査読は、論文執筆の練習になりますか?

なります! 論文執筆のスキルを上達させたいと思うならば、出版された一流の論文を読んで、上手な表現と頻繁に接することが必要不可欠です。しかし、内容を把握しながら英語の勉強をするのは難しいことですし、注意しているつもりでも、案外と感心しながら読むだけで終わってしまうものです。
そこで、とくに英語の論文を1つでも出版したことのある方には、論文を書く練習として、ほかの人の論文を査読してあげることをお勧めします。一読者として論文を読むと、どうしても「自分の研究に役立つ情報があるか?」とか、「自分の興味を惹くか?」といった個人的な基準で論文の善し悪しを判断しがちです。しかし、査読者として論文を読むとなると、「その論文には十分な信頼性があるか?」とか、「いかに多くの読者に主張をアピールできているか?」といった、学術界という大きな視点から論文の善し悪しを判断する必要が生じてきます。この研究者から査読者への視点の移行は、自分の論文を書くうえでも、とても重要な糧となります。
初めて査読をするという人は、以下の手順を参考にしてください。
1. まずは一通り読んでみて全体の感触を得る
最初から細かくコメントを書いていくと、全体像を見失います。まずは全体の構造がわかりやすくまとまっているか、提示された研究目的がすべて論じられているかなどを確認しながら、一通り読み通してください。
2. ジャーナルの規程に沿っているか確認する
もし、その論文が特定のジャーナルへの投稿を目指していたら、ジャーナルの規程に沿っているかを見てあげましょう。字数制限、題や見出しの書き方、参照文献の書き方、図や表などアートワークに対する制限……。細かいことですが、自分の論文を書くときにも役立つスキルです。
3. 古い参照文献がないか調べる
5年以上前に出版された論文や英語以外の言語で出版された論文に下線を引いていきます。後で論文を最初から細かく読んでいくときに、どうしてもこれらの文献が参照されなければならないか、ほかにもっと適した文献があるのではないかを考えながら読みましょう。
4. 一字一句細かく読む
次に、論文の題から参照文献一覧まで、ゆっくり一字一句細かく読んでみましょう。表やグラフの数字も本文で論じられているところだけでなく、全体におかしなところがないかを確認してください。誤字脱字がないか、参照文献が抜けていないか、わかりにくい文はないか、論理が通っているか、論旨に食い違いは見られないか、「あとで議論するが……」といっておきながら忘れられている項目はないか、脚注の番号がズレていないか、など細かな点も見逃さないように気をつけてください。
同時に、最初に読んだときの第一印象をもとに、研究方法に何か欠陥はないか、論文を理解するために必要な基礎知識が説明されているか、全体の流れがわかりやすいものか、など大きな点も確認しましょう。
5. 相手の努力を尊重した書き方で批判する
最後にコメントを書き込んでいきます。このとき、「研究者同士で意見を交換する」という謙虚な姿勢で、相手の気持ちを尊重した書き方をこころがけてください。
このように、ほかの人の論文を査読することに慣れてくれば、自然と自分の論文も客観的に査読できるようになるはずです。投稿前に“査読者の目”を使って、自分の論文を読み直せば、ジャーナルに掲載されるチャンスもあがるでしょう。

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