「Google Scholar」を活用しよう

自分の研究を進めるうえで、同じテーマで過去に書かれた論文を網羅的に読破することによって、いわゆる先行研究をチェックすることは、基本中の基本です。現在、その専門分野の世界で、何がどこまで明らかになっているのか、逆にいえば、何がどこから明らかになっていないのか、ということを正確に把握しておかないと、新しい知見を生み出すことなど不可能だからです。
また、専門分野や研究目的によっては、過去に書かれた論文そのものが分析対象の資料となる場合もあるでしょう。
では、そうした過去の論文を網羅的に集めるためにはどうしたらよいでしょうか? まずは、すでに知っている論文の脚注や参考文献リストに書かれている書誌情報をチェックすることです。論文にはほとんど必ずその冒頭で、先行研究への言及がありますから、その部分を重点的にチェックすればよいでしょう。そうして集めた論文について、また同じことを行えば、芋づる式に先行研究や資料となる論文を集めることができます。
しかし、それでも重要な論文を見つけ損なう可能性はあります。その可能性を少しでも減らすためにおすすめしたいのが、検索エンジンの活用です。
検索エンジン最大手のGoogleは誰でもご存知かと思いますが、Googleには「Google Scholar」といって、学術論文の検索に特化したサービスがあります。教授クラスの研究者でさえこのサービスを知らず、活用したことがない人もいるようですが、せっかく無料で使えるものなのですから、使わない理由はないでしょう。
通常のGoogleの検索窓(またはブラウザのツールバー)に、学術っぽい言葉を複数入れて検索すると、いちばん上に「◯◯◯の学術記事」という表示結果が出ます。これをクリックすると、簡単にGoogle Scholarにアクセスすることができます。
最初からGoogle Scholarを使いたい場合には、通常のGoogleの画面から、「もっと見る」→「さらにもっと」→「Google Scholar  学術論文を検索」という順番でクリックしていけば、「Google Scholar」のトップ画面にアクセスすることができます。

たとえば、いま話題の「幹細胞」について、その「倫理」的な問題を論じた論文を探したいのであれば、「stem cell」「ethics」と入力すれば、無数の関連文献が見つかります。

なおここでは、一般的なGoogleの検索機能すべてを使うことができます。Googleの公式サイト以外にも、もう少し高度な検索テクニックを紹介したウェブサイトがありますので、参考にしてみてください。
また、画面左側に表示されている文字をクリックすれば、論文が公表された期間を指定したり、上位に表示される結果の条件を替えたりすることができます。
とりあえず、この検索結果を見てみましょう。周知の通り学問の世界では、どれだけ引用されたか、つまり被引用数が重要です。この検索結果では、一番上に表示されている論文が「6455」回も引用されていることがわかり、重要であることが示唆されています。しかし、この論文は、幹細胞の倫理的問題を直接的に論じたものではないようです。Googleといえども、万能ではないことがわかります。
自分の研究にとって、それぞれの論文が重要であるかどうか、どれだけ重要かどうかは、1つひとつをクリックしてチェックするしかありません。タイトルだけを読む限り、たとえば上から3番目の「ヒト幹細胞の倫理:胚を超えて」という2008年に書かれた論文などは重要性が高いことが予想されるでしょう。
この検索結果のなかで、とりわけ注目されるのは、上から4番目の論文、とりわけその著者名です。「MJ Sandel」というのは、いうまでもなく、「ハーバード白熱教室」で有名な哲学者マイケル・サンデル教授のことでしょう。しかも掲載誌は医学におけるトップジャーナル『ニューイングランド医学雑誌』です。2004年、つまり「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」が登場する前に書かれたものなので、いまでは論じ方自体が古いことも予想されますが、著者が著者ですので、読んでみる価値はあるかもしれません。
題名をクリックすれば、とりあえずその本文を読むことはできます。しかし著者名が表示されませんので、サンデル教授が書いたものなのかを確認することができません。その場合におすすめするのは、検索結果の題名の右側「westlaboratory.org の [PDF]」をクリックすることです。そうすれば、PDFファイルで、雑誌に掲載されたそのままのかたちで、このテキストを読むことができます。

X

今すぐメールニュースに登録して無制限のアクセスを

ユレイタス学術英語アカデミーのコンテンツに無制限でアクセスできます。

* ご入力いただくメールアドレスは個人情報保護方針に則り厳重に取り扱い、お客様の同意がない限り第三者に開示いたしません。