博士号…さらに子供4人?

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン教授のコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回は、4人の子どもの妊娠・出産・育児と並行して博士号を取得したサラ・スタンフォードの記事を紹介します。


博士号取得のための子育てについて何度か書いてきましたが、私には子供が一人しかいないので、他の人の話を聞くと、ちょっとラクな部類の子育てをしているような気がします。4人の子供を抱えて博士号を取得するなんて話しに比べたら!今回はサラ・スタンフォード(Sarah Stanford)による記事をご紹介します。サラは、青少年に関わる牧師やユースワーカーとして、自傷行為を行う多くの若者のサポートをしてきました。 そして、より広い活動で貢献したいという思いから、自傷行為についての研究で博士号を取得し、学校、教会、その他の地域社会で、自傷行為への理解と対応、予防を促す活動を行っています。詳しくは彼女のウェブサイトとツイッターアカウントは、@DocStanfordで見つかります。

以下はサラによる記事です。

4人も子供がいると、奇異の目で見られることがあります。また、博士号を取得している人も、変わり者扱いされがちです。ですから、ここ数年、私が変な目で見られることが多かったのは想像に難くないでしょう。よくあるのは、以下のような反応です。

「正気なの?」

「スーパーママだね。」

「どうすれば、そんなことができるの?」

そしてもちろん、みんなが口にしないけど思ってる「…なぜ?」です。

博士課程では、良かれと思ってアドバイスをくれる方がたくさんいました。でも結局、そのほとんどに従いませんでした。ここでは、私が破ったルールと、私にとって効果的だったことを紹介します。

(先に断っておきますが、私にはとても協力的な夫がいました。彼は子育てや家事のあらゆる面で協力してくれました。ですので、これはあくまで私の経験であり、事情は人それぞれでしょう。)

私が破ったルール:

最初の出産までにできる限りのことを済ませておく

私は、博士課程の段取りに合わせて妊娠のスケジュールを立てる、とても計画的な人たちに出会ったことがあります。彼らは、データ収集の後に最初の子を産み、論文提出後すぐに2人目を生むような人たちです。

私はこのような賢明なやり方には従いませんでした。博士課程の開始時点で、私は1人目を妊娠していました。3人目と4人目の間に、データ収集の大部分を押し込んだのです。このタイミングの方が大変だったと思いますが、後悔はしてません。

妊娠中に保育施設を決めておく

託児所は、特に大学の敷地内にあるものは、すぐに予約でいっぱいになりますし、早めに押さえておくことは正しいアドバイスですが、私たちが選んだ道ではありませんでした。私たちは有料の保育サービスをあえて利用せず、夫の仕事と私の博士課程の間でなんとかやり繰りしました。最終的には、夫が勤務時間を減らし、私の博士課程の研究に合わせて仕事をこなしたのです。

家族や友人からの育児協力の申し出はありがたく受ける

家族や友人からの、育児サポートの申し出があれば、ぜひ受けることをお勧めします。残念ながら、私たちにはそれができませんでした。私たちの家族はみんなフルタイムで働いていて、3つの離れた地域に住んでいました。また、育児を共有するための友人ネットワークもまだ確立できていなかったのです。素晴らしいアドバイスなのですが、私たちには叶わない環境でした。

こま切れの時間を有効に使う

一日の中でこま切れにある少しの時間を活用することで、効率を最大限に高められます。ただし、私のように、それをうまく活かせない場合もあります。公園で読むために論文を持って行ったこともありますが、子どもがうろうろしてしまうので、目を離せませんでした。子供を寝付かせながら隣で文献を読み進めようとしても、同じ段落を何度も繰り返し読んでいて、意味が全く入ってきませんでした。現実問題として、私には長時間の作業が最も適しているのです。物事に没頭するのに時間がかかりますが、一度入り込めば深く没頭するのです。だから、私には脳がしっかり考えるための時間を作る必要があるのです。

できるだけ早く、赤ちゃんが夜中じゅう眠るようにする

いやいやいや。新生児のうちから子どもに12時間眠り続けてもらるように訓練しましょうって……。私の家ではそう上手くはいきませんでした。でも、夜通し授乳するのは生物学的に正常とされていて、SIDS(乳幼児突然死症候群)の予防にも繋がります。悪いことばかりではありません。

家や子供や気の散るものから離れた場所で作業をする時間を取る

私も時々離れた場所で作業していましたが、自分の家の作業が一番だと思うこともよくありました。うるさかったり、邪魔が入ったりはしますが、「ママはお仕事しなきゃならないの」と伝えるようにしていました。

データ収集はシンプルにする

最もシンプルで効率的なやり方でデータを収集する方法について、非常に賢明なアドバイスを受けました。心理学では、大学生のサンプルやオンライン参加者の募集がそれにあたります。でも私は自分の情熱に従い、主な研究プロジェクトに参加してくれる8つの学校を募集しました。

役に立ったこと

抱っこひもを使う

自分にとっても赤ちゃんにとっても快適な、良質でサポート力のある抱っこひもに投資しましょう。お近くのスリングミーティングに参加すれば、使い方を学べます。赤ちゃんを落ち着かせつつ、楽に作業できるようになります。

自分の直感を信じる

私が親となって学んだことのひとつが、「親のあり方は人それぞれ」ということです。自分の直感に従って、自分に合うことをするのです。うまくいかないときは、ネットで調べたり、他の親に聞いたり、いろいろなアプローチを試してみてください。

集中力を持続させる

博士号を取得するのはただでさえ大変なことですが、方向性がずれてしまうと、プロジェクトは肥大化してしまいます。最終的な論文の内容や、各研究がどのように組み合わされているのか、明確な目標を設定することで、作業が進まない時期でも生産性を維持できるようにしましょう。

研究を出版する

私は出版論文を学位論文としましたが、この決断に疑問を感じたこともありました。査読への対応、複数回に渡るリライト、異なるジャーナルに合わせたフォーマット調整などは、非常に時間のかかることです。しかし、学位論文のために書いたものを、出版するために書き直すよりも、時間を節約できたと思います。私の4本目となった最後の学位論文は、卒業後数ヶ月で出版されたので、今では、私の博士号はきちんと「完成」したと感じています。

作り置きをする

毎月1日は大量に調理をして、冷凍庫に詰めましょう。そうすれば、調理や後片付けに時間をかけずに、子どもたちと一緒に楽に食事を楽しむことができます。

とにかくやってみる

博士課程では、天命と感じたといったこと以外に、自分が研究を行う理由がよくわからないことがほとんどでした。もちろん、自分の研究が実際に人の役に立つかもしれないとは信じていました。でも、子供たちが「ママ」と叫んでいるのを横目に、一日がかりの執筆に追われる日々では、特に感動するようなことはなかったのです。それでも、とにかくやり続けたのです。

とにかくやる以外ない、という時があるのです。

インスパイアされる話でした、サラ!大家族と暮らしながらPhDを取得したという方や、介護をしながら博士号を取得するため、極端な生産性向上テクニックを使ったという方の話も聞いてみたいです。

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