間違いやすい用語や表現 – since

副詞「since」は、日本人に過度に使用される語です。特に、日本人の学術論文で「since」が使用される大半のケースは、用法が適切ではありません。
「since」の誤用が最もよく見られるのは、「because」の類義語として用いられる場合です。「since」には「because」の類義語としての意味はありますが、両者の間には意味上の重要な違いがあります。その違いを以下に説明します。
一つ目に、「since」が「because」の類義語として用いられている場合でも、その第一義である時間的な要素はある程度残ります。そのため、「since」は「because」より「because, as you/we already know」の意味に近くなります。それゆえ、以下の用例が適切に使用されている場合は、若干意味が異なります。

(1) [正] Because I have already bought the tickets, we should go to the concert even
(1) [正] if it rains.
(2) [正] Since I have already bought the tickets, we should go to the concert even if
(1) [正] it rains.
(1)と(2)の違いを理解するために、聞き手がこの会話によって何の情報を得るのかについて、二つの可能性があることに注目します。
(1)と(2)の違いは、チケットを既に購入していることが、聞き手にとって新しい情報かどうかという点にあります。(1)と(2)におけるそれぞれの語法は、その情報を初めて聞く場合、そして既に聞いている場合に適切です。(1)において話し手は、チケットを既に持っていること、そしてチケットを持っているからコンサートに行くべきだという意見を伝えています。一方、(2)では、チケットを持っているからコンサートに行くべきだという意見のみを伝えています。


二つ目に、「because」がより直接的、必然的なつながりを表すという違いもあります。そのため、以下に例示するような場合には「since」は使えません。
(3) [正] The balloon popped because I poked it with a needle.
(4) [正] Because he hadn’t eaten for several months, the bear was very hungry.
(5) [正] The function f(x) is infinitely differentiable because it is analytic.
上記の用例では、結果・結論となっている事柄は、その原因・前提から直接的かつ必然的に引き起こされる帰結と考えられます。このような因果関係、あるいは論理的関係を示す場合に、「since」の用法は不適切です。ただし、 (4)の「the bear was very hungry」を「the bear decided to search for some juicy berries」に置き換えた場合、原文における直接的、必然的なつながりがなくなるので、「since」を用いた方が「because」より自然です。
詳しくはグレン・パケット:『科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現』(京都大学学術出版会,2004)の第115章をご参照下さい。


Dr. Paquette

グレン・パケットGlenn Paquette

1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。

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