広がるインターンシップ – 言語業界では?

インターンシップ
 

日本でも大学在学中にインターンシップに参加することが一般的になってきました。2018年度卒学生にインターンシップの参加経験を聞いたあるアンケートでは、43.7%の学生が参加したことがある、と答えています。

翻訳をはじめとする言語業界の仕事でも、インターンの受け入れは進んでいるのでしょうか?実際は、国連やユネスコのような公共組織以外での受け入れは、進んでいるとは言い難い状況です。国を挙げての「グローバル人材育成」が進む中で学校教育に外国語学習が盛り込まれ、さらに幼少時からバイリンガル、トリリンガルな環境で育つ人が増えている昨今、人材不足が原因とも思えません。なぜこの業界でのインターンシップが進まないのかを考察します。

■ 学生にも企業にもメリット

インターンシップとは、特定の職業の経験を積むために、一定期間に企業や団体などで労働に従事することで、学生が在学期間中に行うことが一般的です。「1日インターンシップ」から短期型、長期型と選択肢が増えており、参加する学生側から見れば、実際に企業の中に入って社員と共に業務に携わることで、企業や業界の実態を垣間見ることができます。さらに、社会に出る前から実践的なスキルを身につけ、自分の適性を確認することも、人脈(ネットワーク)作りの機会を得ることもできるのです。

一方、受け入れる企業側は、会社を知ってもらうことから将来の入社を念頭に入れた人材選考の一環としてまで、幅広い目的で インターンシップ を実施します。企業にとってインターンシップは、低コストで能力を提供してくれる人材を確保する場であり、若手人材のスキル・能力を採用判断前に把握することができる、つまり将来的な採用コストとリスクの削減につなげられる機会なのです。

このように、インターンシップは学生・企業の両方に大きなメリットがあることから、外資系企業に比べて「お堅い」日本企業にも広がりを見せています。それにもかかわらず、言語業界ではインターンシップの受け入れが進んでいないように見えるのは、なぜなのでしょうか。

言語業界の特性がインターンシップの壁に?

言語業界は業務内容が専門的である――。これが、インターンの受け入れが進まない要因の一つとして考えられます。

翻訳や通訳の内容は法律、金融、ITから化学まで多岐にわたり、翻訳者・通訳者はもちろん、プロジェクトの進行に従事するスタッフにも技能と経験が要求されます。まず、顧客から依頼される内容を正確に理解し、適切な翻訳者・通訳者を選定する。依頼の分量が多い、あるいは納期が短い場合には複数の翻訳者を手配し、それぞれの作業品質と納品までのスケジュールを管理する。通訳の場合でも、依頼が同時か逐次か、また、話者の話が専門分野に特化しているかによって、それに対応できる通訳者を選出する。こうした状況判断には、専門知識と経験が不可欠です。翻訳・通訳自体は専門職なのでインターンには無理ですが、関連の作業を分担するとしても、インターンにできる作業を切り離すのは難しく、かつ限られたインターン期間内に仕事を覚えてもらうためのトレーニングを行うことは困難です。

このような実務上の難しさに、納期に追われる業界の特性が加わり、インターンの受け入れ自体に十分な時間を割くことができないのが現状と言えるでしょう。

インターンシップを成功させるコツ

では インターンシップ を有効に活用するために、企業は何をすればよいのか。一般論にはなりますが、学生と企業の両者が成果を得るための大切なポイントを挙げてみます。

1. 企業と大学との関係構築

企業と大学が友好な関係を構築できれば、企業にとってはインターンシップに参加する学生を取り込む助けとなり、大学から見ても学生の雇用機会の増加ならびに就職実績の向上が期待できます。手始めに、地元にある大学との関係構築を図るのがよいでしょう。

2. 会社のプロモーションと就労体験

企業はインターンシップを通して、大学や学生に会社を知ってもらう機会を持つと共に、社会に開かれた会社としてのイメージアップを図ることができます。これは長期的に見て、会社に対する信頼感・安心感の醸成につながります。学生は、インターン期間中に社内文化や行動規範について学ぶことができます。多くの場合、学生にとっては初めての本格的な就労体験となるので、企業が学生に期待することをあらかじめ明確に示すことが必要です。

3. バディ制度の導入

学生にとって就業経験は大きなチャレンジ。バディ制度(インターン一名に対し社員を一名付けて、マンツーマンで指導を行うこと)を導入し、学生の心理的な負担を軽減すると共に、社員にとっては後輩の面倒を見る立場に立つことで、指導の仕方を考え、自身の業務を顧みるよい機会にもなるでしょう。インターン経験を持つ社員がバディになり、自身の経験も踏まえた話ができれば理想的です。

4. 定期的なチェックとフィードバックの実施

インターンが指示された業務をきちんと遂行できているかを定期的にチェックし、かつフィードバックを行う必要があります。これにより、関係者全員がインターン一人ひとりの状況を正確に把握し、何か問題があった場合には即座に対処できるようになります。

5. リアルな実務体験

インターンには可能な限り実務に携わり、リアルな就業経験をしてもらうようにしましょう。特別な指導や一定の訓練が必要であっても、社員が実際に行う業務に携わって初めて、学生はやりがいを覚えるもの。新鮮な目線から見た実務のカイゼン点、また業務に対する学生の適性など、思わぬ発見があるはずです。

■ 若い世代を取り込もう

業界ならではの専門性や多忙さといった課題はあるものの、言語業界でインターンシップを採用する機会や、若く優秀な人材に活躍の場を与えられる余地は十分にあります。問題は、各企業がインターンシップ採用を意義あるものと捉え、踏み出すか否かです。

グローバル化がますます進む昨今、企業が多言語への対応に追われるのと同時に、言語を扱う仕事の必要性は増しています。反面、外国に対してオープンな意識を持っている学生は外国語との心理的距離もどんどん縮めているので、言語に関わる仕事への関心が高まることが予想されます。また、言語業界にもAI (Artificial Intelligence) を含めたITが活用されてきていることを踏まえれば、それらへの抵抗が低く、かつ新しい感覚や柔軟な発想でそれらをさらに活用できる可能性が高い若い世代が必要となってくることでしょう。若い世代からの関心を生かし、言語業界を益々発展させるためにも、インターンシップを受け入れられる体制づくりを少しずつでも進めていきたいものです。
 

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