稼げる研究者とは。コロナの時代に学術の仕事で生計を立てる(2)

オーストラリア国立大学のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授がお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回はコロナショックで研究者求人の減少を目のあたりにしているミューバーン准教授が意を決して、自身の収入源を赤裸々に明かしながら学術の仕事で生計を立てるための考え方を語ります。こちらは3部作コラムの2本目。生計を立てるために検討すべきことや仕込むべきことを解説します。

>> 前回(3部作コラム・1本目)はこちら


1)仕事における「ミッション」を明確に打ち立てる

 研究が世界を変えると心から信じている。博士課程の学生は頭が良く想像力に富んでおり、世界の問題の多くを解決するには彼らが必要となる。しかし学生が何をなすべきかを見失ってしまうことは珍しくない。私の役割は可能な限りの方法で彼らをサポートすることである。

 上記が私のミッションです。私の行う全ての仕事は、有償、無償にかかわらず、これが根本にあります。このミッションを明確にすることは、役に立ちます。単にモチベーションが上がるだけではありません。ミッションは、自分の仕事の重点が定まり、それにより、私の存在は次第に他の人々に認知され、理解してもらえるようになりました。この認知されるということがチャンスをもたらしてくれるのです

 私は、博士課程の学生サポートに関する多くのことを行っています。大半は無償で、一部は対価を得ています。このミッションに軸を据えることで、オンラインでの知名度を上げて、仕事の中心が定まり、私が研究教育の専門家として認知されることにつながりました。ミッションにフォーカスすれば、自分の専門分野に関連した問題に他の人々が直面した際に、お呼びが掛かる存在になるのです。問題解決の対価が支払われれるケースも出てくるでしょう。

これはあくまでもセオリーですが、ツールやテクニック、あるいは(あえて言いますが)知識ではなく、専攻分野における問題解決にフォーカスしたアプローチこそお金を稼ぐ手段としては有効であると私は考えています。ですから、「自分の知識で何ができるのか」、「どの様な問題を誰のために解決してあげられるのか」、「問題を解決への対価を払う人はいるのか」などを考えてみてください。

サービスを受けた人が必ずしもそのサービスへの対価を支払う人ではないということも重要です。これが次の2番目のポイントにつながります。

2)役立つコンテンツを作りインターネット上で無償提供する

 長期間に渡る完全な無償提供には、継続性がないということを認識がありますが、インターネットで無償コンテンツを掲載することでその分野での問題解決の専門家であると立ち位置を確立できる可能性があります。この「研究室の荒波にもまれて(原題:The Thesis Whisperer」というブログは、自分の問題解決の専門分野を‘明らかにしていく’には最高の方法でした。10年間続けてきた、全く‘無償’のブログが多くのチャンスをもたらしてくれました。それが現在の私の仕事を形作ったのです。

共有しやすく、役に立つコンテンツを作成し、自らの専門分野での問題解決の‘助っ人’として認知されるようになる方法は多岐にわたります。私の場合、絵を描いたりしながら、説明するのが好きなのでYouTubeの動画を数多く制作しています。一人でやる必用はありません。最近では友人のJason Downsと一緒に ‘on the reg’というポッドキャストも始めました。そこでは学術関連の仕事や、利用している各種のツール、そして読んでいるものなどに関して話しています。形式は現在も模索中ですが、複数の人間が制作に参加することで内容は、驚くほどエネルギッシュになります。

倫理的な理由から、私は自分のインターネット・コンテンツは無償とするのが好ましいと考えています。不安定な仕事や、育児などの難しい課題を抱えながら博士課程の研究を続けることがどれだけ大変でであるかが分かっていますので、コンテンツへの対価の支払いで、問題を上乗せしたくないのです。

「研究室の荒波にもまれて」は無償で提供していますが、その費用を賄う必用があります。コロナ以前では、’be @Thesis Whisperer’を使用するのに年間$15,000オーストラリアドルを超える費用が掛かりました。コンテンツ作成と通信の管理には、多くのオンラインツールや機器を使用しています。サブスクの費用の支払いや、書籍やPCの購入費も必要になります。また、サイトのためのデザインやコーディングの専門家の手も借りなければなりません。会議への参加に関して以前はANUから手厚いサポートを受けていましたが、仕事上必要と思われる出張の全てをそれでカバーすることは出来ませんでした(今年は出張が全くありませんでしたので、2020年の帳簿は全く異なるはずです。)。

ブログの維持に関してANUから費用面のサポートは一切ありません。ANUがケチな訳では全くありません。むしろ、私の仕事をいつも手厚く支えてくれており、評価してくれています。(ブログの私のプロフィールはANUにとっても資産になっていると私は考えています。)しかし、ANUに費用を負担してもらいたいとは思いません。

理由は単純で、費用負担がなければ、ANUはブログの運営に口出しは出来ないからです。私は、ごく早い段階で創造の独立性が重要であることを学びました。このブログを始めたドメインの機関では、マーケティング部門が機関に関する否定的な内容が出ないよう、コメントを検閲しようとしており、弁護士を立て対処しなければなりませんでした。(その年の「研究室の荒波にもまれて」の掲載’は非常に高くつきました!)こうした経緯で、ANUと適切な距離を持つことで、同様のトラブルが繰り返されることを避けるようにしたのです。そして、この独立した対等な関係を、契約に明文化するようにしました。

クリエイティブな側面と資金面に関して独立性を保つことは大きな意味があり、研究職や非常勤の教職のかたわら副業を行う人にはこうしたスタンスを強く推奨します。

しかし自由には、費用が掛かります。私自身、収入を得る方法を長年にわたり追求してきました。そして、アフィリエイト、ワークショップの運営、書籍の販売、そして最近ではPatreon(パトレオン)等でこうした費用を捻出しています。後ほど詳しく触れますが、複数のソースと国から収入を得ています。全くどうでもいいことですが、就労ビザや税金、国際送金の際に必要なSWIFTコードやIBANコードの知識まで持つに至りました。

お金を稼ぐためには、お金が要ります。そして、そのためのシステムが必要です。複数の異なる収入源がある場合には、監査に備えて、それらを確認・記録する方法も必要となります。私の場合、税金の処理のために有能な会計士を雇い、対応するソフトウェアを使用しています。こうした課題への解決策を見つけるのは楽しいことです。書籍の管理にはXeroを使用していますが、月$25ドル掛かります。ワークショップでの書籍の販売には’Square’クレジットカード機を使います。

「研究室の荒波にもまれて」用に個別の口座とクレジットカードを使用しているのはこの為です。われながら、しっかりとやっていると思います。

残念ながら細かい金額はお教え出来ません!

正直、「研究室の荒波にもまれて」用のクレジットカードを使うのは楽しいです。出張の際に食事をごちそうすることもできます。ブロガーにとっては全ての人が潜在的な顧客となるからです。また、博物館やギャラリーを訪問しますが、ライターであれば全てのことが「調査」になるのです。

経費として税申告の際に計上できる雑費は際限なくありますが、ここではそれをあげつらうのはやめておきましょう。世間的に認知される場合には様々な経費が発生するため、優秀な会計士が必要になることとだけ言っておきましょう。これが、次のポイント、それを賄うお金の稼ぎ方につながります。

>> 前のコラム(3部作コラム・1本目)はこちら

>> 続き(3部作コラム・3本目)はこちら

原文を読む:https://thesiswhisperer.com/2020/08/05/13052/

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