ジャーナルの現状と今後の流れ

アメリカではこの数年で、有名な新聞が次々と休刊に追い込まれています。また、欧米でも日本でも、老舗の雑誌が次々と休刊・廃刊しています。一方で、インターネットでのみ読むことのできる「ウェブ媒体」が急激に増えています。
この「紙離れ」は、ジャーナル(学術雑誌)の世界にも大きく影響を及ぼしています。足早に進むオンライン化の先には、どのような世界が待っているのでしょうか? 研究者は、どうすればこの変化に乗り遅れず、有効的に活かすことができるのでしょうか?
つい数年前までは、「やっぱり印刷したものを出版していないと一流のジャーナルとはいえない」という声が大多数でした。しかし、一流のジャーナルになればなるほど、その読者は全世界に広がり、郵送代だけでもかなりの負担になります。このため、多くのジャーナルが「依頼があった場合に限り、印刷したものを送ります」という方針を取り始めました。
日本でもジャーナルの電子化は進んでいます。たとえばJST(日本科学技術振興機構)は、1999年から、インターネットを通じて学術論文を公開するウェブサイト「J-STAGE(科学技術情報発信・流通システム)」を運用しており、270誌以上の学術雑誌電子版を公開しています。2005年からは過去の雑誌のアーカイブも開始され、古いものでは明治期の学術論文を検索・閲覧することも可能になりました。
新進気鋭の研究者たちが投稿したがる新しいジャーナルは、インターネット上のみの“出版”になるケースが増えており、将来的にはすべてのジャーナルが紙離れをし、インターネットへ移行していくと思われます。お風呂につかってワインを片手に論文を読むのが週末の楽しみという人は、プリンタが不可欠となるでしょう。
では、ジャーナルのオンライン化のその先には、何が待っているのでしょうか? 現時点では、オンライン出版といっても、紙で出版されるものとまったく同じものがコンピュータ上で見られるというだけの話です。しかし近い将来、私たち研究者は「オンラインだからこそ」という論文の投稿を求められると考えられます。
たとえば、生物の成長に関する論文など、ある物質の変化過程や反応に関して論じる場合は、従来のような写真ではなく、動画を添付することも珍しくなくなっています。音声に関する論文の場合は、言葉を使って説明するだけでなく、音声ファイルをつけて発表することが可能になりました。論文を出版するためには、音声ファイルや画像ファイルを圧縮したり論文に添付したりするためのスキルが、当たり前のように必要とされています。
また、グラフなどの元データ(生データ)を「付属資料」のような形式で公開することも多くなりました。
参考・引用文献がリンクされているのはもはや普通ですし、ジャーナルのなかには、表示されている論文“が”引用している論文だけでなく、表示されている論文“を”引用している論文まで、リンクするよう設計されているものもあります。
ジャーナルの電子化はすでに現実です。電子化するかしないか、ということはもはや問題ではなく、どう電子化するかが目下の課題でしょう。

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