オーストラリア国立大学のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。「THE THESIS WHISPERER」では、ミューバーン准教授以外の執筆者によるPhDアドバイス記事も掲載しているのですが、今回は、准教授がどのように執筆依頼や寄稿によって記事掲載をしているのかのお話や、それら記事の紹介です。
この「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」のブログは2010年の6月から書き続けており、この記事を公開する時点でおよそ9年になります。ブログを始めた理由のひとつが、学生に見せられるオンラインのリソースが欲しかったということです。当時、私は研究指導を4年ほど行っていて、博士課程の学生から同様な質問を繰り返し受けていました。「HOW DO I START MY DISCUSSION CHAPTER?(考察はどのように始めれば良いのですか?)」「THEORY ANXIETY(理論とは何でしょう?)」「WHAT IS THE BEST WAY OF TAKING NOTES FOR YOUR PHD?(効果的なノートの取り方は?)」「HOW TO WRITE FASTER(執筆のスピードを上げるにはどうすればよいでしょうか?)」「PUBLICATIONS IN YOUR PHD(博士課程の間に論文を出版するにはどうすればよいでしょう?)」
これらすべてに対する答えを書くには6カ月は掛かると踏んでいたのですが、幸いそこまでは掛かりませんでした。そしてブログは今でも私にとって、自分の研究や教育を伝える刺激的でクリエイティブな場となっています。
「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」での執筆依頼に多くの人が応じてくれたことも私にとっては幸いでした。理由はいくつもあります。様々な声に耳を傾けることで人は賢くなれます。人には人それぞれの価値ある視点や経験があり、寄稿者がそれを伝える場に「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」を選んでくれたことは本当にありがたいと思います。お読みいただいてきた方はご存じだと思いますが、週に1度のペースで、私と寄稿者と交互に新しい記事を公開してきました。隔週での記事公開という余裕のあるスケジュールのため、私は人々の声に自分の声を織り込むというスタイルで執筆することができました。このやり方がブログを面白くしたのは間違いないでしょう。そして継続できたのもこのやり方のおかげです。(毎週1000単語の記事を書いていたとすれば、とうの昔にやめてしまっていたでしょう。)
毎週、2つか3つの寄稿があり、続けていく中で、コミュニティ・メンバーの寄稿を受け付けるか否かについての方針も決まっていきました。寄稿をリジェクトすることはほとんどありませんが、必要に応じて公開前に執筆者に修正を依頼したり私自身が大幅に改定したりします。改定や再提出を依頼した理由で一番多かったのが、「博士課程で自分が学んだこと」という似通った内容であったことです。PhD取得のプロセスについて語ろうとすると、多くの人が自覚なしに他人と同じようなことを語るのです。理由は明快です。誰しもが同じシステムの中で、同様のプレッシャーを受けながら研究を行っているからです。ですから、システムと折り合いをつけるためのアドバイスが同じような話題に収れんするのは、不思議ではないのです。たとえば、指導教官の選び方、組織立てた研究、粘り強さや精神的回復力の大切さ、スケジュールを決めた執筆、失敗について学ぶことについて、健康状態を保つこと、などなどです。
だからといって「実体験からの教訓」系の寄稿を即座に却下してきたわけではありません。博士課程の学生は、それぞれ独自の歩みをしているわけですから、大抵のストーリーには他にない内容や興味を引く内容があるのです。初稿の時点でそれが見えたら、そその内容を前面に押し出して改稿するようお願いします。たとえば、「THESIS BY PUBLICATIONS: YOU’RE JOKING, RIGHT?(投稿論文をまとめた学位論文作成)」や「MARGINALISED IN PHD LAND(キャンパスから離れて行う研究)」「WE NEED TO TALK ABOUT DISABILITY AND CHRONIC ILLNESS DURING THE PHD(持病を抱えながらの研究)」「A PHD… PLUS FOUR KIDS?!(子育てとの両立)」「DOING A PHD IN YOUR EARLY 20S(所属する部門で少数派であること)」などです。(最後のタイプの寄稿はもっとあっても良かったと思います。)ほとんどの寄稿者は、自身の特別な事情に対応するための秘訣が、同様の状況に置かれた人々にとって役立つことを認め、書き直しを快諾してくれました。こうした記事は全ての人に向けられたものではなく、当初はヒット数もそれほど多くはありません。しかし、時間の経過とともに、同じような状況に置かれた人々にとって必読の記事となっていくのです。特定の状況に対するアドバイスがブログ上に残って、同様の問題を抱えた人々に向けられた公共サービスのように機能するというのはなかなか良い話だと思います。
自分たちのブログで公開済みの「実体験からの教訓」系の記事が送られてくることもあります。私に「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)に掲載したい」と言われると期待して、良かれと送ってくれるのですが、ほとんどの場合はお断りしています。自分たちのブログをソーシャルメディアでプロモートする方が、私のブログでコンテンツを掲載するよりも良いと思うのです。最近このような記事を紹介することに同意しましたが、複数の記事を合わせて紹介することでより大きなインパクトを持たせるということを思いつきました。そして、ブログで掲載済みのアドバイス記事をTwitterで募ったところ、かなりの数が届きました。今後、この記事のコメント欄にも届くでしょう。
以下は、私の元に最初に届いた博士課程学生へのアドバイス記事です。これらは全て「一般的アドバイス」だと思います。悪いとかつまらないとかいうことではなく、博士課程のほとんどの学生に当てはまる良識的なアドバイスです。私自身、これらすべてに目を通しながら楽しい午後を過ごせました。素晴らしいヒントや所見もあり、研究を始めようとする、もしくは、まとめようとする人にとって有益であろうと思います。
今後、同様の記事をリストに加えていく予定です。
今後もユニークな体験や視点を「研究室荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」で公開していきたいと考えていますので、これぞというものがある方はぜひお知らせください。
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To fund or not to self fund your PhD (you’ll need to scroll down a bit to get to this section)
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10 things I wish I’d known 10 years ago (warning – heaps of amazing links here. Don’t open unless you plan to spend the next two hours following them. I speak from experience!)
10 things I wish I knew when I started my PhD
Three things I wish I knew before starting a PhD
University email: a PhD exit strategy (little discussed, but very important information)
Advice for doing a PhD (A compendium of advice from Twitter)
原文を読む:https://thesiswhisperer.com/2019/05/08/more-advice-on-advice/