カテゴリーアーカイブズ: 世界のコトバ事情

Created 2017 06 15

中国のアフリカ諸国への600億ドルの支援 その狙いは

中国が改革開放政策を実行してから丸40年。中国経済は急成長を遂げ、学術分野での存在感も大きく増してきました。研究および教育への集中的な投資も奏功し、今や科学・工学分野の論文発表数は世界首位です。

勢いは国内にとどまりません。中国は、開発途上国同士が2国間、あるいは多国間で自律発展のためにお互いの技術などを活用して開発に役立てようとする「南南協力」を促進しています。近年は「一帯一路」構想のもと、発展途上国に対する技術支援、資金援助を行っていますが、特に南アジアおよび南アフリカの発展に向けた協力に力を入れています。2018年9月に開催された「中国アフリカ協力フォーラム((FOCAC, Forum of China-Africa Cooperation)北京サミット」では、アフリカ諸国に600億ドル(約6兆6千億円)の経済協力を行うと表明し、世界を驚かせました。はたして、中国の思惑はどこにあるのでしょう。

■ アフリカの次世代研究者の育成に貢献?

600億ドルの資金拠出の内訳には、無償資金協力や無利子融資、中国企業による対アフリカ投資の推進などが含まれており、500億ドルは中国政府、残りの100億ドルは民間企業による投資とされています。習近平国家主席はフォーラムの基調演説で、アフリカ諸国と密接に協力し、今後3年間および一定期間において「8大行動」を重点的に実施すると表明しました。「8大行動」とは、2015年のヨハネスブルグ・サミットで確定した中国・アフリカ「10大協力計画」の推進を踏まえたプログラムで、(1)産業促進、(2)インフラの相互接続、(3)貿易円滑化、(4)グリーン発展、(5)能力開発、(6)健康・衛生、(7)人的・文化的交流、(8)平和・安全保障という8つの項目を実施すべく、中国が政府援助、投融資などを通じてアフリカ諸国との協力を図るものです。

中国は、この一貫としてアフリカ諸国の人材育成、援助、雇用増に力を入れています。アフリカの研究者の科学技術の知識レベルを引き上げるプログラムにおいて、教育は重要な位置に置かれており、アフリカの若者に教育を受ける機会が提供されるだけでなく、Young Scientists Exchange Program(若手研究者交流プログラム)を利用して、最大1年間中国で学ぶこともできるようになっています。

「8大行動」の「社会開発分野」には、アフリカ諸国の1000人の優秀な人材に研究の機会を提供し、5万人に中国政府の奨学金を授与し、さらに5万人にワークショップやセミナーなど短期の教育機会を提供する計画があると記されています。特に、アフリカの農業近代化に向けた協力を拡大したいと考えている中国は、既にアフリカ14カ国に農業技術普及のためのモデルセンターを建設していますが、さらなる農業技術者の育成に向け、博士課程修了者が、中国あるいはケニアのジュジャにある農業技術のジョモ・ケニヤッタ大学などのアフリカの研究機関で学ぶための奨学金に応募することができるようにする予定です。アフリカの農業を積極的に支援するだけでなく、「8大行動」を通して中国・アフリカの関係を強化し、米国との貿易戦争が泥沼と化している中でも大国中国および中国企業の影響力を強めたいとの思惑が見て取れます。

■ 中国の発表への反応は

この中国の発表に、世界中の研究関係者からはさまざまな声が上がっています。大半はこれを好意的に受け止めているようです。例えば、ガーナの研究者は、海外だけでなく、国内での教育への資金援助も含まれていることが喜ばしいことだと言っています。アフリカでの人材流出が深刻な問題だと考えている彼は、この資金援助が、国内での奨学金や教育の機会が人材流出を止めることにつながると期待しているのです。また、南アフリカの大統領であるシリル・ラマフォサ(Cyril Ramaphosa)も、アフリカ全体の教育と雇用の機会を増やすことにつながるだろうと述べ、強い関心を示しています。さらに、中国のアフリカ政策を研究するアメリカの研究者は、中国が一帯一路構想にアフリカの研究者を取り込んでいくことを重視していると感じたとのことです。同時に、能力開発が大きく強調されるようになったことは、アフリカにとって重要な成果だとも言っています。

一方で、懐疑的な見方もあります。持続可能な開発を研究している研究者は、中国がアフリカに建設している農業技術普及モデルセンターは中国の商業利益の象徴だと言います。つまり、この新たな開発計画によって中国企業がアフリカの労働力をさらに利用しやすくなるのではないかと考えているのです。しかし、国際的な食料不足が懸念される時代にあって、農業開発は中国・アフリカ双方にとって関心が高い分野と認識されているのは確かです。

■  日本の対アフリカ政策

実は、対アフリカ支援においては、米中ではなく日中が鎬(しのぎ)を削っています。今回の中国支援が発表されたFOCACは中国が主導して設立されたものですが、日本も長年、同様のプラットフォーラムを主導してきました。アフリカ開発会議(TICAD, Tokyo International Conference on African Development)です。TICADは1993年に第1回目が「アフリカの自主性尊重」を前提にアフリカ地域の開発に協力することを目的に開催されて以降、5年ごとに開催され、日本はアフリカ支援の先頭に立ってきました。しかし、TICADの取り組みが進むにつれ、アフリカの抱える困難かつ複雑な問題が明らかにされることとなってしまっています。そこに目覚しい進出をしてきた中国。欧米諸国に「中国新植民地主義」と批判されつつも、アフリカ諸国が中国のアプローチ(資金援助)を積極的に受け入れているのが現実です。中国は、内政不干渉原則を掲げ、アフリカの資源と市場の確保・拡大に向け、FOCACにおいてアフリカ諸国との関係強化を図っています。既に、FOCACは開催頻度(3年ごと)と投資額でTICAD(2016年からの3年間で総額300億ドル投資)を上回っているのです。

近年、中国の開発援助を受けたアフリカの発展途上国が、償還が困難な負債を抱える「債務のわな」の問題が顕在化しています。中国マネーへの依存が懸念されているとはいえ、民生分野での協力、人材支援なども含む多面的支援を表明した「8大行動」への期待が寄せられているのは事実であり、アフリカの研究者が、今後国際共同研究の新たな機会を得られるであろうことは希望です。学術知識の蓄積に国際的な共同研究がもたらす恩恵はだれもが認めるところです。今後、アフリカ支援において日本と中国が協力していく可能性もあるでしょう。アフリカの資源開発だけでなく、人材開発や交流プログラムへの投資が成果につながることが期待されます。

研究論文における結果と考察

研究成果を伝えるための研究論文は、序論(問題提起・仮説・目的)・方法・結果・考察・結論で構成されることが一般的です。学術論文の代表的な構成とされる「IMRAD形式」では、序論・方法・結果・考察となっていますが、論文を書くためには基本的な枠組みを理解しておくことが重要です。その上で、投稿する学術雑誌(ジャーナル)によっては書式に多少の差があるので、論文を執筆する前に投稿先の投稿規程を確認しましょう。中には、結果と考察を1つのセクションで書くよう指示しているものもありますが、今回は、結果と考察を分けて書く方法を見てみます。

■ 「結果」と「考察」の違いと書き方

まず、「結果」は実験などの結果または観察記録などであるのに対し、「考察」は結果に基づく分析や議論です。結果は、淡々と事実を述べればよいのに対し、考察は論理的な組み立てが必要です。そのため論文の評価では、考察が重要視される傾向にあります。結果と考察をまとめるか、分けて書くかは投稿規程に順ずるべきですが、どちらの形式にも長所・短所があります。結果と考察をまとめた場合、結果に応じた考察が続けて書かれるため、読者は流れをつかみやすくなります。結果と考察を分けた場合、考察が連続的に書かれるので読者は研究全体を俯瞰し、把握しやすくなる反面、何度も考察に関連する結果の箇所に戻って読み直さなければならないかもしれません。結果と考察の書き方としては、いずれも間違いではありません。

ここでは、結果と考察を2つに分けて書くときのチェックポイントを並べてみます。

■ 結果と考察を効果的に分けるために

結果と考察を分ける場合には、以下のことに注意します。

1.結果には、実験の結果、データを提示することに徹する。
2.結果の説明は、考察に記す。
3.結果で提示した情報を考察で繰り返さない。

結果は簡潔に伝える
結果は、論文の要であり、実験の結果あるいはデータを簡潔に示す部分です。

結果に書くべきこと

1.重要な研究結果
2.研究の意義を示す統計分析
3.データは図表やグラフを用いて分かりやすく表示

データの重複記載には注意しましょう。データを示す手段として、文中に記載するか、図表のどちらで表示するか、適切な方法を個々に検討します。結果の中に同じデータを別の方法で示すことはしません。

考察はインパクトが大切

考察では、結果、つまり観察された現象を説明し、なぜその結果となったのか論拠を示さなければなりません。特に、実験がうまくいかなかったり、仮定していた結果と異なったりした場合、考察はより重要視されます。

考察に書き込むこと・注意すべきこと

1. 序論で提起した問題の解決にどのように貢献したか(取り組んだか)を述べる。
2. 結果に示したデータなどに基づき、研究で明らかになった点、導かれた主要な所見を強調し、結果を批判的に分析する。
3.研究成果を文献や既存の知識で裏付けながら説明する(関連する研究の所見との比較検討も含む)。
4.今後の研究の方向を示す(今後の研究に向けた提言など)。
5.序論や結果で示したのと同じ情報を繰り返し述べない(必要な場合には簡潔に)。

考察では、序論や目的で提起した問題、結果、そして導かれた結果がどのような学術的意義を持つのかを検討します。その際、新しい問題や関係のない論議などを提示しないように気をつけます。結果と考察のどちらに何を書くか悩んだときは、ここに示すチェックリストを確認してみてください。

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欧州大学協会が学術出版社に対する訴状を提出

世の中で「海賊版」といえば批判されるのが普通ですが、学術出版において購読費を支払うことなく学術論文が入手できる「Sci-hub」は、海賊版サイトと呼ばれながらも研究者の支持を得ており、逆に、Sci-hubを提訴している大手学術出版社のエルゼビアが大学や研究者から批判されるという事態となっています。オープンアクセス化が進む昨今、学術出版社への批判および圧力が強まっています。

10月30日、欧州48ヶ国の800校以上の大学と33の学長会議が参加している 欧州大学協会 (European University Association; EUA)がEuropean CommissionのCompetition部門にエルゼビアの親会社RELXグループを含む大手学術出版社5社に対する申し立てを提出しました。その中には、学術出版における透明性と競争の欠如に関する問題点が指摘されています。

■ 学術出版社への批判=高すぎる購読料

そもそも、なぜ学術出版社への批判がここまで高まっているのか?そこには学術出版社による購読料の値上げが大学や研究機関の許容範囲を超えてしまった現実があります。大手出版社の多くは、購読率の高い人気学術雑誌(ジャーナル)と比較的読まれていないジャーナルを抱き合わせで購入させるパッケージ販売を行っています。読まないものは要らないから安くして、と言いたいところですが、1誌ごとに購入したとしても購入費は膨らむ一方。購読料の度重なる値上げに大学・学術機関なのに学術ジャーナルが購読できないという事態に陥っているのです。欧州の大学から購読をボイコットされたことや、Sci-hubとの裁判で話題になることの多いエルゼビア社の購読料の高さは有名ですが、他誌の値上がり率もかなりのものです。

日本の状況を例に挙げれば、9月29日の日本経済新聞の記事には、“大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)によると、海外の自然科学系学術誌の2018年の年間購読料の平均は1誌あたり平均2895ドル(約32万円)。1990年の9倍に達した。1年間で平均8%の値上げで、大学など研究機関が抱える研究・資料購入費を圧迫している。”と書かれています。この記事の元となったJUSTICEのデータを見ると、値上がり率は分野によって異なるものの、1990年から2018年までの29年間における自然科学系・海外学術雑(冊子)の毎年の値上げ率の全分野平均は8.17%、人文科学系は8.67%。冊子ほどではないにせよ電子ジャーナルの価格も推移しており、2012年から2018年の7年間の毎年の値上げ率の全分野平均は自然科学系で4.40%、人文社会科学系で5.46%となっていました。また、学術出版社は基本的に購読料から利益を得ていますが、11月21日のNewScientistの記事によると、学術論文の出版社の利益率は石油産業や金融を上回る40%におよぶそうです。これでは大学や研究機関が怒るのも無理はありません。

■ 欧州の大学、学術出版ビジネスにおける競争の欠如を懸念

この継続的な値上がりは世界共通であるため、各国の大学や研究機関は財政を圧迫され、EUAは訴状を提出するに至ったのでしょう。そこには、学術論文の出版市場が寡占状態にあること、公的な資金により行われた研究の論文により出版社が利益を上げていること、購読契約における価格の透明性が損なわれていることなど8項目におよぶ問題点につき、項目ごとに具体的な説明が書かれていました。この訴状で対象とされたのは、RELXグループ(英)、Taylor & Francis(英)、Wiley-Blackwell(米)、Springer Nature (独)、SAGE(米)の5社。これらの大手学術出版社は、学術論文の著作権を行使して利益を上げていますが、そのことで研究者が自由に研究論文を閲覧・利用することを妨げているとの批判も多く、その対抗策としてSci-hubのような海賊版が研究者に受け入れられているという実態があります。経済的な理由により研究論文にアクセスできないため、Sci-hubを情報源として利用している研究者も多いのです。また、出版社が契約を盾に論文の自由な公開を制限することが、研究の発展に悪影響をもたらすとの意見もあります。論文著者である研究者にとって重要なのは、自身の研究成果が正当に評価され、成果が共有されることによって自身の研究分野が発展することです。論文掲載料を支払った上に、著作権を譲渡する一方で、購読料の上昇で研究機関や研究者自身が負担を強いられることを望んでいるわけではありません。しかも、学術出版の品質維持に不可欠とされる論文の査読は、研究者のボランティアベースで行われているのです。公的な助成金を使った研究者が執筆した論文を、公的機関から給与の支払いを受けた研究者がボランティアで査読を行う、そしてその論文を出版した学術出版社が利益を得る――研究者が不公平だと訴える理由でしょう。

訴状には、欧州の大学は毎年、研究データおよび論文へのアクセス、つまり、自校の研究者が執筆し、査読を行った論文を読むために数億ユーロを費やしていると記しています。EUAは問題点を述べ、補足情報として、学術雑誌のオープンアクセス(OA)化を目指すイニシアチブ「OA2020」や、論文を即座に無料で公表することを義務づけるという構想「プランS(Plan S)」について言及しながらも、調査および判断はEU競争総局(Directorate-General for Competition)に委ねています。

すべての学術研究に誰もが自由にアクセスできるようになることは理想です。とはいえ、現在の学術出版のシステムを構築したのは、学術出版社です。ただ、学術研究成果の発表方法および成果(データ・論文)へのアクセス方法、成果の扱いに対する考え方が変わってきた中で、学術出版社の要求が研究機関や研究者にとって重い負担となってしまったために、出版社は訴えられ、Sci-hubは支持を集めるようになっているのでしょう。その結果として、オープンアクセスが進んでいるのです。学術出版のビジネスモデル自体が転換点に来ているのではないでしょうか。


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【ニューハート・ワタナベ国際病院】捶井 達也 先生インタビュー

研究者の方たちの英語力向上法などについてお伺いするインタビューシリーズ22回目。

心臓血管外科・循環器内科の専門治療を行う『ニューハート・ワタナベ国際病院』で、高度な心臓手術などを手がけている捶井先生。手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」を使用した心臓手術の訓練にも取り組まれるほか、日本の若手心臓血管外科医の技術と知識の向上を目指している「若手心臓外科医の会」にも世話人として所属され、お忙しい日々をすごされています。心臓外科の道に入られたきっかけから、 英語学習法 まで、お話いただきました。


■ ここは新しい病院と伺っているので、病院のことと、ご専門の心臓外科について、ご説明くださいますか。

ニューハート・ワタナベ国際病院は、2014年に開院した心臓血管・循環器に関する治療および手術を専門に行う病院です。年間500件以上の手術を行っており、心臓手術の実績としては都内でも多い方だと思います。当院では、手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ(da Vinci Surgical System)」を使った新しい治療法も積極的に取り入れており、心臓の僧帽弁の手術に使っています。ダ・ヴィンチによる手術は、傷口が小さいので非常に低侵襲手術だと言われており、患者さんへの負担が少ないのです。ロボットで僧帽弁の治療を行っているという点では日本で一番多く手がけています。

■ 先生が心臓外科という領域を選ばれたきっかけは何ですか。

金沢大学医学部での病院実習の時、現在はここの総長である渡邊剛先生の手術を見て、深い感銘と感動を受けて、ぜひ学びたいと思ったんです。医者になるのであれば、やっぱり憧れの心臓外科に挑戦してみたいという気持ちになりました。ものすごくインパクトが強くて。僕が学生だった当時、渡邊先生は金沢大学の教授をされていましたが、この心臓外科専門の病院を開設するという時にお声がけいただき、上司や先輩と一緒にこちらに来て四年半です。

■ 難しい心臓外科の治療や最新の設備を使った手術などをされている中で、何本ぐらい論文を書かれるのでしょうか。

去年は英語だけでも4本か5本は書いたと思います。新しいことに取り組んでいるということもありますし、民間病院ではありますがアカデミックなこともやっていきたいと思っているので。将来的に何かにつながるようなアカデミックなこともやっていきたいという強い思いもあります。

■ 英語で論文を書くための勉強などされましたか?

英語の勉強は学生の頃から少しずつやっていました。英語ができないと、何を伝えるにしても中途半端になってしまい、せっかく一生懸命やったことをしっかり伝えられないのは、もったいないです。しっかりした研究をしても、伝える英語の部分がしっかりしていないとついてこない。やった仕事の半分しか伝わらないとしたら、残念ですから。逆に、仕事の成果を十分伝えられれば、自分のキャリアにも役立つと思い、学生のうちから意識していました。

英語の勉強法としては学部生の時からいろいろなことをやりました。とりあえず『ニューズウィーク』や『タイム』とかの雑誌を読んだりしましたし、あとは、何か目標が必要だと思ったので、TOEFL iBTと英検の勉強もして、英検は1級を取って、iBTも80何点か取ったかな。他は、学生のときに海外留学の研修プログラムみたいなものがあったので、それに応募して1カ月間ハワイ大学での研修に参加しました。とにかく、なるべく英語に常に接するようにしていましたね。特に英語を指導してくれるような固定の先生はいなかったので、論文を書いて出して、その返事とかを見てまた書いてとか、うまく意図が伝わらなかったらネイティブの友達に聞くとかやってきました。ほぼ自分で書き慣れてきたという感じです。

■ 英語で発表される機会も多いですか?

そうですね。結構大きな演題もあります。学会などでの大きな演題になると、海外の研究者などもいるので、英語でスライドを作ることもありますし、場合によっては海外で(英語で)発表し、ディスカッションもということもあります。

■ 英語での発表には事前練習などされますか?難しいのはどんな点でしょう。

結構練習して行きます。しっかりこちらの意図が伝えられるように、文法や発音は気をつけます。聞き手に違和感を覚えてほしくないので。作った原稿を読んだり、上司に相談したりしますね。みんなで発表会というか、予行練習みたいなものをしたりもします。しかし、準備練習して臨んでも、発表の瞬間は大変です。僕らの発表は、手術の話が多いのですが、ちょっと曖昧というか伝えにくい部分があったり、動画と一緒にしゃべる時に、動画のスピードにうまくタイミング合わせられなかったり……動画とスピードを合わせて説明するというのが難しいんです。あとは、優しくとか、ふわっとみたいな、何というか感覚的なところというか、日本語独自のニュアンスを伝えるのもやっぱり難しいですね。

■ 発表のあと、海外の研究者の方が質問をしてきたりして、コミュニケーションに発展することはありますか。

やはりいい発表ができるとフィードバックは来ます。実際に連絡を取り合って、別の機会などで会うこともあります。懇親会やパーティーで海外の人たちの輪に入っていくのは結構つらいこともありますが、そこは臆せず。せっかくの機会なので、グイグイいくしかないと思っているんです。そこでネットワークができるってことも結構ありますし。アメリカやヨーロッパの先生はもちろん、南アフリカの先生とか、クロアチアの先生とか、近いとこだと韓国とか台湾とかの先生とかとも時々連絡を取り合っています。全部英語ですが、ここはこうかとか聞いたりしますね。

■ これから英語を研究で使う人たちにお勧めの勉強法があれば教えてください。

勉強法ですか。テレビなどで見聞きする英語と僕らがやっている学術的な英語は違うと思うんです。独自のニュアンスもそうですし、決まったニュアンスというのがあると思います。常日頃から、こういうのはこういうふうに言うとかを学習しておく必要があるので、原著を読むとかして、英語を使う間隔を空けないことじゃないでしょうか。ただ、僕が学生時代に『ニューズウィーク』や『タイム』を読んだりしていたことは、意味がないわけではないけれど、直接論文を書くことにはつながっていない。論文を書くには、いつまでに原稿を仕上げるとか、いつまでにデータ集めるとか、そういったことを決める必要があります。そうしなければ、年に3本4本の英語論文は書けない。やはり論文を書くためには、自分でスパンを決めて、定期的に論文を書く、自分で手を動かすってことが大事だと思いますし、添削してもらうことも大事だと思います。間違いを指摘されて直しながら覚えていけばよいと。自主トレですね。

■ 発表についても同じように自主トレでしょうか。

理想的には英会話教室に通えればいいのでしょうけれど、僕らはどうしても忙しくて、決まった時間を取るのが難しいので……。まあ今はいろいろありますけど。でも、継続していくことが大事だと思います。

■ 英語論文の作成や発表に関して、こんな授業や機会が学生時代にあったら良かったのにというようなものはありますか。

プレゼンのトレーニングじゃないでしょうか。受け身の授業ばかりでは、なかなかつかめない。これを読んで答えを出すみたいなものではなく、どう思うかを問われたときに自分の言葉で要点をまとめられるか――というようなトレーニングですね。その場でぱっと、これはどう思いますかと聞かれて、1にこう思う、2にこう思う、3でこう思う、で結論はこれって。海外の人は、子供の頃から小中学校でやってきているので、そういう展開に慣れています。そういった文化にこっちから入っていかないといけなくて、しかもそれを英語でやらなきゃいけないのは大変です。プレゼンもですが、自分の意見をしっかり伝えるってことが難しいので、そのトレーニングは必要だと思います。そんな練習をする機会があったら良かったかなと。

■ 弊社は英文校正サービスを提供させていただいていますが、サービスについて何かご要望などありますか。

すごくよくしてもらってますし、結構早く返してもらえるので助かっています。もし、エナゴを利用している研究者同士がつながるコミュニティみたいなものが作れたらいいかなと思いますね。Twitterとかいっぱいありますけど、人と人がつながったら面白いかなと。時々、企画のご案内をもらっているものに行かれればとも思うのですが……。

■ エナゴのご利用者様なら必ず受けられるセミナーを時々社内で開催しているのですが、論文の書き方とかプレゼンテーションに役立つ英語といった内容であれば、お役に立ちますか?

そうですね。是非参加してみたいと思います。

■ 最後に、若手研究者への応援メッセージをお願いできますか。

僕も言われてきましたが、英語論文っていうのはその人の顔であり、履歴書に残るものですし、一生残ります。書いている人と書いてない人って、明らかに差が出てくる。名刺代わりじゃないですけど、やはり論文は書かないと。書くのは結構つらいと思いますし、投げ出したくなることも多々ありますが、頑張って書けば実績として残るし、研究費の獲得につながったり、プラスプラスに働いていくものです。最初の一歩は大変だと思いますが、最初の1歩2歩を乗り越えられれば、もっと書けるようになりますし、どんどん好循環に回っていきます。とにかく最初を頑張って乗り越えること――最初の1本目2本目が大事です。

■ お忙しいところ、ありがとうございました。

【プロフィール】
捶井 達也 (たるい たつや)先生
ニューハート・ワタナベ国際病院 心臓外科医長 医学博士
2009年 金沢大学医学部卒業
2011年 富山赤十字病院 心臓血管・呼吸器外科
2012年 高邦会高木病院 心臓血管・呼吸器外科
2013年 金沢大学 心肺・総合外科 医員
2014年 ニューハート・ワタナベ国際病院
2016年 ニューハート・ワタナベ国際病院 心臓血管外科医長

目指せ!効率的なタイムマネジメント

1日24時間。誰もが限られた時間をいかに効率的に使うかに頭を悩ませていることでしょう。かのベストセラー『7つの習慣』(1996年、スティーブン・R・コヴィー、キングベアー出版)でも「緊急度」と「重要度」を指標としたタイムマネジメントの重要性が提唱されています。そして、タイムマネジメントが重要なのは研究者も同じ。雇用契約や研究助成金の支給期間に限りがある場合には一層、時間は貴重です。今回は、限られた時間をいかに有効に使うか、効率的なタイムマネジメントについて考えてみます。

■ タイムマネジメントは何故必要か

研究者は、実験、レポート作成、論文執筆、出版、助成金申請といった研究関連業務に加え、学生や後進への教育指導、さらに職員/教員としての事務作業といった異なるタスクをこなすことが求められます。諸業務をこなしながら、自分自身も研究者として成長し、成果を残さなければならない――このような状況で業務を遂行し、よい研究成果を出すためには、効率的なタイムマネジメントが不可欠です。タイムマネジメントがうまくできれば、生産性を向上させ、業務上の時間の無駄を最小限に留め、さらにはストレスの軽減にもつながり、結果としてより大きな研究の成功につながることが期待できます。

■ 効率的タイムマネジメントの5つのポイント

緊急度と重要度。効率よく研究の結果を出すには、作業の優先付けが重要です。そして、成果が得られる(であろう)作業に時間と労力をつぎ込むことも必要です。では、そのためのタイムマネジメントで注意すべきポイントはどこでしょう。

① 脳の働きに合わせたワークスケジュール
人によって最も生産性が高くなる時間は異なります。最近は「朝活」をする人も増えていますが、脳科学的に見ても朝は最も脳が効率よく働く「ゴールデンタイム」そうです。1日の時間帯によって脳の活性も違うので、脳科学を意識しつつ1日のワークスケジュールを考えるのもよいでしょう。集中できるサイクルに合わせた“to-do list”(すべきことのリスト)を作成しておくのも一案です。もうひとつ注意すべきは、集中力です。人間の集中力の持続時間には限りがありますので、適宜休憩を入れることで集中力を維持した方が効率はよいでしょう。

② 中長期プランニング
研究を行う上で中長期のプランニングも大切です。実験を行う場合、実験計画を事前にしっかり立てて準備しておくことは、失敗を防ぎ、作業ロスを減らし、安全を確保する意味でも重要です。また、実験の結果をいつまでにどんな形で成果としてまとめ、発表するかまでプランニングしておくべきでしょう。学会参加申込みや学術ジャーナルへの投稿には、決まったスケジュールがあるものです。大枠を把握した上で、作業全体をプランニング・管理するようにします。

③ スキマ時間を有効活用
作業の合間に違うことをすれば気分転換になるということもありますが、時間のムダ使いは避けたいところです。SNSなどの情報ツールは便利な反面、仕事が中断されがちです。一日のうちコミュニケーションに対処する時間をあらかじめ割り当ててしまうなどの工夫が必要でしょう。一度作業の流れが止められてしまうと、集中力を取り戻すのに30分程度が必要になるとも言われていますので、侮れません。実験の待ち時間や移動中などのスキマ時間をメールチェックなどに利用するのも一案です。ところで、朝一でメールをチェックしてから仕事を開始――まさにやりがちなことですが、先述の脳科学の話によれば、1日のうちで脳が一番冴えている「ゴールデンタイム」をメールチェックに使うのはもったいないそうです。この時間こそ、創造性を発揮する作業に適しているそうなので、自分の行動を見直してみてください。

④ 作業をデジタルツールで「見える化」する
タイムマネジメントというと、つい複数のタスクを詰め込みがちですが、マルチタスクは40%もの生産性を下げるという研究や、過度なマルチタスクを行う人は適切な情報を選別する力が低下するという研究もあります。こうなると、詰め込みすぎを避けつつワークスケジュールを管理する必要性が高まってきます。そこで、プロジェクト管理を助けてくれる便利なソフトやアプリなどのデジタルツールを使って、作業とその所要時間を「見える化」し、時間管理に役立てることをお勧めします。例えば――
時間のトラッキングができるサービス「Toggl」。英語のサイトですが構造はシンプルで、日本語表記への設定変更可。日本語版を開発中という噂も。無料と有料のプランがあり、自分の作業時間の把握だけでなく、チームメンバーを招待してそれぞれの作業時間を同じ管理画面で見ることもできるので、共同研究にも活用できそうです。Windows版もMac版もある上、モバイルにも対応。

入力するのも面倒なので、自動でトラッキングして欲しいという場合には「RescueTime」。実際に行った作業を「Communication & Scheduling」「Social Networking」などのカテゴリ別に自動でトラッキングできるタイムマネジメント・ツールです。グラフで表示されるので生産性はもちろん、時間帯ごとに何に時間を費やしていたかなどが一目で分かるので、まさに「見える化」が可能です。
もちろん、これら以外にも多くのタイムマネジメント・ツールが出回っていますし、更新されています。それらの機能や特徴を検索・比較して、自分に合ったツールを選んでください。作業時間を計測し、「見える化」することで時間の使い方を意識するようになれば、スケジュールにメリハリを付けながら時間管理ができるようになるでしょう。

⑤ 余白を残す
タスクが見えたら、スケジュールに余白を残すように心がけましょう。スケジュールには5割程度の余裕をもっておくとよいとも言われますが、余白がないと何か起こったときに対処するのが難しくなります。実験はもちろん、すべての物事が思い通りに進むとは限りません。余白があれば、想定外のことが起きても柔軟に対応できます。突発的な作業の追加で、予定していた作業が先送りになったり、無駄な時間が生じたりすれば効率性は下がってしまうので、時間のロスを出さないためにも余白を残しておくという発想が必要です。

与えられた期間内で成果を出すことが求められる研究者の中には、「タイムマネジメントを考える時間すらない」という方もいるでしょう。しかし、タイムマネジメントのやり方次第で、作業効率は大きく変わりますし、ストレスやプレッシャーの感じ方も変わってきます。自らが時間(タイム)を管理(マネジメント)すべく、自分のスケジュールを振り返ってみてください。ここで挙げたポイントが効率的なタイムマネジメントに役立つことを願っています。

著名な学術雑誌は絶対か~ビジネスモデルの変化

京都大学高等研究院の本庶佑特別教授が、2018年のノーベル生理学・医学賞を受賞された明るいニュースが大きな話題となりました。しかし、10月1日に京都大学で開催された記者会見では、受賞の喜びとともに、日本の科学研究の現状に対する懸念を表明されています。他のノーベル賞受賞者がそろって日本の学術研究、特に基礎研究の弱体化を心配していたのと同様、本庶教授も基礎研究への支援が重要であるとして、多額の研究費用を基礎研究に投資する必要があると訴えました。

研究成果を利用する企業(製薬会社)にリターンを求めたことも含め、大変示唆に富む会見でしたが、その中の一部を抜粋します。

よくマスコミの人は、ネイチャー、サイエンスに出てるからどうだ、という話をされるけども、僕はいつも、ネイチャー、サイエンスに出てるものの9割はウソで、10年経ったら、まあ、残って1割だというふうに言ってますし、だいたいそうだと思ってますから。まず、論文とか書いてあることを信じない、自分の目で、確信ができるまでやる、それが僕のサイエンスに対する基本的なやりかた……(後略)

自分の目で確信できるまでやる――というのはサイエンスにとってとても重要です。しかし、頭に残ったのは「ネイチャー、サイエンスに出てるからどうだ……」という部分でした。というのは、日本のメディアおよび日本人研究者は著名な学術雑誌(ジャーナル)の権威を絶対視する風潮があるのを指摘されたように思えたからです。もちろん、ネイチャーやサイエンスは素晴らしい学術ジャーナルで、世界中の研究者のみならず学術研究に関心のある多くの読者に読まれていますが、世界で新しい論文発表および共有の方法を探る動きが広がっているのも事実です。

欧州各国では、大学あるいは大学連盟がジャーナル購読料の高騰に反発し、大手出版社との交渉の末に購読契約を打ち切る事態が起こっています。にもかかわらず、日本の大学ではこのような動きは出てきていません。研究費が減ったと研究者が嘆く中、日本の大学は高額な学術ジャーナルの購読料を言われた通りに支払い続けているのでしょうか。また、大手学術ジャーナルが刊行を発表した新しいジャーナルへの投稿を、その分野の研究者がボイコットする動きも出ていますが、日本でそのような抗議が拡大しているとも聞きません。多くの日本人研究者は、研究成果を論文にして著名な学術ジャーナルで発表すべく、日々努力しています。しかし、学術ジャーナルに論文を発表することは本来の目的ではないので、研究成果の発表方法、その後の活用法など、自分が確信できるやり方を考えることが求められているのではないでしょうか。

■ オープンアクセス(OA)への動きが欧州で加速

研究者である以上、自分の研究成果をより多くの人に読んでもらい、評価してもらうことは重要です。そのための一つの手段が著名な学術ジャーナルに論文を発表することですが、当然ながらそれらの学術ジャーナルに論文を掲載するのは簡単ではありません。そんな中、オープンアクセス(OA)の流れが加速しています。無料で論文が閲覧できるOAジャーナルが台頭してきたこともあり、より多くの人に読んでもらうために著名な学術ジャーナルに論文を発表することが、絶対的な手段ではなくなってきているのです。

9月4日、Science Europe(欧州の研究助成財団および研究実施期間が加盟する組織)は、欧州委員会(EC)の支援のもと、欧州11の公的研究助成機関が支援した研究者の論文を出版日に無料で読めるようにするためのイニシアチブ“cOAlition S”を発表しました。これは、2018年7月より議論されていた“Plan S”を達成するための協定です。“Plan S”とは、2020年以降に出版する公的資金を受けた研究に対し、OAジャーナルあるいはOAプラットフォームでの公開義務化を目指すもので、世界の研究助成機関に参加を呼びかけており(早くも27カ国から43機関が署名、2018年11月現)、オープンアクセスへの移行を確実に加速させています。

誰もが無料で論文を読めるようにする――従来は、読者が購読料を支払ってきましたが、その代わりに研究者が論文の公開料を支払うという ビジネスモデル への転換が進んでいるのです。論文への自由なアクセスを求める動きは、海賊サイト「Sci-Hub」を登場させたほか、学術ジャーナルの出版前にインターネットで論文を公開する動きにも広がっています。当然ながら、この協定およびイニシアチブに対し、学術ジャーナル各誌は反発を示していますが、研究者の中にも懸念を表明する動きが出てきています。

■ 学術出版社のビジネスモデルを揺さぶる動き

“Plan S”は米マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ夫妻の「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」が、財団が資金提供する研究者の論文を誰もがアクセスできるようにすることを目指したことに着想を得ています。既に、同財団は支援した研究論文を公開サイト「ゲイツオープンリサーチ」で公開しています。しかも、発表するだけでなく、従来であれば出版社が行っていた論文の評価(F1000に委託)まで一貫して行っているのです。論文を無料でオープンにすることで、研究への興味は高まる一方、第三者機関に評価を委託し、かつ多くの読者による閲覧が可能になることで、論文自体は厳しい評価にさらされることになります。研究者にとっては、財団のOAポリシーに準じてプラットフォーム上に研究成果を掲載することで研究成果を迅速に公表し、他の研究者と議論することもできます。さらに、研究データも公開できるので、データの再利用も可能となり、研究の促進につながるのです。

そして、11月5日、ビル&メリンダ・ゲイツ財団と英国のウェルカム財団も“cOAlition S”に参画し、PlanSを支持すると発表しました。これにより2020年以降、ウェルカム財団の支援した研究は、NatureやScienceなどの学術ジャーナルに掲載されないことになります。ビル&メリンダ・ゲイツ財団は既にOAへの出版を求めていますが、財団のOAポリシーを1年の間にPlanSに即したものに書き換えると表明しています。多額の研究支援金を拠出しているこれらの財団が動いたことで、購読料で成り立っていた従来の学術出版社のビジネスモデルは根底から揺るがされているのです。

学術研究をとりまく状況は大きく様変わりしています。世界(学術界)の荒波を乗り越えて進むためには、本庶教授が言われたように「自分の目で確信できるまでやる」という強い意志が必要なのかもしれません。


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学術論文を書くときは句動詞に注意

動詞の後に副詞や前置詞などが付く 句動詞 を使いこなすのは難しいものです。英語などの会話では、2-3語から成る句動詞(phrasal verb)がよく使われますが、もとの動詞と違う意味になることも多い上、より広い意味で解釈されることもあるので、誤った意味に取られる可能性もあります。そのため、学術論文では句動詞より、単体動詞(single verb)を使うほうがよいとされているのです。

■ 句動詞と単体動詞の違い

例えば、「carry」という単語は、「何かをある場所から別の場所に運ぶ」ことを意味します。そして、「out」という単語には、「ある場所から出て行く、どこかから一定の距離離れている、明らかになる、終わる」など、いくつかの意味があります。しかし、この2つがつながって「carry out」という句動詞になると、それは「実行する、成し遂げる」という、別の意味になります。また、句動詞になることで意味が広がったり強調されたりすることもあります。一方の単体動詞は限定的に意味で使われることから、誤解されるのを避けることができます。会話では、句動詞を上手に使いこなせたほうが、表現力がアップするとも言われますが、学術論文では、句動詞がインフォーマル(くだけた)な印象を与えるのに対し、単体動詞のほうがフォーマル(改まった)な印象を与えることも、論文で句動詞を避けて単体動詞で表現することが推奨される理由でしょう。多数の名言を残した第3代アメリカ合衆国大統領のトーマス・ジェファーソンが”The most valuable of all talents is that of never using two words when one will do.”と述べているように、一言で言えることを二言で言わないようにすることは大切です。学術論文は、シンプルかつ、簡潔明瞭な言葉で書くことが望ましいのです。
以下に句動詞の特徴を整理します。

句動詞の種類と使い方

動詞に自動詞と他動詞があるように、句動詞も同じで目的語を持たずに成り立つ句動詞と、目的語を伴う句動詞があります。同じ前置詞が付く句動詞でも動詞によって自動詞的に使われるものと、他動詞的に使われるものに分かれます。さらに、他動詞的な句動詞が使われる文章では、動詞と副詞が離れることもある、というように使い方も異なります。

複数の意味を持つ句動詞

前述したように、句動詞になることで複数の意味を持つことがあります。そのため、学術論文で句動詞を使うと、文の意味が不明確になることがあります。例えば、”cut out”という句動詞は、使用される文脈によって、複数の異なる意味を持ちます。例文とその中での意味を書き出してみます。

  • The irrelevant paragraph was cut out. (不適切な段落は削除された。)
  • The DNA model was cut out using scissors. (そのDNAモデルは切り出されたものだ。)
  • She was not cut out for the task. (彼女はその仕事に向いていなかった。)
  • The engine cut out. (エンジンが急に止まった。)
  • Group 2 had sugar cut out of their diet. (グループ2は断糖した。)

このように多くの意味があるので、学術論文では、文意を正確に伝えるために、単体の類義語に置き換えて表現すべきなのです。

ただし、前置詞になじみの薄い日本人は、句動詞をイディオム(英熟語)や熟語と混同していることも多いと言われるので注意しましょう。

■ 学術論文で避けるべき句動詞、使える句動詞

次に、学術論文で使用するとくだけすぎた印象となる句動詞の例と、言い換え可能な単体動詞を挙げてみます。

  • Get up (rise or increase)  (起きる、増える)
  • Put into (contribute)   (寄与する、投資する)
  • Find out (discover)   (発見する)
  • Get together (merged) (集まる、団結する)
  • Bring about (caused)   (引き起こす、もたらす)
  • Cut out (deleted, cleaved, suited)  (切り抜く、切り離す、省略する、やめる、断つ、削除する、止まる)

これらは、ごく一部に過ぎないので、他の句動詞についても意味が限定的な単体動詞に書き換えられないか注意しましょう。

とはいえ、学術論文での使用が認められている句動詞もあります。その一つが”carry out”です。成し遂げる、実行するという意味で”do”よりも明確になるため、論文の中でもよく使われています。他に、冒頭の文章や、研究の主旨を説明する序論のような部分での使用される句動詞もありますが、使用できる句動詞かどうかの判断ができない場合は、単体動詞に書き換えておくことをお奨めします。そして、正式な文章あるいは研究の詳細を示す本文では句動詞の使用を避け、明確な単体動詞による表現とするよう心がけましょう。分かりやすい学術論文こそ、読者の信頼を勝ち取ることができるのです。

欧州機関オープンアクセス義務化へ「プランS」発表

英国の新聞『ガーディアン』のコラムニスト、ジョージ・モンビオットは、自分ががんと診断されたとき、「情報に基づいた決定」をしたいと望みました。そのための情報収集には、この連載でも取り上げてきた海賊版論文サイト「サイハブ(Sci-Hub)」を使わなければ不可能だった、と彼は振り返ります。学術雑誌(ジャーナル)に掲載された論文を読むためには、購読料を払うか、論文1本ごとに代金を払う必要があります。大学や研究機関などに属していない者にとっては、論文を入手して読むことは面倒でお金がかかることなのです。

ところがサイハブならば、URLを入力するだけで、多くの論文のPDFファイルを簡単かつ無料で入手することができます。米国の裁判所は出版社からの訴えを認め、サイハブの活動は米国では違法だと判断しました。しかしサイハブのサーバーは米国にはありません。もちろんサイハブを使って論文を入手することは、どの国の法律でも違法ではありません。モンビオットは、サイハブを設立したハッカーで、アゼルバイジャンの若い科学者アレクサンドラ・エルバキャンのことを「彼女は私の命を救った可能性がある」と評価します。

各国の税金を使って行われた研究結果を読むために、出版社に高額のお金を払わなければならないことに納得していない人は、モンビオットだけではありません。そんな不満に答えるかのように、今年9月4日、ヨーロッパで研究費を助成している11の機関は共同で、2020年以降、自分たちが予算を提供している科学者たちには、論文を即座に無料で公表することを義務づけるという構想「 プランS (Plan S)」を発表したのです。そうした1つの目標と、「著者はその出版物の著作権を無制限に所有する」など10の原則がウェブサイトなどに示されています。

現在、ジャーナルの形態は、主として3種類に分類されます。購読料を払った者のみがすべての論文を読める「サブスクプリンション・モデル」、誰もが投稿された論文をオンラインで無料で読める「オープンアクセス・モデル」、そしてその中間、基本的には購読者のみが論文を読めるが、著者が一定の料金を払えばそれをオープンアクセスにできる「ハイブリッド・モデル」です。

ネイチャー・ニュース』やそれが言及するある調査によれば、2016年の時点で、サブスクプリンション・モデルのジャーナルは全体の約38%。それに対してオープンアクセスのジャーナルは約15%。2012年に比べると、サブスクリプション・モデルのジャーナルは減り、オープンアクセスのジャーナルが増えています。プランSによって、『ネイチャー』や『サイエンス』を含む約85%のジャーナルのなかには、研究者が論文発表することを禁止されるものや、早急な対応を求められるものが出てくることになります。

また同じ調査によれば、現在、45%のジャーナルが「ハイブリッド・モデル」で出版されています。プランSは、「できるだけ短くするべき移行期」を過ぎたら、こうしたハイブリッド・モデルのジャーナルで論文を発表することも禁止する、としています。

この計画は、欧州委員会でオープンアクセスを推進しているロバート・ジャン・スミッツがリーダーシップをとって進めています。現在、オーストラリアやフランス、アイルランド、ルクセンブルクなどの国立の研究費助成機関13組織が署名しています。スミッツは今後、米国のホワイトハウス、科学アカデミーなどとも協議する、と述べています。

しかし現在のところ、ドイツやスイス、スウェーデンなどの研究費助成機関が署名していないことを、『ネイチャー・ニュース』は指摘します。たとえばドイツの国家研究評議会(DFG)は、自分たちはDFGの予算で行われた研究の結果をオープンアクセスで論文発表することを求めてはいるが、義務化はしない方針のようです。また、論文発表に必要なコストが上がることを懸念しているとも言っています。

当然ながら学術出版社は反発しています。例えば、国際科学技術出版協会(STM)は145社を代表して、論文へのアクセスを広げる努力は歓迎するが、これまでオープンアクセスを成長させてきたハイブリッド・モデルのジャーナルでの論文発表をも禁止することは、むしろ「移行」を遅らせるだろう、と述べています。エルゼビア社もこれに同意しているようです。『ネイチャー』を発行するシュプリンガー・ネイチャー社は、研究者から選択肢を奪うことは研究発表システム全体を損なう可能性がある、と指摘します。『サイエンス』を発行する米国科学振興協会(AAAS)にいたっては、プランSのモデルは「高いクオリティの査読、論文発表、その普及をサポートすることにはならないだろう」と厳しく批判しています。

プランSは、現在のサブスクリプション・モデルを終焉させるだろう、と推測する識者もいます。サブスクリプション・モデルやハイブリッド・モデルを採用してきた出版社は、そのビジネスモデルを変更せざるを得なくなるかもしれません。ただしそうだとしても、オープンアクセス・ジャーナルの掲載料は安くないことが知られていますので、これまで読者が購読料として払っていたコストが掲載料に転化され、各国の研究費助成機関がそれを負担するようになるだけ、とも考えられます。先進国ほど研究費助成制度が整っていない新興国の研究者たちにとっては、論文発表における負担が重くなる可能性もあるわけです。

また、現状でも多くの研究費助成機関が研究者たちにオープンアクセスでの論文発表を求めています。しかし最近、ある研究者たちがオープンアクセスでの発表が義務づけられているはずの論文130万件を調べてみると、その約3分の1は無料では読めないことがわかりました。生物医学や医療の分野では遵守率が比較的高く、社会科学や工学、化学では低いという傾向も明らかになりました。

こうした問題を解決することが今後の課題になるでしょう。


ライター紹介:粥川準二(かゆかわじゅんじ)
1969年生まれ、愛知県出身。ライター・編集者・翻訳者。明治学院大学、日本大学、国士舘大学非常勤講師。著書『バイオ化する社会』(青土社)など、共訳書『逆襲するテクノロジー』(エドワード・テナー著、早川書房)など、監修書『曝された生』(アドリアナ・ペトリーナ著、森川麻衣子ほか訳、人文書院)。博士(社会学)。

被験者に関する倫理問題

研究の遂行には、動物あるいは、ヒトを対象とする実験が欠かせない場合もあります。生体実験を行う際に問題となるのが、「 研究倫理 」です。例えば、ある特定の病気を研究しているような場合、その治療法や治療薬が本当にヒトに有効なのか――動物実験で有効性が確認されたとしても、どこかで必ずヒト(人)での実験を行う必要が出てきます。実験に参加する人は、被験者あるいは研究対象者と呼ばれますが、実験である以上、すべての人によい結果がもたらされるとは限りません。そのため、実験に参加してもらう場合には、正確かつ十分な説明を行い、本人の意思による同意を得ておかなければならないと決められています。しかし、時に、研究者が被験者に関する倫理規定に従わず、問題となることがあります。今回は、被験者に関する倫理問題について学んでみましょう。

■ HeLa(ヒーラ)細胞が提起した倫理問題

ヒトを対象とする研究は、研究倫理および被験者の自発的な合意に基づいて行われるべきとされています。医学研究における科学的な透明性と被験者の同意の重要性は、ヒト由来の細胞株である「HeLa(ヒーラ)細胞」によって注目されることとなりました。

HeLa細胞とは、1951年に子宮頸がんで亡くなったアフリカ系アメリカ人女性のヘンリエッタ・ラックス(Henrietta Lacks)の腫瘍病変から分離され、細胞株として樹立された(細胞株として培養に成功した)ものです。この細胞の名称は、原患者の名前から2文字ずつ取って命名されました。培養細胞株であるため、無限に分裂を繰り返すことが可能であり、ヘンリエッタの死後も、不死化した彼女の細胞は、継代培養されて生き続けています。HeLa細胞は、世界で初めて樹立されたヒト細胞株として、ポリオワクチンの開発やヒトテロメラーゼの発見などにつながる研究に貢献したことも含め、現在に至るまでさまざまな細胞を用いる試験や研究に幅広く使われているのです。実際、2013年に発表された論文だけ見ても、74,000を超えるPubMedの要約に、HeLa細胞を使用した実験であることが示されています。

しかし、HeLa細胞が問題となったのは、患者であるヘンリエッタ・ラックスに断りなく培養されたものであるためです。1950年代当時は、切除された組織や細胞を研究に利用することにつき、患者や家族に対して説明し、同意を得る必要がなかったのです。ヘンリエッタの遺族は、30年以上もの間、基礎科学におけるHeLa細胞の重要性について説明を求めてきましたが、対応されてきませんでした。2013年になって、ようやくゲノムデータの開示を条件付きで許可することが了承され、研究者が被験者に対する倫理と科学研究の透明性についての考えを変える大きなきっかけとなったのです。

■ 被験者への科学的成果の開示

米国政府は、政府が助成するヒト試料を扱う研究と臨床試験について「コモン・ルール(Common Rule)」と呼ばれる規則を適用しています。そして、米国科学工学医学アカデミー(NASEM: The National Academy of Sciences Engineering Medicine)は、研究で得られたデータを被験者と共有するよう求める新しい範例を制定しました。自発的に参加した被験者に研究成果を知らせることは、科学研究への貢献に対して興味を持ってもらうだけでなく、倫理的であり、かつ貢献への敬意を示すことになります。まだ一般的ではありませんが、HeLa細胞の論争を考えれば、ヒトが関与する研究の透明性は格段に改善されたものとなってきています。NASEMの新しい報告書は、規制当局や政策決定者が、研究に関わる被験者の権利を擁護するようガイドラインを改訂することを推奨するとともに、研究成果を被験者と共有する方法についても示唆しています。

■ 研究情報共有の倫理

NASEMの報告書の著者は、研究成果を共有する際は、慎重に判断する必要があると述べています。従来は、すぐ利用できるデータから考えられることを研究結果としてきましたが、より長期的な見方をすれば、研究成果の重要性は、将来の研究によってさらに拡大する可能性を秘めています。現時点での研究結果を共有し、さらに「未来の」研究をも踏まえて同意を得ることが重要なのです。研究者は被験者に、彼らのヒト試料に関する情報を「将来にわたっても」共有することを希望するかを尋ね、その答えに対応しなければなりません。

科学研究の進歩は、患者とその家族を尊重しながら、医学研究を著しく発展させる可能性にも備えた倫理的協力関係を築けるかにかかっています。貢献者に医学研究データを共有することは、今後研究に協力してくれる人を増やすことにもつながります。自らの組織、細胞、さらにDNAを提供してくれる人々の意見を研究に反映させることは、科学におけるその人達の役割を拡げることにもなりえます。しかし、この問題に関わる研究倫理は、いまだにあいまいで、一貫性のない規則ばかりが目につくのが実情です。

■ 研究の透明性の確保

倫理的および同意に基づく研究の課題は、科学研究における透明性と再現性の重要性に要約されます。過去の研究で得られた新しい発見を再現する力は、科学研究の進歩に大きく影響するものです。うまくいかなかった結果を出版し、失敗を開示することは、科学の透明性を維持するのに役立ちます。このように研究の透明性を認めることは、すでに同じ分野で研究している研究者が同分野で活躍する上でプラスとなるでしょう。

医学研究の最近の発展は、ヘルスケアにおける科学的透明性にも重点を置くようになってきています。例えば、世界で初めてマリファナ由来の治療薬エピディオレックス(Epidiolex)が承認されたことも、この動きを促進しています。研究室での実験が臨床試験につながる今回のような医学研究は、極めて注意深く、かつ透明性の高い科学研究なしには有り得ません。基礎研究は、新たな治療法や治療薬の開発と適切な利用を通して、医学研究を進歩させているのです。そのために、研究に貢献してくれる人は必要とされ続けます。そして、科学研究に対して自発的な貢献者が得られるかどうかは、研究の再現性、倫理と透明性のある同意を築けるか次第なのです。

インパクトのあるCV(職務経歴書)のポイント

CV(職務経歴書)とは、ラテン語の”course of life”(人生の道筋)を意味する”Curriculum Vitae”の略語で、英語圏でよく使われていますが、米語圏では” Resume”を使うのが一般的なようです。ともに特別な書式はないので、自分なりに工夫して、わかりやすく、伝えたい事項を逃さずにまとめることが大切です。CVは、研究者が「夢の仕事」をつかむための最初のステップであり、今日の競争社会においてインパクトのあるCVが書けなければ、次のステップである面接に進むことができません。ここでは、選考に残るためのCVの書き方について考えてみます。

■ 研究者のCVに必要なこと

学術研究者のCVは、一般的な(企業)転職用のCVとは異なる書き方をする必要があります。研究者のCVに書くべきことには、学歴、職歴、出版履歴だけでなく、研修実績、取得したスキルなどが挙げられます。特に、研究者のスキル、研究履歴、研究の実績は重要です。

研究者は、学術研究者として求められていること(以下)
・研究を遂行すること
・論文を出版し、研究の成果を発表すること
・学生を指導すること
・自身の研究に必要な助成金を獲得できること
を理解し、自分にこれらの要求に応えられる能力があることを、CVで示さなければなりません。

■ 効果的なCVを書くためのポイント

では、効果的なCVを書くには、どのような点に注意すればよいのか見てみましょう。

読みやすく書く
まず見た目を整えましょう。
・読みやすいフォントを使うとともに、全体的に一貫したスタイル(見出しの書き方など)で書く。
・採用者読み手が読みたい個所を見つけやすいように、見出しに太字を使うなどして内容が一見して分かるようにする。
・十分な余白を取る(四辺に2.0-2.5cm程度取ると読みやすい)。
・校正を行い、文法的なミスやスペルミスをなくす。

新しい情報から書く
採用者は当然、より新しい情報に興味を持っているので、直近の経歴、最近取得した資格および発表した論文などについては先に書くようにします。

募集要項に合わせて書く
CVは、応募職種の募集要項に合わせて記載するべきです。採用者が自分に対して興味を持ってもらえるように書きましょう。例えば、教員への応募であれば、まず教職としての経験を書き出すといった優先の付け方が必要です。あるいは、研究者への応募であれば、研究経験に重点を置いて書くなど、募集職種に応じた対応を心がけましょう。

適切なキーワードを用いる
求人を行う場合、大量に届くCVの中から何名かの応募者を選んでリストにするため、採用管理システム( Applicant Tracking System, ATS)が利用されることもあります。しかし、システムには機械的なフィルタリングしかできないという欠陥があります。これに対抗すべく、応募者は、選考に残る確率を上げるため、募集要項で使われているキーワードを自分のCVに的確に含めておかなければなりません。システムによるフィルタリングで対象外とされたり、応募資格なしと判定されたCVは、完全に採用候補から脱落してしまうのです。

オンライン上では、これらのポイントを抑えたCVのサンプルを見つけることができるので、参考にすることをお勧めします。

■ CVの構成

インパクトの高いCVは、その構成に以下の項目を含んでいるものです。

個人情報:CVの冒頭に自分の名前、(あれば)LinkedInの情報などの個人情報を記入します。
学歴:卒業年度、学位の種類、専攻または研究課題、所属(大学または機関名など)、受賞歴、指導員の名前などを記入します。
役職:所属機関、職名、雇用期間、職責、指導歴など。
出版物:出版物が多い場合は、書籍、寄稿、査読付き学術雑誌(ジャーナル)への投稿論文のように、分類して記載するとよいでしょう。Mendeley Desktopのような文献管理ツールを利用して、一貫した文献管理を行うと便利です。
実績:これまでに受賞した章から関連するものを、いくつかリストアップしましょう。助成金や奨学金の獲得歴を示すことは、研究を受けるに値する研究者であることの証となります。
会議(参加歴):参加した会議のリストが多数となる場合には、招待講演、学内講演、学会発表などごとに、分類して示します。
研究歴:常勤研究者、研究員、研究助手など各段階における研究歴を分けて書き記すとよいでしょう。
所属団体・参加団体など:ボランティア活動、リーダーシップ的な貢献、または専門機関に所属していることなども記載します。
その他の活動:学術関係以外の仕事や、メディア報道で取り上げられたことなど。
保証人:本人の承諾を得た後、保証人として2-3名の連絡先を記載します。

■ 最も重要な最終チェック!

作成したCVは、提出する前に、プリントアウトして、すべての記載事項につき誤りがないか確認しましょう。見出しを付けたにも関わらず、記載内容が複数個所にわたって書かれているといったことがないかも確かめてください。重要な記載が見落とされる可能性も捨て切れません。また、スペルミスは絶対に許されません。完成したCVが、採用選考者に届いた際、ファイルの破損や書式の乱れなどが起こらないように、文書ファイルをPDFに変換して提出するようにしましょう。

最後にここまでの内容を簡単にまとめたチェックリストを付けておきます。これらに注意し、希望の就職につながるインパクトのあるCVを作成してください。