博士過程(PhD)を生き抜くためのセラピー動物

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回のテーマは、博士論文執筆の相棒となるペットたちとについてです。


皆さんはペットを飼っていますか?辛い時にそばにいてくれるペットの存在は十分に評価されているでしょうか?この投稿は、ジョー・クライン(Jo Clyne)博士によるものです。ジョーは2015年にメルボルン大学で歴史・演劇学の博士課程を修了しました。幾晩にも渡ってストレスの多い論文修正を行っていた間支えてくれた飼い猫のサムに、彼女は感謝しています。ジョーのTwitterアカウントは、@joclyne1です。

以下ジョー・クライン博士による文章です。

学者や作家は、動物がもたらす癒しの効果について昔から知っていました。マーク・トウェインは飼い猫たちに囲まれた写真をよく撮られていましたし、私のお気に入りでは、E.B.ホワイトが愛犬のミニーに見守られながらタイプライターの前に座っている写真などもあります。

現代の研究者や博士課程の学生は、こうした流れを、SNSにペットの写真を#academicswithcats #academicswithdogs #phdcats や #phddogs などのハッシュタグをつけて投稿することで今に引き継いでいます。多くの投稿者は、孤独感やスランプに悩まされていて、ペットとの気晴らしにつかの間の喜びを見出します。よくあるのは、ペットが原稿にいたずらしていたり、研究資料の束の上で寝そべっていたりする写真です。

こうした投稿の動物たちはよく「研究助手」や「指導教官」などとキャプション付けされます。そして邪魔をしている姿は、愛情を込めて「手伝い」と言い換えられます。こうした写真は、孤立や先行きの見えないことの多い論文執筆という作業の間、動物たちがただそばにいてくれることを称えるものです。

『ハリー・ポッター』と、それより前に書かれたあまり有名でない類似作の『The Worst Witch』で、生徒たちには、仲間として、またメッセージを届けるなどの実際的な助け手として寄宿学校に動物を連れてくることが奨励されています。『The Worst Witch』では、到着した新入生全員への配布物の一環として猫があてがわれます。頻繁に動物と触れ合うことは、精神衛生上、非常に良い影響があるため、大学院生にも入学時に同じように猫を配布すべきだと思ってしまうことがあります。

ペットのいない論文の書き手の皆さんには、「論文療法」の動物は、自分が飼っているペットである必要はないと指摘しておきます。私は、博士課程に入学して最初の数ヶ月は、近所の猫と一緒に裏庭のソファで楽しく文献レビューを書きました。私のパートナーが「プディング」と呼び、私が勝手に自分のペットにしていたその猫は、私がいつも家にいて、執筆を先延ばししている時期にはものすごく構ってくれることが嬉しいようでした。飼い主がプディングを連れて引っ越した時、私はショックを受けて、すぐにスランプに陥りました。しかし、猫のサムが我が家にやってきて、そのショックはいくらか和らぎました。サムはすぐにプディングのあとを継ぎ、私は博士号を執筆作業に戻ることができました。

ストレス過多の大学院生にとって、セラピー動物の価値は多岐にわたります。まず、数年にわたる研究を論文にまとめるのが孤独な作業であることです。おしゃべりな博士課程の学生2人とトイレサイズの研究室を共有すれば、連帯感を感じられるでしょうが、2つの仕事を掛け持ちしながら1時間かけて通学しているような学生は、おそらく自宅での作業することになります。動物たちは、あなたが本当に難しい章に取り組むのを邪魔しないように寄り添ってくれるでしょう。ペットは口頭試問であなたより良い結果を出して、次の3ヶ月間それを自慢してくる可能性も非常に低いのです。

私のような人間の場合、論文を書くのに最適な時間帯は、真夜中から午前4時の間で、その後にソファで眠ってしまいます。フォックス・モルダー(訳注:ドラマ『Xファイル』の主人公)ばりの行動時間帯です。このような反社会的な時間帯に、相手をしてくれる家族はほとんどいないはず。そこで、論文のセラピー動物が机の下か上に座って、ときどき腕をなめて励ましてくれるのが頼みの綱となるのです。この経験は、ソーシャルメディア上で他人のペットを追いかけることで疑似体験することもできます。

あるPhD学生の研究室の前を通りかかったとき、ドアに「爆音で音楽を楽しむため、ドアを閉めています」と断り書きが貼られているのを目にしたことがあります。その言葉通り、防音対策が不十分なドアから、非常に喧しいヘビーメタルが流れていました。多くの学生は音楽を聴いていると作業がはかどるようですが、私の場合は気が散って仕方ありません。ペットであれば、のどを鳴らす音や息づかい、鳴き声、噛む音、あくび、いびき(私の猫は副鼻腔に問題がありました)などで、楽しいホワイトノイズを提供してくれます。静寂の隙間を埋めるのに十分なバックグラウンドノイズがあることで、論文に全く無関係ではなさそうな情報をネットで見て執筆をダラダラと先延ばしするようなこともなくなるでしょう(皆さんは「PhD Comics」というウェブサイトを見てしまったことはあるでしょうか)。

動物は温もりを与えてくれます。ペットを飼うことで得られる無条件の愛という心の温もりだけでなく、実際の体温の上昇をもたらしてくれるのです。私が大学に入学してからの3年間は、断熱材のない吹きさらしの家で過ごしました。外より中の方が寒いということさえあって、サムが優秀な膝猫であることが証明されました。また、猫の方でもノートパソコンの熱に引き寄せられます。熱を求める猫を飼っている人は、こまめにバックアップを取るようにしましょう。これは重要です。

博士課程の学生たちはしばしば「セルフケア」つまり、マインドフルネスや健康的な食事、研究と余暇のバランスなどを実践するよう促されます。しかし、私個人的には、日当たりの良い窓際で猫が足をきれいにしているのを見ることほど、心が静まる効果を持つことはないと思っています。

ジョー、毛むくじゃらの仲間たちへの楽しい賛辞をありがとう。さて、皆さんは動物の仲間と一緒に博士号取得に励んだ経験がありますか?ぜひ、コメントで聞かせてください。

原文はこちら

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