇進の決め手となります。
- 助成金の要件を満たす
助成金を提供する機関は多くの場合、研究発表後に研究内容を一般公開することを義務付けています。OAジャーナルで論文を公開することで、許諾を取ることなく、この要件を満たすことができます。
- 研究情報がすべての人に開かれる
オープンアクセスで出版することで、その研究情報を必要とするすべての研究者に提供できることになります。誰もが簡単に研究情報にアクセスできる社会の構築に貢献できるのです。OAジャーナルは、経済状況や地理的要因、その他の理由に影響されず、誰もが必要な情報にアクセスする機会を広げます。
オープンアクセス出版は圧倒的なコストが取りざたされることもありますが、そのメリットは投資する金額に値するという見方もできます。研究を一般に公開することで、世界中の人々に貢献し、著者としての評価を高めることができるのです。支払う論文掲載料(APC)が有効な投資となるよう、研究分野に最も合致した、評価の高いオープンアクセスジャーナルを選びましょう。
まとめ
オープンアクセス出版では多くの読者を獲得できますが、論文掲載料(APC)が発生する場合があります。掲載料が発生する理由と、費用に見合うだけの利益を得られるかについて解説します。