指導教官を見極めよう

オーストラリア国立大学のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。博士課程の指導教官は、研究だけでなく、その後の人生にも影響を及ぼしかねません。今回の記事は、クイーンズランド工科大学のイヴォーン・ミラー(Evonne Miller)准教授による、自分に合った指導教官の見極めるのにチェックすべき項目の紹介です。


指導教官が自分に合っているか、別の人に変えてもらった方がよいのか……そもそも、指導教官を見極めるには何を見て判断すればよいのでしょうか。

今回は、イヴォーン・ミラー(Evonne Miller)准教授による指導教官の見極め方についての記事をご紹介します。イヴォーンと私は、修士論文の指導を行う際の課題に注目した「The Supervision Whisperers Just like the Thesis Whisperer, but with more paperwork」というブログサイトを共同で運営しています。こちらも「研究室の荒波にもまれて」同様に研究活動に関連する話題を提供するサイトですが、学生の指導・監督に従事する(得てして多くの事務処理を抱える)人に向けた内容になっています。

イヴォーンは、オーストラリア・ブリスベンのクイーンズランド工科大学のCreative Industries Faculty(クリエイティブ産業学部)で、研究トレーニングのディレクターを務めています。彼女は面談を重ねるより手を出さずにやらせてみるという指導方針を取っていますが、学生たちによると、自分たちの研究に対して真剣に向き合い、必要に応じて(優しく)叱咤してくれるそうです。

芸術であれ、科学であれ、よく分からないものであれ、どんな分野においても「適切な」指導者を選ぶことは、最も重要な決断の一つです。運に左右される部分がないとも言えないので、学生も指導教官も未来が分かればいいのにと思うことがあるかもしれません。しかし実際に未来が見通せるわけではないので、ここでは博士課程の指導教官を選ぶ際にチェックすべき4つの項目を挙げておきます。指導教官の選択は博士課程における経験、学生生活、さらにその後の人生にも大きく影響しますので、これらの項目について慎重に確認してから決定していただきたいと思います。

尊敬される現役研究者であるか

もちろん、自分と同じ分野の専門家であることは必須です。まず、指導教官の候補となる研究者の経歴、出版物、最近の競争的助成金の獲得状況などに目を通すことから始めるのがよいでしょう。重要な指導的役割(学会、専門家協会、雑誌の編集者など)を果たしたことがあるか、タイムリーに研究を成功させた実績があるか、かつての教え子は現在どのような仕事に従事しているか、などです。こうした情報のほとんどは、オンラインで簡単に入手できるはずです。逆にネット上で情報が簡単に見つからない研究者は、疑ってかかった方がよいでしょう。

どのような人物で、どのような指導スタイルを取るか

残念ながら、上述のチェックだけでは候補者が優れた研究者であるかまでは分かりません。実際にどのような指導を行っているか、彼/彼女の指導スタイルが自分の性格や学習スタイル、求めているものと合っているかも確かめるべきです。面談の頻度を2週間に1回とするのか、月に1回とするのか、それとも全く行わないのかなどを直接面談するか、できなければ少なくともZoomなどを利用したオンライン面談で相談すべきです。その上で、そのやり方が自分の希望にあっているかを確認しましょう。プロジェクト管理表を活用し、厳しい面談を行い、細かく締め切り設ける指導教官もいるでしょうし、もっとのんびりと進める指導教官もいるでしょう。理想的なのは、相手がどのような学生で、研究過程においてどの段階にいるかを考慮して、異なる指導スタイルを組み合わせつつ指導してくれる教官です。良い指導者と優れた研究者は全く別です。モチベーションを高めてくれ、率直なコミュニケーションが可能で、成功を喜んでもらえるような前向きな関係を構築できることが重要なのです。

最初の面談で、その人がどのような人物か、どのような指導スタイルを取る人かが感覚的に分かるでしょう。彼らが思っていることを口にしないようであれば質問してみてください。指導教官と上手くいかなければ、非常に厳しい時間を過ごすことになってしまうのです。

性格は?優秀な学術研究者から親切な指導教官を見つけ出す

指導教官の指導について知るには、候補者の指導を受けた学生(教え子)に話を聞いてみることが最適です(ただし、指導される側もさまざまで、それぞれ個性やその時点での段階も異なるということを念頭に置いて話を聞くのを忘れずに)。直接話を聞くことができない場合は、彼らの論文の謝辞のセクションを読めば、指導された経験にどれだけ満足しているかを伺い知ることができます。以下に、博士論文の謝辞を5例挙げてみますので、読み比べてみてください。文章のスタイルや表現はそれぞれ異なりますが、行間を読めば、それぞれの指導教官が論文執筆にどのように関わっていたかが読み取れるでしょう。

「この研究と論文執筆における指導、助力、支援をしてくれた指導教官たちに感謝します。」

「研究の要所要所で建設的なフィードバックをくださった指導教官に感謝の意を伝えたいと思います。」

「素晴らしい研究指導をしていただきました。先生のご指導なしにこの道のりを乗り切ることはできませんでした。先生のような素晴らしい方が、私のPhDの多難な旅路に寄り添ってくれたことに本当に感謝しています。明晰なご指導とご教授いただいた知識は計り知れません。」

「絶望感に襲われた時には手を差し伸べていただき、自分の能力に疑問を感じた時には自信を与えてくださり、早朝や深夜にもメールやメッセージにて圧倒的な量の情報を提供くださることで希望の光を与えてくださった彼女の支援、指導、励ましがなければ、この論文を完成させることはできませんでした。」

「研究者としての私の成長に直接影響を与えてくださったのは先生です。今の自分の状況を知った上で過去に戻り、世界中から好きな指導教官を選べるとしても、間違いなく先生を選びます。先生は、仕事における研究への情熱よりも、指導している博士課程の学生の幸せを大切にしてくださいました。」

できることなら誰もがうらやむような素晴らしい指導教官を持ちたいと思うでしょう。たまにしか建設的なフィードバックをくれないような人に指導教官になってもらいたいと思う人はいないのです。

戦略的な指導をしてくれる人か

自分が博士号を取得して何を得たいのか、しっかりと考えてみましょう。そして、自分が選ぶ指導教官が、自分の希望をサポートできる立ち位置にいるかを確認します。 彼らの元で研究することで奨学金、ティーチングアシスタントやリサーチアシスタントといった研究に関連する仕事、つながりたい業界やコミュニティとのコネクションが得られるかなどです。例えば、海外や大企業との間でフィールドワークを行いたい場合は、そのようなコネクションを確立している指導教官を探しましょう。

外部のサポートネットワークの構築 

指導教官とは少なくとも3、4年を一緒に過ごすことになります。どんなに良好な関係であっても、意見が合わなかったり、批判を受けて涙したりすることもあるでしょう。誰もが泣いている姿は見られたくないと思うでしょうけれど、フルタイムで働きながら学業を続け、2人の子どもを育てながら卒業論文の完成まで含めると5年にわたって研究を続けた私の友人は、最後の学期が始まったとたんに泣き崩れたといいます。PhDの研究は、感情的な旅路である、というのはもはや常識です。ですから、 博士課程を修了するには、外部の優れたサポートネットワークが不可欠です。仲間の博士課程の学生との友情を積極的に育んでください。家族やアカデミックではない知り合いとはわかり得ないこと、例えばデータに関する不満や、概念的な悩みごと、論文が出版でできたときの喜びなどに共感してくれるからです。

外部のサポートネットワークの構築 

指導教官とは少なくとも3、4年を一緒に過ごすことになります。どんなに良好な関係であっても、意見が合わなかったり、批判を受けて涙したりすることもあるでしょう。誰もが泣いている姿は見られたくないと思うでしょうけれど、フルタイムで働きながら学業を続け、2人の子どもを育てながら卒業論文の完成まで含めると5年にわたって研究を続けた私の友人は、最後の学期が始まったとたんに泣き崩れたといいます。PhDの研究は、感情的な旅路である、というのはもはや常識です。ですから、 博士課程を修了するには、外部の優れたサポートネットワークが不可欠です。仲間の博士課程の学生との友情を積極的に育んでください。家族やアカデミックではない知り合いとはわかり得ないこと、例えばデータに関する不満や、概念的な悩みごと、論文が出版でできたときの喜びなどに共感してくれるからです。

他の素晴らしいアイデアと同様、この記事を投稿するきっかけとなったのは、博士課程で指導教官の選択について嘆いている友人との夕食時の会話でした。もし、この記事を読んで「自分は指導教官には恵まれなかったけれど博士号を取得できた」と思う人がいたら、その人は幸運です。実際、私たちの多くは、指導教官と対立したり、人間関係に苦悩したりといったネガティブな思い出を抱えているのです。この記事の読者の中にも、自分で指導教官を選ぶようなことはできないという人や、すでに指導教官との人間関係が破綻してしまっているという人もいるでしょう。そのような場合には、状況や人間関係をどう管理するかが重要になります。私のお勧めは、(1)大学内の相談窓口に連絡してアドバイスを求める(手続きや、具体的な方策について実際的な助言を貰えるでしょう)、(2)対人コミュニケーションや対人関係のスキルに関する本を読む、などです。

もしあなたが私のように、サポートが限られた状況を乗り越えて論文を完成させたのであれば、言いたいことは2つ。1つ目は、「よくやった!」ということ。困難な状況で博士号を取得したのは素晴らしいことです。

2つ目は、ご自分の経験を振り返って、他の人々にとってのヒントとなるような、危険の兆候の見つけ方、役立ったこと、やっておけば良かったこと等があれば、ぜひシェアしてくださいということです。

指導・監督することについてもう少し知りたいという型は、是非Supervision Whisperersも覗いてみてください。

原文を読む:https://thesiswhisperer.com/2017/04/19/8195/

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