翻訳しやすい文章の書き方とは?

知り合いの研究者から「あの翻訳業者はいいよ! 早いし正確だし!」と聞いて自分の論文の英訳を依頼したら、あまりにひどかった・・・などという経験はありませんか? もちろん翻訳業者に問題があるケースも皆無とはいえないでしょう。医学論文翻訳を依頼したのに、翻訳者の専門が化学だった・・・などというケースは少なくありません。しかし、翻訳しにくい日本語の文章があることも事実なのです。では、迅速かつ満足のいく結果を得るためには、どんな文章が適しているのでしょうか? 今回は、「翻訳しやすい日本語の文章」の書き方を5つのポイントに絞ってご紹介します。
1. 主語・述語・目的語・対象物の所有格の明記
主語・述語・目的語・対象物の所有格は、英語の文章にはどれも必要不可欠なもの。ひとつでも欠けていると誤訳の原因になり得ます。日本語の文章を書くときはついつい省きがきですが、主語や述語、目的語、対象物の所有格が明確かつ正確な場所に書かれているか、いつも気にかけておきましょう。
2. 賛否の明記
英文では、各段落や論議の初めに、その事項に対して自分が肯定的な意見を持っているのか否定的な意見を持っているのかをまず明記し、それから議論を展開するのが一般的です。日本語の論旨の展開とは異なるので多くの方が戸惑う点ですが、YESともNOとも取れる婉曲表現を使って書き始め、最終的に自分の論点を導くような書き方は避けましょう。「起承転結」ではなく、「結承結」と覚えてください。


3. 短い文
1文(1センテンス)がやたらと長くなると、翻訳者は修飾語がどの言葉にかかるのかがわかりにくくなります。英文は通常1文2行程度で、3行以上は長すぎると覚えておき、日本語で書くさいにも「ぶつ切りだな」と思う程度に短くまとめましょう。
4. 簡素な文
日本語に比べると、英語などの欧州言語には、敬語的な表現があまりありません。そのため、婉曲表現の多くは翻訳作業の段階で削除されることになります。先行研究の批判など言葉遣いに気を遣うべきことを書いているときこそ、回りくどい表現を避けるよう気をつけましょう。
5. 単数か複数かの明記
ご存知の通り、英語では文法上、ほとんどの場合、名詞にa/anやtheなどの冠詞をつけなければいけません。そこで日本語で書く時点で、名詞が意味するものが、1つであるのか2つ以上であるのかを特定しておくと、翻訳が迅速に進み誤訳も減ります。述べている内容が、一般論なのか特定のケースなのかを含め、前後関係に頼らなくても単数であるのか複数であるのかを判断できるような書き方を工夫してください。
以上、翻訳業者に依頼する前に上記の点に注意して日本語原稿を仕上げると、誤訳が減り満足度の高い英訳原稿へと近づきます。また、翻訳者の実力や翻訳しやすい文章と同じくらい大切なのが、参考資料や周辺資料。原稿だけではなく、定訳がある専門用語のリストや近いテーマの論文や記事をまとめて渡すという一手間を加えることで、より高いクオリティの英訳原稿を手に入れることができるでしょう。

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