「翻訳」を構成する3つのT

translation_transliteration_transcreation

ある言語を他の言語に置き換える際の手法は、一般的に「翻訳(Translation)」と言われますが、Tから始まる3つの英単語に分類できるとも言われます。トランスレーション(Translation)、トランスリタレーション(Transliteration)、トランスクリエーション(Transcreation)の3つです。それぞれの違いがわかると、文章を作成する際に注意することや、翻訳を依頼する際に知っておくべきことが見えてきます。

■ トランスレーションとは

トランスレーションとは、日常的に「翻訳」と訳され、元の言語の意味をくみ取って、異なる言語に置き換えていくことを指します。皆さんも、例えば英語の文章を翻訳したい時に、インターネットで翻訳ツールを使うことがあるかもしれません。

しかし、英語をカタカナで表記し直しただけのものや日本語に直訳しただけのものが翻訳の結果として表示されて、がっかりした経験はないでしょうか。これは実質的なトランスレーション(翻訳)ではなく、トランスリタレーション(文字転写)やトランスクリプション(音声転写)がなされているということです。表記文字や発音を他の言語に書き換えただけでは、翻訳とは言えません。「翻訳」と呼ぶには、文字の「意味」が他の言語の文字で置き換えられていなければならないからです。

トランスレーションでもう一つ重要なことは、文意に含まれる「程度」もくみ取らなければならないという点です。例えば、英語で「You’re dead meat」といった場合、「大変な目に遭う(場合によってはケガをする、もしくは命を落とす)から、十分に気をつけろ」というような意味合いになります。これを単語単位でトランスレーションをすると「あなたは死んだ肉です」と、意味をなさない日本語になってしまいます。元の言語が持つ意図とともに、程度あるいは度合いをも含めて異なる言語で置き換えることがトランスレーションであり、翻訳者には正確性に加え、慣用句や文脈、文章全体の意味をも踏まえて置き換えをすることが求められます。

■ トランスリタレーションとは

トランスリタレーションとは「文字転写」と訳すことができます。これは、翻字、字訳、音訳とも訳され、元の言語で表現した言葉の意味に手を加えられたくない場合、例えば、住所や名前などを別の言語で表現したい場合に用いられます。ある言語で書かれた表記を、発音と一致するように異なる言語で表記し直すことを指します。

難しいのは、元の言語を翻訳対象言語に置き換える際に、同じ文字がない場合です。漢字をアルファベットに置き換えることなどがこれに相当します。この場合は、極力齟齬がないよう置き換えをしていきますが、翻訳者によって表記が異なってしまうことがあります。

■ トランスクリエーションとは

トランスクリエーションとは、トランスレーション(翻訳)とクリエーション(創作)を掛け合わせた造語です。元の言語で作り出されたもの(クリエーション)を、他の言語や文化に適合させて再構成することを意味します。わかりやすい例は映画の字幕でしょう。セリフと字幕の言葉は一致していませんが、意味はわかります。メッセージの意味を的確に伝えるために直訳ではなく、意訳されているからです。映画のようなエンターテインメントの他にも、マーケティングのような、比喩的で文化に根付いた表現が用いられる分野で多用されています。

往々にして比喩や隠喩、直喩、口語などが含まれている文章は、元の言語やその文化を理解していない限り、意図をとらえるのは非常に難解です。トランスクリエーションを担当する人には、元の言語に含まれるこれらの意図を損なうことなく的確にとらえ、かつ、置き換え先の言語を使う人たちの文化になじむメッセージを構成することが求められます。

■ あなたは何を重視する?

いわゆる翻訳とひとくくりで言っても、言語を置き換えていくプロセスにはトランスレーション、トランスリタレーション、トランスクリエーションという要素が含まれています。意図したメッセージを他の言語に置き換えて伝えるには、正確さが何よりも重要です。その点で、トランスレーションは基本です。その上で、あえてトランスリタレーションによって、元の言語をそのまま表記し直したほうがよい場合もあるでしょう。

一方で、比喩的表現が多い文書や文化理解が必要な文書であれば、トランスクリエーションの割合が多くなります。そうなると、非常に完成度の高い訳文を得ることはできますが、トランスレーションよりも翻訳者の知識や経験が求められ、かつ時間もかかるため、その分、費用もかさみます。3つの要素のうち何を重要視するか、何に費用と時間をかけるかで、翻訳の出来が変わってくるのです。3つのTを覚えておいて損はありません。

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