「Shut Up & Write」:黙って書けってどういうこと?

オーストラリア国立大学のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回は、アメリカで巻き起こったユニークな運動の紹介です。

友人が教えてくれた「Shut Up & Write」運動は、アメリカで生まれた執筆するために集まるという活動です。やり方は実に単純。グループのメンバーが、特定の場所、大抵はおいしいコーヒーのある場所に集まって15分間ほどおしゃべりをした後、静かに書く。ひたすら書く。黙って1時間書いたらコーヒー休憩をしてから、またおしゃべりして終わり。

私自身は、ドアを閉めて電話やeメール、SNSなどすべての通信手段を閉ざして引きこもって文章を書くタイプなので、他の人と一か所に集まって文章を書くのはとても非論理的だと思ったのですが、結構な人数が参加して、しかもこの活動が継続していることが気になって、実際に自分でやってみることにしました。

まさにこの原稿を、キャンパス内のお気に入りのカフェに座って書いています。私の向かい側には、「The Research Whisperer」ブログの制作者であるジョナサン(Jonathan)がいます。私たち二人は20分ほど前に集合して、少し新聞を読み、コーヒーを飲んで、eメールのチェックをして、ついでに雑談もしました。そしていざ、携帯のタイマーを25分にセットしてから黙って書き始めたのです。

[残り時間 21:18分]

妙なことですが、絶え間なく聞こえてくるJonathanのタイプ音が、私自身も執筆作用中であることを自覚させ、私の指を動かし続けます。カフェの雑音はまったく気にならないどころか、心地よくなっています。独りではないと思えること……でも、これだけがShut Up & Writeがずっと人々に受け入れられている理由ではないはずです。

ジョナサンを見ると、キーボードを打つ手を止めてマウスを使って何かしています。ここでふと「これってジムでエアロビクスのクラスを取っているときの感じみたい」と気付きました。既に指は少し疲れているのに、しかも今座っている椅子はタイピングをするには少し高くて快適とは言いがたいのに書き続けている状況は、エアロビクスクラスの後ろで動きについてこられない太めで不健康な人のように見られたくないために体を動かし続けているのと似ていると思ったのです。何かを続けさせる推進力は人の目によるプレッシャーです!

「timeboxing」または「timeboxed」と表される時間管理手法は、それぞれのタスクに取り組むための時間「タイムボックス」を確保するというアイデアです。タスクを細分化し、それに費やす時間を制限することにより、大きなタスクをやり遂げるだけでなく、タイムボックスを強く意識して作業を進めることが生産性を高めるとされています。小さなゴール(作業目標)を設定したらタイマーをセットし、すぐに開始することができます。

私の場合、Shut Up & Writeに関するブログを書くというタスクに対し、Shut Up & Writeを実践してみた訳です。このテクニックをうまく使うための重要なのは、タスクの切り分け方です。特に、論文を作成するというような大仕事の場合、タスクの分割は必ずしも簡単とは言えません。

[残り時間14分20秒]

論文執筆全体をひとつの作業と考えたら頭がパニックになってしまうでしょう。そんなとき、タスクを分割してタイムボックスに落とし込むことは、できるだけひとつの作業を集中してやり遂げることを促してくれます。例えば、25分という時間を区切って小見出し分の文章を書いたり、少量のデータ分析をしたりできるのです。

ジョナサンは手を止めて宙を見つめています。考え事?あるいは行き詰った?私が書き続けていることが彼の集中を助けることでしょう。私も書くことに疲れてきているので、制限時間が来た後に彼と話しをするのが楽しみになってきました。

[ここで約4分間の編集]

作業効率以外でタイムボックスが役立つとされているのは、完璧主義に関わることです。私は自分が完璧主義だと言えるほどではないと自覚していますが、より良い文章にしたいがために作業が停滞してしまう「2歩進んで1歩下がる」の落とし穴に陥ってしまうことがあるのも分かっています。朝、書こうと思っているすべての題材を頭に浮かべて書き出しても、すぐに最初のパラグラフで「ちょっとした編集」をしていたりするのです。引用をチェックしたり、引用したすべてのニュアンスが正しいかを確認したりしているうちに時間が経過し、次のパラグラフに到達する前に昼になってしまったり。そんな私にとって、それぞれのセクションごとに具体的な目標を設定するタイムボックスは、落とし穴に落ちないようにするのを助けてくれます。

[残り時間1.01分…]

少なくとも、このブログ記事を作成するのにShut Up & Writeはうまく機能したようです。カフェにいた他人や雑音は消え、見えたのはキーボード上の自分の指、聞こえたのはJonathanのタイプ音ばかり。目標に向かって緊張感を持って作業することができたことは、この記事を完成させるのに大変役立ちました。また来週の金曜にやろうと思っているぐらいです! 編集後記:Shut Up & Writeで記事を作成するのがとてもうまくいったので、その後、毎週金曜の朝、大学キャンパスのカフェで誰でも参加可能なグループミーティングを開催するに至っています。

原文を読む: https://thesiswhisperer.com/2011/06/14/shut-up-and-write/

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