企業と翻訳者が知っておくべき多言語サイト成功の秘訣-2

多言語サイト
前回、検索エンジンがアルゴリズムで動いていること、情報を検索結果で優位に表示させるためにはSEO対策が必要であることを書きました。ここからは、ユーザーが探したい情報にすぐにたどり着けるようにするためのSEO対策として、翻訳者と翻訳会社が留意しておくことについて提案します。

■ SEOで「拾ってもらう」ために-翻訳者がすべきこと

翻訳者としては、言語的な正確さを重んじて、可能な限り忠実な翻訳を提供することが務めですが、訳文に使った語句や単語が、ウェブサイト上でほとんど検索されていない言葉だったら、検索エンジンには拾ってもらえません。情報が検索結果に表示されないとなれば、ビジネスにとっては死活問題。翻訳者は、文体上(あるいは正確な翻訳として)は最善の選択ではないかもしれない語句を使用することにも対応しなければなりません。ローカライゼーション翻訳においては、より高いコンバージョン(CV)率や多くのリピーターを獲得することが重要なのです。

ウェブサイト翻訳に役立つGoogleのツールを、以下に紹介します(ご利用にはGoogleアカウントが必要です)。

Google Adwordsキーワードプランナー……盛り込みたいキーワードの検索ボリュームを国ごとや期間ごとに調べられるツール。新たなキーワード候補の検索も可能。使用するにはGoogle Adwordsアカウントへの登録が必要(無料)。
Google サーチコンソール……ユーザーがサイトへアクセスする過程を調べられるツール。実際に何と検索されているかや、検索結果画面への自社サイトの表示頻度などを見ることができる。翻訳内容の修正・改善に便利。
・Googleサジェスト機能……Googleの検索画面にキーワードを入力すると、検索しようとしているキーワードと関連する単語や、よく検索されるキーワードを見ることができる。翻訳時に盛り込むべきキーワードの選定に有効。

検索エンジンのキーワードについての知識と理解が、新たなターゲット市場向けのウェブサイト翻訳(ローカライゼーション)には欠かせません。

■ 翻訳ではなく「ローカライズ」する

翻訳されたウェブサイトのコンテンツやテキスト情報がクローラーによって収集されることは述べました。ただし海外市場に出た場合は、ターゲット国/地域によって、普及している検索エンジンが異なる場合があり、そうなると当然クローラーの評価基準も異なっているため、それぞれの国/地域の特性を踏まえたSEO対策が必要です。翻訳者は、この前提に基づきつつSEOに効果的なアウトプットを作成するため、単なる言葉の「翻訳」ではなく「ローカライズ」を意識しておくことが大切です。

文章を書いたり翻訳したりする際に留意しておかなければならないのは、読み手の存在です。ウェブサイト上の文章であれば、最初のターゲットとなるのは検索するユーザーであり、ユーザーをサイトまで引き込むには、SEOに適した言葉を選んでおく戦略が必要です。例えば、オランダでマグカップを販売するビジネスを想定します。英語のマグカップ(mug)に当たるオランダ語はmokですが、地元のグーグル検索ではmokの類義語であるbekerが多用されています。マグカップを販売するサイトに潜在的消費者を誘引するためには、より多くの取り込みに結びつく可能性の高いbekerをキーワードとしたほうが有利だと言えます。ここまでは、ツールによる分析で見つけ出せるでしょう。しかし、さらに読み手を考慮した言葉の選択が必要なこともあります。同じ言語の同じ単語でも、地域や習慣によって使われる表現が多岐にわたるような場合です。例えば、スペイン語の単語が、世界に広がるスペイン語圏の国や地域で同じニュアンスで受け取られるか、同じものを示すのに同じ表現を使うかはわかりません。また、擬音語や擬態語のように、話し手・聞き手によってまったく異なるイメージにつながってしまうものや、宗教や習慣に基づくタブーな言葉も存在します。機械では判断が難しいローカライゼーションこそ、ターゲット言語に精通した翻訳者の力が発揮できるところではないでしょうか。

■ 機械に「負けない」ために

インターネット環境が整備され、「ググる」という言葉が一般的に使われている昨今、ほとんどのユーザーは、検索サイトで調べれば「大体のことはわかる」という認識を持っています。期待値は初めから高く、その上、大多数の人は検索を母国語で行いますから、海外市場にビジネスを展開する企業にとって、自社サイトの多言語化、さらに最新情報への定期的な更新は不可欠です。またSEO対策を講じて、ターゲット市場におけるサイトへの継続的な流入を維持しなければなりません。検索エンジンにおけるSEO対策は今後、AI(人工知能)のさらなる発達によってますます洗練され、これまでできなかったこともできるようになることでしょう。機械翻訳の精度も上がり、人の手を介さない多言語化が増えることも予想されます。

とはいえ、それで十分かというと、決してそうとは言い切れません。ターゲット市場の「ググる」ことへの期待に応え、同時に企業にビジネスの成功をもたらすためには、これからも翻訳者の力が必要です。機械に「負け」ずに翻訳者ができること――。

  • ターゲット国/地域で使われている言語において適切な語句に翻訳する
  • 現地で多用されている語句にローカライズしなおす
  • 翻訳対象言語に方言のようなバリエーションがある場合には標準語にする
  • 顧客(企業)がSEO対策としてキーワード検索ツールなどを利用している場合には、情報をもらって活用する(または自分で調べられるスキルをつける)
  • ターゲット国/地域の読み手に受け入れられやすい言葉や表現を使用する
  • 検索するユーザー目線に立って語句を考える・選択する

こうした細やかな配慮こそ、読み手を安心させ、発信者への信頼へと結び付きます。翻訳者にできること、翻訳者にしかできないことは、多々あるのです。


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