大文字・小文字(2)

大文字と小文字の使い分け方について、前回に引き続き説明します。

5. 論文中のセクション、数式などを指す名詞

論文の中で本論文中または他の論文中のセクション、数式、図などに言及することはよくありますが、それらを指し示す際には、固有名詞を用いる場合と普通名詞を用いる場合、どちらのケースも存在します。以下にそれぞれの場合における例文を示します。

(5a) Let us consider Eq. (3.2).
(5b) Let us consider the above equation.

(6a) The results are listed in Table 1.
(6b) The results are listed in the following table.

(7a) Each of these functions is plotted in Fig. 3.
(7b) Each of these functions is plotted in the figure.

(8a) In Section 4, we discuss the present political situation in Chile.
(8b) In the following section, we discuss the present political situation in Chile.

(9)  It is interesting to compare this equation with Eq. (4.5) of Ref. [4].

6. 文頭

文頭では、原則として文章は大文字から始まります。したがって、「大文字」になりえないもの(記号、数字、数式、など)は文頭に置くべきではありません。

7. 種名

上で生物分類における大小文字の使い分けを説明しましたが、ここではその中でも「種名」についてもう少し詳しくお話します。
種名(正確には学名)は、動植物の場合には「属名+種小名」、細菌の場合には「属名+種形容語」となります(この命名法は「二名法」と呼ばれ、英語では「binomen」となります。)。その際の種名の大小文字の使い分けについては明確な規則があります。属名の先頭文字は大文字となり、種小名、または種形容語は小文字になります。また、属名においてはその先頭文字だけが表記される(たとえば、「Escherichia coli」が「E. coli」になる(ここでは分類群名が斜字体になることにもご注意ください。))ことが多く、その場合も、属名の先頭文字のみが大文字となります。さらに亜種まで指定する場合は、「Puma concolor cougar」または「P. c. cougar」という形となります。

8. 頭字語

頭字語(とうじご:ある語句を構成する各語*の最初の文字を並べ、略語としたもの)は一般的にすべての字が大文字になります。元々の表現が固有名詞(例えば、「APEC」(Asia Pacific Economic Cooperation)、「UN」(United Nations))であるか、普通名詞(たとえば、「RG」(renormalization group)、「CD」(compact disc))であるかは関係ありません。しかし例外もあり、大文字にならない頭字語も存在します(たとえば、「radar」(radio detection and ranging)、「laser」(light amplification by stimulated emission of radiation)など)。
*ほとんどの頭字語は各語の先頭文字から構成されますが、たとえば次のような例外もあります:「UNICEF」(United Nations Children’s Fund)、「TV」(television)、「AFDB」 (African Development Bank)、「NAACP」 (National Association for the Advancement of Colored People)。

9. 文章の中の文章

以下の例文は「文章の中の文章」という特別な構文を表します。

(10) The girl said, “You should not come here again.”
(11) The most important question is Does this divergence represent actual physical behavior?

(10)の例文は典型的な引用の形を示します。この場合、「You」が引用される文の文頭に置かれているため、Yが大文字になっています。(11)の例文はやや特殊なケースです。ここで「Does…behavior」は句でも節でもなく、完全文であるということに注目してください*。このような場合でも、文頭にくる単語は大文字で始まらなければなりません。(11)をより一般的な表現に変えると次のようになります。

(12) The most important question is the following: Does this divergence represent actual physical behavior?

*文法的に見ると、この文章は主文の主語「question」の補語(いわゆる主語補語)となっています。


Dr. Paquette

グレン・パケットGlenn Paquette

1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。

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