いつ、どうやって始める?企業のローカライズ戦略

ローカライズ多くの企業が自社の発展とビジネスの成功を目指して、しのぎを削ってきました。世界中でグローバル化が急速に進んだ結果、ビジネスを成功させるためには海外に出て行くことが必要となり、製造業からサービス業まであらゆる企業が「どうやって、言葉や文化の違う国でビジネスを展開するか?」という問題に直面することとなりました。その際、必要なのがローカライズ(localize)/ローカリゼーション(localization)。サービスの国際化・地域化・多言語化です。では、このローカライズで成功した企業は、どの段階で決断し、何が成功につながったのでしょうか。

■ ローカライズの需要は増えるか

日本では人口減少が深刻化しており、今後もこの流れはさらに加速することが予想されます。それに伴い消費者数の減少が見込まれる中、どのように自社の事業を展開させ、売上を維持または伸ばすことが可能なのか……。活路を見出すべくビジネスターゲットを海外へ求めるのは、ごく自然なことだと言えるでしょう。

経済活動のグローバル化が進む中、ローカライズの必要性は増しています。しかし、ローカライズに対する考え方には温度差があり、重視していない企業もあります。母国語の範囲である国内市場で顧客基盤を固めることこそ重要で国外は二の次と考える企業、国外市場を狙いつつも英語版ウェブサイトを用意しておけばよいと短絡的に考えている企業……理由はさまざまでしょう。社内で行うにしても外注するとしても、ローカライズには費用がかかります。企業にとって、資本をどう配分するかは致命的に重要ですが、困難な判断を伴います。資金の投入に慎重な計画を要する中、コストがかかる反面、実益が見えにくいローカライズを優先度の高いものと考えている企業は、まだ少ないのです。未知の国の市場に膨大な労力を注ぐより、母国での顧客基盤の構築に注力することが適策だと思うのは一理あります。

投資するからには成功したい。グローバル化を目指す企業がローカライズで効果を得るには、着手するタイミングと顧客を見据えた対応が鍵となります。

■ 最適なタイミング――先手必勝

73%の人は母国語で書かれている物を好んで購入し、インターネットユーザーの10人中9人は、 ウェブサイトを母国語で閲覧します。商品もしくはサービスを、ターゲットとする顧客/ユーザーの言語で表示することは、売り上げにも直結する論理的な成長戦略です。英語圏以外でビジネスを拡大しようと思えば、英語版ウェブサイトだけでは不十分です。ローカライズを行わないことは、国際市場での成功を逃しているとも言えるのです。

とはいえ、多言語化に初期投資するのをためらうのも理解できます。では、ローカライズに初期投資する最適なタイミングは、いつなのでしょうか。決断は困難ですが、ローカライズを行うのはビジネスの初期段階であればあるほどよいとされています。大切なのは始めること、正しく歩を進めることです。不必要に思えても、製品のスタイルガイドやマニュアル、用語集を事業展開に着手した時点から整えておけば後々、時間とお金の節約となり、後に続く展開がぐっと楽になります。

スタイルガイドや用語集は、国外支社や代理店、翻訳会社が多言語化の作業を行う際に威力を発揮します。共通の指針があることで遅延や行き詰まりを避けられるほか、翻訳者も整えられた用語集があれば、作業しやすくなります。グローバル展開とは、決して当初から全コンテンツを50言語以上で配信することではありません。ローカライズは、小さな一歩から始められるのです。

■ 先手のローカライズで成功したCanva社

ローカライズには早いうちに着手したほうがよいと言えども、多くの企業は、これから開拓する市場で堅実な収益を見込めるのか様子を伺い、ローカライズに二の足を踏んでいるのが実情です。ではここで、事業の立ち上げ時期にローカライズに取り組み成功した、オーストラリアのCanva社の例を紹介しましょう。

画像の加工やデザインを、初心者でもIllusutratorやPhotoshop並みの高機能で行えるツールを提供しているオーストラリアのCanva社は、2012年にシドニーで創設され、2013年からサービスの提供を開始しました。今では世界3か所にオフィスを構え、12か国で事業を展開しています。このCanva社が、スペイン語版のローカライズを決断した時のことです。Canvaが製品リリースの早い段階でスペイン語版のリリースを決断すると、35万人のユーザーが、すぐに英語版から乗り換えました。「読めなければ買わない」と決め込んでいたスペイン語ユーザーが、一気に動いたのです。Canvaの強みは、豊富な無料・有料のデザインテンプレートを提供し、初心者からプロにまで多種多様なデザイン作業の支援などを行うことです。この強みを最大限に活かすためには、読みやすい情報の提供とともに、幅広い顧客層からのフィードバック獲得が重要です。スペイン語版のリリースにより収益を上げただけでなく、「読めなければ買わなかった」顧客を手に入れ、さらなる事業の発展につなげたのです。

米国のリサーチ会社であるCommon Sense Advisoryによれば、第2言語を使うことにまったく問題のない消費者でも、母国語での情報提供を好むということがわかっています。Canvaのスペイン語版の大成功は、まさにこの状況で、英語を使うことに問題のない話者でも、母国語であるスペイン語版を好んだ結果でした。Canvaの共同創業者でCEOのパーキンス氏は、この仕様設定には2か月を要したと語りましたが、さらなる言語の追加は、より迅速に行えるとしています。 Canvaは多言語化の対象言語として、ラテンアメリカ・スペイン語、ブラジル・ポルトガル語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポーランド語を挙げました。2017年5月には日本語版もリリースされ、フォントストックやレイアウトなども豊富に用意されています。現在では1000万以上の人が、クラウド上で使える画像編集ツールである「Canva」を利用するほどに拡大しています。

■ ローカライズの真髄とは

Canvaの成功例からもわかるように、多くの消費者は母国語での買い物を好みます。ターゲット国の市場で顧客を獲得し、収益を上げるためには、もはやローカライズは必須と言っても過言ではないでしょう。顧客の求める言語、つまり母国語を使うことで、消費者が本来持つ購買意欲にアプローチし、「買いたく/使いたく」なってもらうのです。

母国語による情報提供の重要性は、商品販売に留まりません。マーケティングにも同じことが言えます。グローバルなブランドを志向するのであれば、まずはターゲット市場の顧客に受け入れてもらうために、その市場の文化的背景を理解し、顧客に受け入れられる最適な表現で情報を提供し、顧客との円滑なコミュニケーションを図る必要があります。

以上のことからわかる通り、ローカライズとは、ターゲット国の母国語にただ翻訳するだけではありません。翻訳の質が悪く、文化的背景を無視したような表現を使えば、提供した情報が、かえってマイナスになってしまします。ウェブサイトをせっかく作ったのに更新しないというのも同様です。ターゲット国の宗教や文化、商習慣などを学び、それに則って、常に改善を施していく。顧客が求める情報を顧客の言語でタイムリーに提供することが、ローカライズの真髄と呼べるのかもしれません。

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