PhD(博士課程)の面倒な作業はヴィーガンのジャンクフードのようなもの

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回は、博士課程をいたずらに忙しくする作業について、本当に必要なものと、実は無意味かもしれない作業についてご紹介します。


親愛なる読者の皆さん、こんにちは。

この冬は忙しく、私は選挙が終わって抜け殻状態です。先月、12年間で初めてThesis Whispererの投稿ができませんでした。長く続けていた習慣を破ってしまったことを悔みつつも、前の投稿はかなり長文だったし、今でも多くの方に読まれているのだから、と自分を慰めています。

肝心なのは、気を取り直して、また始めることですね。時々、面白いタイトルが頭に浮かんで、アイデアのメモを書き留めても、それ以上進まないということがあります。この記事は、数年前から半分完成しないまま、アーカイブに眠っていました。今週も時間に追われる中、40分の空き時間でそのメモを公開するに値する記事に蘇らせることができたかなと思うので、楽しんでいただければ嬉しいです。

私はヴィーガンのジャンクフードが死ぬほど好きです。ビヨンド・ミートのダブルパティとフェイクチーズにフライドジャックフルーツ。カリカリで、塩っ辛くて、うまみがあって、最後の一口まで最高。

ヴィーガンジャンクフードは、その美味しさゆえに、世界を救うのに役立つでしょう。私はヴィーガンでもベジタリアンでもないですが、肉を使ったジャンクフードの代わりにヴィーガンジャンクフードを毎回注文します。ヴィーガンのジャンクフードは、環境破壊への罪悪感なしで食べられるので、普通のジャンクフードよりも美味しいんです。これ、何の肉?みたいな謎の要素も、一切なし!

ヴィーガンジャンクフードは、身体に良いようで良くない食べ物です。

ヴィーガンジャンクフードにだって、動脈を詰まらせるジャンクがたくさん入っているのに、体に悪くないっぽい。ヴィーガンジャンクフードは食べる快楽も味わえて、同時に美徳も感じられる。近所のバーガー・ショップのダブルビヨンドミートフェイクチーズバーガーを想像しただけでも、ドヤ顔になります。客観的に見ればジャンクフードですが、身体にいいことをしてあげた、まぁ少なくとも、もっと悪いものを食べずに済んだと自分に言い聞かせることができるのです。

博士課程の「は、ヴィーガンのジャンクフードのようなものです。やっている間は気分が良く、今日も頑張った、良い選択をしたと自分に言い聞かせることができますが……本当に良かったのでしょうか?

私は、その「を、論文の発想や執筆には直接貢献しないけれども間接的に論文執筆を支える作業と定義しています。博士課程で経験する「には、好ましいものや必要なものもたくさんあり、好ましくないものを見極めるのは難しいですが、以下は、基本的な考え方です。

ヴィーガンジャンクフード的な実りの少ない忙しさを産む作業

1. 新しい論文を検索すること

たしかに情報を更新することは大事ですが、常に新しい情報を探していると、永遠に文献を読み続けることになり、創造性がまひしてしまいます。私たちは少なからず、「スクープされる(同じテーマで論文投稿を出し抜かれる)」ことを心配しているものです。毎日新しい文献をチェックしても、先を越される心配は癒えませんし、むしろ不安が煽られることになります。文献レビューを終えたら、週に1時間だけ、保存した検索条件で検索し、connectedpapers.comを使って主要な論文の引用元を追跡する時間を確保することをお勧めします。それ以上の時間をかけるのは、おそらく不安のはけ口を求めて作業しているだけになりますので、思い切ってやめましょう。

2. 引用の整理

引用整理は、他のやるべき作業を避ける都合の良い言い訳です。これは、ヴィーガンジャンクフードの例えにピッタリです。Zoteroのような引用管理ソフトを使用すれば引用の書式設定や再設定は簡単にできるため、手作業での書式整理はおそらく時間の無駄です。ソフトを使わずに、ピリオド、括弧、カンマを正しい場所に入れることに夢中になって、論文執筆の手を止めてしまう人々を私は見てきました。これは典型的な一度にまとめてやっつけられる作業で、最後まで残しておいて問題ありません。論文内の参照すべき箇所の近くにDOI番号をコピペしておけば、残りの書式設定は後回しにします。いじり回すのはやめましょう。

3. データ解析の試行錯誤

統計ソフトや言語解析ソフトの中には、データをセグメント化したり、テストの種類や表示を変更したりと、際限なくデータをいじり回せるものがあります。個人的には、Max QDAの自動レポート作成ツールが特に魅力的で、本質的には同じ分析を異なる形式で何時間もかけて試してしまいます。こういう作業も、ある一定のレベルを超えると、やるべき作業を避ける言い訳になります。リサーチクエスチョンに立ち返り、いたずらにたくさん分析を行うのではなく、正しい種類の分析を行っていることを確認してください。多ければ良いというものではありません。

4. 校正作業

校正には適切なタイミングがあります。編集・校正の作業は執筆の終盤で、もしかしたら他の人に依頼すべきかもしれません。自分で書いた文章の欠点に気づくのは難しいものです。悲しいかな、すべての人が校正者を雇えるわけではありませんが、もし論文の最終校正を依頼できるのであれば、絶対にそうしてください。校正作業の中でも最悪なのは、指導教員の前で発表するためだけの「途中経過」の校正です。校正をしながら執筆を進めると、書き足すのに使える時間を無駄にしてしまいます。バックスペースキーはなるべく使わず、できるだけ長く、駆け足で書きましょう。時々立ち止まって、少しラフな修正はしても、それ以上はしないでください。推敲は、私の友人キャサリン・ファース(Katherine Firth)が言うところの「the Perfect Sentence Vortex (完璧な文にしなければならないスパイラル)」につながります。これは「面倒な作業」の中でも良くないものです。残念ながら、すべての論文指導教員が雑な校正に納得するわけではないので、執筆途中でも必要以上の校正を何度も強いられるかもしれません。そういう場合、校正作業はギリギリまで残すようにしましょう。校正に割く時間をスケジュールに組み込み、Grammarlyのようなツールを活用し、作業をスピードアップさせましょう

面倒だけど役に立つ作業(健康的な食事)

  • 経過報告

 

倫理承認の手続き

倫理承認の手続きの書類の作成は驚くほど有用です。なぜなら、データの収集、保存、使用、報告に関する詳細な計画を定めさせるからです。倫理承認を得ようとすればおのずと、被験者の募集方法、適切なメーリングリストや個人情報にアクセスするための許可があるかなど、簡単なことについて考えを迫られます。倫理委員会がいかに厄介でうるさいかという話はよく聞くと思いますが、私は、委員会のもったいぶったやり方を受け入れ、実行可能で共有可能な計画を立てるために賢く利用することを提案します。倫理に関する文章が無駄になることはありませんし、その一部はそのまま「方法」のセクションに使いまわせます。

 

自分の専門外の読書

博士課程での読書は膨大で疲れるものですが、肉なしハンバーガーしか食べない食生活が体に悪いのと同じように、限られた分野のものしか読まないというのも健全ではありません。スティーブン・ジョンソンの言う「adjacent possible(隣接可能性)」、つまり、自分の研究分野に隣接しているものの、完全には一致しないものを探しましょう。境界を越えてアイデアを運用することで、より創造的になれます。創造性は時として不足しがちなので、枯渇しないように、たまには違うものを読んでみてください。

他にも色々な形の良い面倒な作業とそうでもない作業があるかと思います。こちらのコメントはオフになっていますが、@thesiswhispererとしてTwitterをしていますので、そちらからご意見お聞かせください。友人のジェイソン・ダウンズ(Jason Downs)とロボットの話しでもしているはずです。彼と対談しているポッドキャスト、On The Regの最新エピソードもぜひご視聴ください。私の「肘当て」研究者と「起業家」研究者の理論や、自分のスキルや興味に対する市場が限られている場合に学者としてのキャリアをどう進めるかについて議論しています。詳しくはこちらから。

研究者の味方のインガーより

原文を読む:https://thesiswhisperer.com/2022/08/03/phd-busy-work-is-like-vegan-junk-food/

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