初めての相手へのお願いごとメール – 失敗例と成功例

オーストラリア国立大学のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。人と連絡を取るのに便利な電子メールですが、手軽な一方で失礼な文面になってしまったりしませんか。会ったことのない相手にメールを送ることもあるでしょう。今回は、失敗例と成功例から面識のない相手にメールでお願いごとをする時に気をつけたいことや、忙しい相手に依頼を検討してもらいやすくするかを説明してくださいました。


もはや電子メールなしのコミュニケーションは考えられませんが、簡単に連絡を取ることができる反面、失敗するのも簡単です。

人間とは不思議な存在です。高い社会性を持ちながら、それぞれ特有の個性を持っています。愛情にあふれているかと思うと、地位や権力をめぐって争うことも少なくありません。そして、中産階級的なのに独特の言語や作法を持つ学術界は、社会的挑戦の場と言えます。学術界で効果的なメールを送るには次に記すようなスキルが求められるのです。すべて簡単なことのように見えますが、これらを侮ると相手を怒らせてしまうことになりかねません。

面識のない研究者に対してメール、いわゆる「コールドコール」を送る理由はいくつか考えられます。

  • 現在のプロジェクトに関してのサポートや助言を求めたい
  • 講演依頼やデータ、自分では入手できない論文の提供を依頼したい
  • 仕事の依頼
  • 相手への敬意を伝え、つながりを築きたい

Twitterで尋ねたところ、同業者や一般人からの不適切で専門外の内容に関するメールに対して不満を抱いている研究者が驚くほど多くいました。迷惑メールの送信者の中で最もタチが悪いのは学生だ―とは言いませんが、一般的な学術関係者の受信トレイの中で、どのようなメールが嫌がられているかを知っておくのは良いことでしょう。例えば以下のようなものです。

  • あなたの最新論文に自分の研究が引用されていないことに対する文句のメール
  • 理論や研究結果が間違っていると指摘するメール(その研究に反駁する論文を書くより、メールを送る方がはるかに容易です)
  • 学術的専門知識を疑うメール(女性考古学者のCatherine Friemanが「私は石製の武器について執筆しています、というだけで不機嫌になる男性がいる」と書き込んでいるように、少しジェンダーに関連する問題も含まれるかもしれません。)
  • 研究作業を頼んでくる学生からのメール
  • 研究参加者の情報を求めるメール(ほとんどのプロジェクトには、個人情報の共有を防ぐための倫理的な手続が設けられています)
  • 脅迫メール(多くは右翼メディアによるものです)

例として、一般の人から同僚の物理学者に送りつけられたメールをお見せしましょう。

件名:量子エンタングルメントに基づく部品の機械的接続

(テキスト訳)

このようなメールを送ることは普通ではないと思われるかもしれませんが、私の考えをお伝えしたいと思います。エンタングルメントに基づく粒子間の相互作用に関する私の仮定が正しければ、例えばボルトとナットといった機械的な接続はすべて、量子エンタングルメント、相対性、および異方性に基づいて分析できる可能性を有しています。ただし、量子エンタングルメントに基づき、それがどのように機能するのかを包括的に理解するには多くの研究が必要です。そして今私は、量子エンタングルメント、相対性、異方性に基づき、摩擦がどのように働くかについて考察しています。私はかなり前からこのことを考えています。

次のようなメールもありました。

件名:電子―エネルギー、情報、意識 / by イスラエル・ソクラタス/

(テキスト訳)

電子―エネルギー、情報、意識/ by イスラエル・ソクラタス

情報とエネルギーには関係がある。

(情報量は、メッセージを受け取るために必要なエネルギーの量と関連がある)

#

エネルギー情報の本質とは何か?

エネルギー情報の本質は、電子である。

電子とは、エネルギー情報の最小単位である。

単一のビットにエンコード化された情報―電子

#

情報は電磁波で伝達される。

電子なしに電磁波は存在しない。(H. ローレンツ)

#

「情報は新しい原子や電子であり、

宇宙の基本的な構成要素である…

私たちは今、世界はすべて情報でできていると考えている。

全てがビットで構成されるのだ。」

/ ブライアン・アップルヤード/

#

「現在物理学では、

エネルギーとは何なのか理解していない。

エネルギーが一定量の小さな塊となって現れるというようには捉えていない。」

/電子について リチャード・ファインマン/

(これらのトンデモ・メールを転送してくれた@ad_micoありがとう!)

こうした迷惑メールはともかく、学術界で面識のない相手にメールを書くことはよくあるので、上手く書けるようになっておきたいものです。

1週間ほど前、ブロガー仲間のヘレン・カーラとパット・トンプソンからあるアイデアを持ちかけられました。ヘレンは最近、誰かから理不尽な要求をされて嫌な思いをしたといいます。私も同じような経験があって共感できたため、彼らと一緒に相互リンクを張った記事の投稿を行うことにしました。まず、ヘレンが、 10 tips for getting the best out of busy people (忙しい相手から最高の答えを引き出すための10のヒント)という記事を投稿しました。これに関する私の考えを書き出してみます。

メッセージを受け取ることはうれしい

本音を言えば、実質的、感情的、知的にでも、何らかの形で相手の役に立てたと聞くのは嬉しいものです。一般に研究者は、自分の研究が(a)読まれて、(b)有益だと思われて活用されたという話を聞くのが好きです。

幸運なことに、私は週に5~10通の称賛のメールを受け取ります。これは、10年以上のブログ執筆と、博士号取得をテーマにした計50万語以上の出版物の賜物です。「博士号を無事に取得できました」という短い感謝のメッセージもありますが、次のような心のこもったメッセージをもらうこともあります。

「これまで私は、自分の複雑な要求や期待を世界や人々が完全に満たしてくれなかった時、不満を言葉にすることは当たり前だし、簡単だと思っていました。これからの10年は、物事がうまくいった時にも自分の気持ちを素直に表現することにしました。

私よりも(英国紳士らしく)感情を押さえ込む兄も、最近、私への愛情を言葉にしてくれるようになりました。実際はメールで気持ちを伝えてくれたのですが、面と向かって親密な感情を表現すれば、私たちのどちらか、もしくは双方が心臓発作でも引き起こしかねないのを懸念したからでしょう。それでも、頭がよく、はるかに成功している兄が感情を言葉で伝えてくれたことは、私にとって大きな意味がありました。

あなたに愛の告白をするつもりではないので心配しないでください。私はただ、「魂の闇夜」とでも呼ぶべき博士号取得への道のりを乗り越える上であなたが果たしてくれた、重要で、しかし控えめな役割に感謝を伝えたいのです。研究分野特有の、還元主義的、実証主義的な視点に捉われすぎないようにしていただきありがとうございました。このような気持ちを言葉にする勇気があれば、お会いしたとき伝えたいと思います。」

たとえ面識のない相手であっても、ためらわずに称賛のメールを送りましょう。困難な時期にあって、そうした言葉は世界にほんの少しでもやさしさを届けてくれます。

何を求めているかをストレートに伝える

研究者はメールへのレスポンスが悪い、とよく言われます。確かにその通りなのですが、何をしてもらいたいのか明確に書かれていないメールには返信しづらいのです。

求めなければ何も得ることはできない―というのが私の信条です。なので、本当に何かを求めているメールには必ず返信するようにしています。メールをくれた相手には喜んで、アドバイスや、リソースの紹介、励ましの言葉を送ります。私の知るかぎり、ほとんどの研究者は私ほどメールをうまく処理できていません。正真正銘の依頼メールが受信ボックスの片隅に取り残されて、埋もれていることもあるのです。

忙しい相手に何かを依頼する場合は、できる限り明確に(そして丁寧に)書きましょう。余計な話はせず、依頼事項だけを伝えるメールにしましょう。ひとりに複数の依頼事項がある場合は、複数のメールを送るようにします。面倒だと思うかもしれませんが、それぞれのメールに依頼を書き分けた方が、注目される可能性が高くなります。とはいえ、注意も必要です。

相手が断れるようにしておく

まず、依頼に応じられるか否かを確認してください。

例えば、校正や論文作成の手伝いをして欲しいという人からメッセージを受け取ることがよくありますが、私は自分のウェブサイトのAbout ページに、そうした依頼は受けないと明記していますし、Recommendのページには倫理的なサービスを提供する会社の情報やリンクを掲載しています。私はTextExpanderというツールを使っているので、このような依頼に数回のキー操作で返信できますが、ツールを使用していない人からは返信がないかもしれません。

多くの人は断るのが苦手なため、メールを見なかったことにしてしまうのです。

ここで覚えておきたいのは、忙しい人は大抵成功を収めていて、親切だということです。怖がらずに声をかけてみましょう。ただし、声をかける前には、少し下調べをしておきます。相手が依頼を断れるように余地を残すやり方については、後ほどで詳しく説明するとして、先に相手へのアプローチの仕方について書きます。

実際に話したい相手でなければツイッターでタグ付けしない

忙しい人にコンタクトを取る方法は、メールだけではありません。ソーシャルメディアの投稿で特定のユーザーにコンタクトする最良の方法はタグを付けることです。これは相手を会話に引き込む効果があります。相手の関心を引き、質問に答えてもらうのに手っ取り早い方法です。

私はタグ付けされるのが大好きです。嘘じゃありませんよ。ツイッターでは、私が興味を持つような会話によく招待されます。そのおかげで、役立つ論文や連絡先、多数のツールを手に入れることができました。最近見つけたのは論文の類似度を図式化して示すサービスのconnectedpapers.comです(ここで読むのを中断してもいいので是非試してみてください!)。ソーシャルメディア上に飛び交っている質問は私にとって有用です。私のブログ記事にはそうした質問に触発されて書いたものが多いのです。

嫌なのは、私が知らない製品や宣伝したくない製品の認知度を上げるためにタグ付されることです。

これはアルゴリズムの悪用です。私のフォロワー数を利用して、自分の商品を売ろうとする人の多くは、明らかに怪しいサービスを提供しており、最近ではすぐにブロックするようにしています。

ここでのポイントは、状況に合わせたマナーを守るべきだということです。プラットフォームが変われば行動も変えなければいけません。もし、新しいコースや本に注目して欲しいのであれば、タグ付けするのではなくメールで連絡してください。

サポートが必要な場合はあなたの世界に招待する

私の専門性が必要な依頼であれば、まったく問題ありません。むしろ光栄にさえ思います。私が気に入りそうなことを教えてくれることも大歓迎です。でも、最近受け取った下のメールはどう思いますか。(送信者を特定できる箇所は伏せてあります。)

「この数年、私は[オンライン・プロジェクトの名称]を運営してきました。その間、私はあらゆる年齢層の多くの人々に[トピック/話題]について話してもらい、たくさんのことを学びました。最近、そこで得た知識の一部を[ブログ]で公開し始めました。私がある[トピック]について書いた別の記事は[大手ウェブサイト]に掲載され、30万人以上に読まれました。明らかにこのトピックには幅広い層から関心が寄せられています。

現在は、[タイトル(仮題)]を書いているところです。エージェントからは、そろそろ世界に向けて発信してみてはどうかと言われており、出版できるのを楽しみにしています。私はあなたのサイトのファンなのですが、私が研究したトピックの多く(私の書いている本の主要な部分)が、あなたの読者にも興味を持ってもらえそうだと気づいたので、[この本が売れるということを出版社に証明するためのメールアドレス収集のプロジェクト]について記事を書くことを検討していただきたいのです。

もし私の本が出版されるまで待ってから記事を書きたいと思われるのであれば、現時点で私が出版社に提出している企画書にその旨を記載することを許可していただければと思います。」

要求は明確ですが、けっこうな内容です。この人(以下Aさん)が私に求めていることを書き出してみましょう。

  1. 私自身の研究とあまり関係ないAさんの研究に興味を持つこと
  2. Aさんの記事を読むこと
  3. Aさんのオンラインアーカイブの資料やブログ記事を読むこと
  4. Aさんの研究と私の研究を結びつけ、Aさんのメーリングリストに引き込むような記事を書いたり、読んだことのない本を推したりすることを約束すること
  5. Aさんの本の出版契約を助けること

好意的に見れば、Aさんは自分のアイデアにワクワクしていて、私にもワクワクして欲しいと思っているだけかもしれませんが、実際のところ私はイラっときました。AさんはAさんために私がそれなりの時間を費やすことを要求しているからです。時間はとても貴重なのに。

このリストを全部やろうとすれば、何日もかかります。その時間で、学生に教えたり、学生の原稿を採点したり、世界中の悩める学生からの真摯な問い合わせに対応したり、アルゴリズムを作ったり、博士課程の学生が学外で仕事を見つけて卒業後により良い人生を歩めるように求人検索エンジンPOSTACを更新したり、委員会の論文を書いたり・・・、いろいろなことができるわけです。分かってもらえますよね。

人を動かすのは以外と簡単

私はこれまで、オンラインや人脈を通じて、人々の才能が注目を集め、出版契約を結んだり、仕事を得るための手助けをしてきました。人が成功するために手助けすることは好きですが、一通のメールだけで助力を得られると思わないでもらいたいものです。むしろ、私に手助けしたいと思わせてください。そのためには、私があなたの依頼を断れる余地を残しておくことです。

先ほど、相手に対して「断る」ことについて触れましたが、断るということは予想以上の効果を発揮するのです。

ロバート・チャルディーニは、著書『影響力の武器(原題Influence: the psychology of persuasion)』の中で、人が考えている以上にお金を使うようにさせるために不動産業者や自動車販売業者が使う戦術を紹介しています。最も効果的なテクニックの1つは、相手が簡単に断れる小さな話をした後に、相手が断りにくい大きな話をするのです。(この本では、人間を操るのがいかに簡単かというちょっと怖いことが書かれているので、ぜひ読んでみてください。)

この戦略に基づいて、私に自分の本の契約についてメールを送ってきた人のことを見てみましょう。

彼はまず、自分の短い記事へのリンクを私に送り、私が興味を持つかもしれない理由を示し、記事を読むように誘ってから、私の反応を待つべきだったのです。私が「いい記事ですね」と返事を出せば、興味を引かれたということになります。そこで次の誘い―私が断るように考えられた誘いかけに進めばいいのです。この時点では、自分は私と同じようなブログを書いており、著書を出版するための契約を取ろうとしていることが私に伝われば良かったのです。出版経験のある著者として、彼の企画書を読んでフィードバックしようとしたかもしれないじゃないですか。

重要なのは、こちらが断っても大丈夫だという余地を残した状態であることを明確にしておくことです。例えば、「ご多忙な折に厚かましいお願いであることは承知しております。ご興味を持っていただき、企画が通ったときにあなたにお知らせする機会につなげられれば幸いです。」などと書かれているといいでしょう。

企画書を読むこと自体を断る可能性はありますが、簡単に依頼を断れるように書かれていれば少し気が楽になります。これは大切なことです。チャルディーニの本を読んでいなければ気づかなかったかもしれませんが、依頼を断ることで、次にチャンスがあればなにか役に立ちたいと思うようになるのです。

というのは、人からのお願いごとを断るということは、自分は親切な人だというアイデンティティを悩ませることになります。人は、自分が親切な対応をしなかったと感じると、次はもっと親切にしなければと思うものです。私の場合、自分自身と他者に自分をよく見せなければと強く思います。だからこそ、私が簡単に断ることができるようにしておくことは、実際には別の機会に依頼を受けてもらえるためのお膳立てをしていることになるのです。一度断った後に書評を書いて欲しいと頼まれたら、「ブログ記事は面白かったし、前回の依頼にはお応えできなかったので、今回はお引き受けします」となったかもしれません。

このようなやり取りを1年でも続けていれば、それぞれが出版した本をお互いに宣伝したりする、素敵な友人関係を築くことができるでしょう。

さて、先述のメールを送ってきた人にどう返答したかと言うと「あなたのプロジェクトについてお知らせいただきましたが、ご依頼をお引き受けする時間がありません。」という冷ややかなメールを返しておきました。

最後までお付き合いいただきありがとうございます。忙しい人たちからあなたが必要とする手助けを得るために、この記事が役立つことを願っています。

インガーより

原文を読む:https://thesiswhisperer.com/2021/07/07/cold-call-emailing/

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