博士論文提出を成功させる9の秘訣

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン教授のコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回は、論文提出をスムーズに進めるための、9つの秘訣を解説するジュヌヴィエーヴ・シンプソンによる記事を紹介します。


博士論文の提出を控える皆様に、ジュヌヴィエーヴが、そのプロセスをスムーズに進めるための素晴らしいポイントを教えてくれます。

2016年、ジュヌヴィエーヴ・シンプソン(Genevieve Simpson )は、住宅用太陽光エネルギー技術とその導入を支援する政策に対する地域社会、産業界、政府の認識の調査研究により博士号を取得しました。彼女は、これから自分の研究成果をいよいよ「現実の世界」に持ち出すことを楽しみにすると同時に、西オーストラリア大学で教えたり、大学院の仲間との毎日が終わることに寂しさも感じています。彼女のツイッターアカウントは @gensimpson_wa。以下はジュヌヴィエーヴ・シンプソンによる記事です。

友人から、博士論文を提出するのに何を注意すべきか、アドバイスを求められました。経験することは人それぞれだと思いますが、以下のポイントは博士号取得を目指す人のほとんどの人にとって有益だと言っても差し支えないと思います。

提出に必要な事務的要件をしっかり押さえ

これは一番重要なことなので、最初に書いておきます。 自分の大学の提出プロセスを見て、各ステップにどれくらいの時間がかかるか、情報がどれくらい前に必要になるのかを把握しておきましょう。例えば、論文を書き終えてから、事務処理に取りかかりたいと思うかもしれませんが、提出日になってから、2週間前までに試験官を指名しておかなければならなかったと気付くような事態は避けたいでしょう。大学職員、教員、(必要があれば)研究室の、各レベルでの事務的要件を把握しておきましょう。と同時に、大学への未納の料金がないか確認しましょう。 先延ばしにしていた支払いがあれば、それが論文の受理を阻む要因にもなり、非常に大きな問題となり得ます。
事務的要件を知ることの一環として、提出のための作業を把握しておくこともあります。 たとえば、(1)論文をPDF形式にする、(2)論文をUSBに入れる、(3)提出書類にサインをもらう、(4)印刷所に財布(と関連書類)を忘れず持っていく、など。印刷所に着いてから、USBに論文のデータが入っていない、財布を(週末で帰省中の)指導教官のオフィスに忘れていることに気づいたなどという事態になったら、泣くしかありませんね。(泣いてもいいんです)。

口頭試問がある場合

オーストラリアでは、口頭試問はほとんどの大学で(現時点で)論文提出の正式な要件ではありません。 しかし、人前で研究を発表することは、アブストラクトに記載する重要なポイントを把握したり、研究の問題点や長所に関するフィードバックをもらったりする絶好の機会です。発表することにより、質疑のコメントに基づいた修正を行うことができ、また提出までの鬱々とした期間の中で達成感(やるべきこと一つ完了!)を味わうことができます。

提出計画を立てる

すべての人が学位論文を提出する具体的な期日を決める必要はないかもしれませんが、各章や論文を完成させ、指導教官に提出し、フィードバックをもらい、期日までのプロセスのロードマップをまとめておくことは必要でしょう。 締め切りを守るのが苦手な人でも、論文の各部分がどの程度完成していて、次のプロセスに進むのに関わる関係者をある程度把握できるようにしておくと便利です。提出する論文は、簡潔な序論と結論を含む文書の束を提出するのか、すべての章を含む正式な論文を提出するのか、あるいはその中間のような文書になるのかを考えましょう。各章をどのように組み合わせるかを考え、X章を書いた後、A章に戻って書き直すことなくその後に続くY章を書き上げられるようにしておきましょう。

すぐ済みそうな作業のために、時間を十分残しておく

指導教官のサインをもらったり、参考文献の書式をチェックしたり、論文のレイアウトを考えたりすることは、予想外に時間がかかります。過去4~8年の人生を捧げたすべてがかかっているのですから、指導教官が突然病いに倒れたり、EndNoteのライブラリが消えたり、WordファイルがExcelと互換性がないと判断されたりする可能性が十分にあると想定して余裕のある行動計画を立てましょう。学位論文用のDropboxフォルダを設定し、提出日の前に、関係者全員にアクセス権を付与しておきましょう。締め切りの前日に、5MBの制限がかけられている大学のメールで43MBの論文を送らなければならないような事態は回避しましょう。論文の印刷にも時間がかかります。必要部数、製本の質、USBに移したデータ版の提出先などを把握しておきましょう。大学が定める推奨印刷業者の有無も調べ、あればその業者を使いましょう。私の大学の指定業者は少し高いですが、そこで働いている女性スタッフは学位論文の体裁を完璧に把握しており、私のPDFの下の余白を大きく、上の余白を小さく再調整してくれました。また、これも費用の話ですが、大学が印刷代を負担してくれるか、その場合、どのように請求するかを事前に調べてください。細かい請求方法の決まりがあるかもしれません。

精神衛生を守るプラン

博士課程を卒業した人ほぼ全員から聞かされることと思いますが、執筆の最終段階は、今までの博士課程をさらに加速させ、ターボで爆走するようなものです。ストレスを感じ、過労状態になり、混乱し、方向性を見失い、深刻な自己不信状態に陥ります。ですから周囲の人には、自分がこれからどんな時期に入り、どのように取り組んでいくのか、きちんと伝えておきましょう。普段SNS漬けの人は、友人に少しの間オフラインになるのでそっとしておいて欲しいと告げましょう。ストレス過多で肉体的に疲労してしまう人は、1日のどこかで身体を動かす時間を設けるようにしましょう。そして、もしこうした精神衛生を保つためのプランが上手くいかなくても、自分に優しく接しましょう。ちょっとした飲み会が夜遊びになってしまったり、良かれと思ってジム通いのために取っていた時間がパソコンに向かう時間になってしまったりしても気にし過ぎないことです。私の精神衛生プランには、毎週末に少なくとも1回は社交するという項目が含まれていましたが、提出後約1カ月は、精神不安定で何を見てもすぐ泣いてしまっていたので、社交の代わりにしばらく『ギルモア・ガールズ』をひたすら観ていました。それでもいいのです。

あちこちに食べ物を隠しておく(そしてその結果も受けとめる)

博士論文提出までの最終週は、深い思考(パニック)と熟考(ストレス)の期間です。 博士課程の最後の時期は、ビキニが着こなせるかどうかを心配する時期ではありません。 多幸感をもたらすスナック菓子やスイーツなどは食べても許されますし、むしろ、あなたの命を救うかもしれません。

奇妙な夢に慣れる

提出前に奇妙な夢を見たり、不眠については、信じられないほど多くの人が口にする現象です。私自身は普段から変な夢や不眠に悩まされているのですが、この時期はレベルが違いました。そして、他の人たちから聞いた話のとおり、それは博士号を提出した後も止むことはありませんでした。だからこそ、次のポイントもとても重要です。

論文提出後に何か楽しいことを計画しておく

パーティーでも、休暇でも、1週間ぶっ通しの工作でも、論文提出後は一定のオフの期間を取ることをお勧めします。私は論文を提出した後、3連休を取り(その中にはかなり派手なパーティーも含まれていました)、その後、その他の作業を終えるために火曜日には研究室には戻ってきたのですが、提出後は抜け殻状態になり、しばらくソファに突っ伏して、Netflixの“『ギルモア・ガールズ』を見続け、再生ボタンを押す以外のことは何もできませんでした。とにかく、休むことが必要なのです。

周囲の人たちに感謝を伝える

夕食を作ってくれる人、コーヒーを運んでくれる人、洗濯をしてくれる人、論文の書式を調整してくれる人、校正してくれる人、あるいはただ「あなたならできる」と励ましてくれる人がいたからこそ、博士号を取得できることに感謝し、その人たちの素晴らしさを伝えましょう

 

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