日英・英日翻訳はどうして大変なのか

英語で苦労している方は必見です。私たち日本人が英語を習得するのに苦労しているのと同様に、英語圏の人たちも日本語の習得に苦労しています。彼らは日本語を、世界でも有数の難解な言語として捉えているようです。それは双方の言語の文法の構造も違えば、文字も違うからです。

翻訳者の立場からすれば、原文の意図をきっちり反映すべく、一語一語もしくはフレーズごとに正確に置き換えたくなるものですが、日本語と英語の場合、このやり方でうまくいくことはまずなく、無理にしようとすれば、あまりにもぎこちない文章ができあがってしまいます。私たちが当たり前に使う日本語は、なぜ難しいのか。その理由に迫ります。

■ 日本語が難しい理由は日本語の特徴にあり

英語話者が「日本語は難しい」と口々に言う理由として、根本的な文法の違いに加え、以下があげられます。

・冠詞、不定冠詞がない(a, theなど)
・複数形がない
・未来形がない
・必ずしも主語は必要ない
・動詞が文章の最後にくる
・対象によって数え方だけでなく、形容詞や代名詞までも変化する
・英語では人称・数・性・格などにより語形変化しない品詞(副詞、接置詞、接続詞、間投詞、前置詞に相当する品詞)である不変化詞は意味を持たずニュアンスを伝えるが、日本語で不変化詞にあたる助詞は大きな意味を持ち、前置詞の代わりに動詞の意味を修飾する
・敬語が存在する
・文字(漢字)そのものが意味を持ち、音読み、訓読みといった複数の読み方を持つ漢字が存在する
・文字通りに翻訳することのできない単語やフレーズが多数あり、抽象的な概念を訳すことは非常に困難(「おつかれさま」「よろしくお願いいたします」など)

日本語の特徴を見直すと、この言語の複雑さがあらためて見えてきます。

■ 手間隙かかる日英・英日翻訳

こうした文法の違いから、日英・英日翻訳をする場合、翻訳者はより正確に意味を捉え、自然な訳文を作成するため、原文の意味を解析し、構文を転換するといった下準備が必要になります。この作業は言語構造が比較的に似ているインド・ヨーロッパ言語、例えばフランス語とドイツ語などの翻訳では必要とされないものです。

また、単語と単語が区切られていないという形態的な特徴も、日本語が難しいと思われる一因です。文章全体は句読点で区切られますが、ひらがなやカタカナで文字を並べた場合、区切る場所によって意味が変わってしまいます。一つひとつ意味のある漢字を組み合わせた熟語など、たった数文字の日本語が英語にすると長文になってしまうこともあります。

このように構造的、形態的にもまったく異なる日本語と英語の翻訳を行う翻訳者は、内容を捉えた上で、主語によって受動態・能動態を使い分けたりして、できるだけわかりやすくかつ簡潔な表現を心がけ、スムーズに読めるよう工夫することが求められています。

翻訳を行うために、翻訳者が双方の言語に精通していなければならないことは言うまでもありませんが、文法的な違いまで考慮した上で、より自然な文章に仕上げるのは並大抵の努力ではありません。類似性のある言語間の翻訳より圧倒的に時間をかけながら、正確な翻訳を実現する日英・英日翻訳者の仕事に着目してみるのもよいかもしれません。

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