論文のマイナー修正への対処方法

オーストラリア国立大学のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。学術雑誌に投稿した論文が査読の結果、小幅な修正(マイナーリビジョン)という条件付きで受理された経験を持つ研究者もいることでしょう。イギリスや他の国の大学院では、博士論文の審査で修正の条件付きで試験に合格とするシステムがあるそうです。今回の記事は、イギリスのブリストル大学のメアリー・フランク(Mary Frank博士による、学位論文の審査で「マイナー修正」を求められた際、どのように対処すればよいかのアドバイスの紹介です。


論文審査でフィードバックを受けた後の流れについて考えたことはありますか?イギリスをはじめ、多くの国では、学位論文へのフィードバックはvivaと呼ばれる口頭試問にて伝えられます。オーストラリアでもvivaが一般的になりつつありますが、まだ書面で審査結果を知る人がほとんどです。いずれの方法で結果を受け取ったとしても、マイナー修正が求められた場合には、フィードバックに基づいて指導教官と相談しながら論文を修正しなければなりません。マイナーな修正は簡単なように聞こえますが、実際に完成した論文に変更を加えるのは厄介です。

今回の記事は、イギリスのブリストル大学で翻訳学の博士号を取得したメアリー・フランク博士によるものです。彼女は翻訳理論と翻訳実践の相互作用を研究し、1960年代にドイツ民主共和国で書かれた風刺小説集を、3つの異なる翻訳に仕上げました。研究テーマは、文学翻訳、ドイツ民主共和国の文学作品の翻訳、多面的な翻訳(1つのテキストから複数の翻訳を作成すること)です。詳細は彼女のLinkedInを参照してください。(https://www.linkedin.com/in/mary-frank-0b27619/

*****ここからメアリー・フランク博士による寄稿文書*****

イギリスのシステムでは、博士課程の学生の大半は「マイナー修正」を加えることを条件にviva(口頭試問)に合格となります。しかし、何も考えず試験官に言われた通り修正すればよい、というほど事は簡単ではありません。

運が良ければ、タイプミスやフォーマット上の問題点などを直すだけで済みます。どんな論文にも必ず含まれるこうしたミスを確実に修正した上で最終版を提出します。ところが、このように軽微な修正で済むのは、全体のほんの一握りに過ぎません。私の場合も「マイナー」とされながらも、実際には、再考や書き直しが求められていました。そのような修正作業には、気力と頭脳を再集結させなければならないのですが、そんなこと誰も教えてくれません。私も、まったく準備のできていない闘いに臨まなければなりませんでした。

はっきり言っておきますが、「マイナー修正」の条件付きでもvivaに合格することは素晴らしい成果です。論文が間違いなく要求された水準に達していて、論理的な流れの明確化や説明の改善などをすればよいということだからです。修正が必要となる原因は、例えば、自分や指導教官が研究に没入しすぎて、初めて読む人に分からないポイントを見落としてしまうことなどです。つまり、「マイナー」な修正の要求は的を射たものであり、最終的な論文の質を向上させる上で役立つものとして歓迎すべきものなのです。それなのに、試験官に修正箇所を列挙された私はなぜ、修正を大変な重荷のように感じてしまったのでしょう。vivaの結果として、条件付き合格は最も可能性が高く、別に驚くべきことでもなかったのに。

問題は、研究と執筆に6年の歳月をかけた後、(自分の力ではどうにもならない)長く不安な状態でvivaを待っていた間に、私は燃え尽きてしまったのだと思います。もう何も絞り出せなかったのです。vivaの後、指導教官がスパークリングワインのボトルを開け、みんなで私を祝福してくれましたが、私自身はお祝いするような気分にはなれませんでした。消耗しきった脳で、求められた修正に対処しなければ最終的に合格できないと考えていたのです。試験官や指導教官にとっては、確かに「マイナー」な修正だったのでしょうが、私にとっては、とてもややこしい作業に思われたのでした。

「必要最小限の修正で済ませなさい」というのが指導教官のアドバイスでした。私は数日間、論文を見つめることしかできませんでした。まるで石に刻まれている文字を見るように。その後、非常にゆっくりと気力と頭脳を振り絞り、最も簡単な誤字脱字の修正に取り組めるようになりました。次の段階では、考え直したり、書き直したりする作業に着手しました。最終的には、論文の3つの箇所にパラグラフを追加し、別のパラグラフでは論旨の説明を詳細にしました。実際にやってみたら、大したことではありませんでした。

マイナーな修正への対処法に関するアドバイスというものがほとんど存在しないのは、私の反応、つまり過剰に大変な作業だと感じたことが珍しかったからかもしれません。あるいは、指導教官のような立場の人たちが、自分の論文を再検討するということがどんな経験なのか、すでに忘れてしまっているからなのかもしれません。他の人が私のようなショックを受けずにすむように、私からのアドバイスを書き出しておきます。

– vivaは、博士課程での重要な節目ですが、最終的な到達点ではないということを肝に銘じておきましょう。イギリスのvivaと同様に、修正を条件として合格にするシステムを採用しているところでは、修正が求められることがあるため、エネルギーを温存しておきましょう。

– 修正に取り組む際には、自分の論文を俯瞰的に見ることが有効です。編集者の立場で他人の論文を批判的に読んでいることを想像してみましょう。それにより、どこをどう直せばいいのかわからないという壁を乗り越えやすくなります。

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メアリー、アドバイスをありがとう! 今、論文の修正に取り組んでいる人、もしくはすでに求められた修正をやり終えた人も、後続の学生へのアドバイスなどあれば、ぜひお送りください。

原文を読む:https://thesiswhisperer.com/2019/03/06/what-nobody-tells-you-about-minor-corrections/

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