オープンアクセス化の効用

学術論文の「オープンアクセス化」という潮流があります。
2000年秋、商業出版社が出版するジャーナルの購読費が高騰していることに対し、「Public Library of Science(PLoS)」という科学者グループが公開書簡を公表しました。彼らは出版社に対し、論文が公表されてから6カ月以内にそれを公共のアーカイブに提供することを要求し、それを受け入れられないのなら、購読や投稿をボイコットする、と主張しました。この書簡がどれほどの影響をもたらしかのかということについてはいろいろな評価があるのですが、その後の学術論文のオープンアクセス化を促進したことは間違いないでしょう。「PLoS」は財団からの助成を得て、2003年にオープンアクセスの学術雑誌『PLoS Biology』を、2004年には、『PLoS Medicine』を創刊しました。PLoSや同時期にスタートしたオープンアクセス専門の出版社BioMed Centralの活動が注目され、オープンアクセス・ジャーナルが次々発行され、既存の商業出版社までがオープンアクセスに参入するようになり、現在にいたります。
今回は、あらゆる分野の人々にとって以下のような利点があるということを、あらためて簡潔にまとめてみたいと思います。
アクセス(利用しやすさ)
オープンアクセス化を進めているジャーナルや論文集の大半は、読者に利用料金を求めていません。つまり、論文を読むための料金という障壁が大幅に軽減されているか、あるいはまったく廃止されています。このことにより、論文の著者たちも今までより広範な読者に自分の論文を読んでもらうことができます。読者の経済状態や、どこにいるのかが問題にならないので、論文その他の文献の対象読者が格段に拡大します。
直接性
その研究分野のコミュニティだけでなく、研究者か一般読者かを問わず、広範囲の読者が研究成果を直接に読むことが可能になります。
各種の効果を推進
研究成果が広がりやすいので、同分野の研究が盛り上がるだけでなく、そこから新たな研究分野が発展すれば、それに取り組んでみようという刺激を受ける研究者も出てくるでしょう。 どの分野の研究者たちも研究文献を利用できるのですから、学際的研究や複数分野の協力する研究が発展しやすい環境が生まれます。
影響力と引用
論文の短期的な影響力は、「購読者のみ」の場合よりもオープンアクセスにしたほうが、はるかに大きくなる場合が多いものです。長期的にも似たような傾向があり、オープンアクセスで公開している論文のほうが、そうでない論文よりも影響力が若干強いことを示す研究もいくつかあります。
検索のしやすさ
オープンアクセスのドメインにある論文のほうが、多くの場合、見つけられやすくなります。また、その論文の中で関心のある事項をキーワードで検索する、その論文を他人に推薦したり共有したりする、といったことも非常に容易になります。
利用できるコンテンツの拡大
オープンアクセスというモデルでは、読者が閲覧・利用できるものは論文そのものだけに限定されません。従来の出版物とは違って、デジタルコンテンツであれば、文章はもとより画像、未加工のデータ、加工したデータ、オーディオビジュアル、ソフトウェアなどもデジタルアーカイブに保管できます。
著者や団体が読者にとって身近に
従来の購読者のみを対象とするジャーナルよりも、オープンアクセス・ジャーナルのほうが、著者のことをより多くの読者が知るようになります。関連団体も、オープンアクセスの研究発表に参加したり、そのホストを務めたりするほうが、知名度を向上させることができます。さらに研究の資金を提供している団体も、社会からよい評価を得ることができます。
発表の費用
ほとんどの場合、従来の出版よりもオープンアクセスのほうが作成も流布も経費が少なくて済みます。これは、ジャーナルにとっても発行者にとっても利点です。ただし論文の著者にとっては、掲載費用が高くなるケースもあります。また、従来からの出版社の多数が、自社の発行してきた論文などの一部をオープンアクセスでも公表しており、それにより知名度を向上させ、購読者数も増やしています。

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