論文の原稿に適したファイル形式とは?

Adobe Acrobat, Microsoft, Excel, Microsoft Word, Microsoft Works, Notepad, Portable Document Format, Rich Text Format, Web Page (HTML), WordPerfect, Word Pat・・・。世の中にはさまざまなアプリケーション・ソフトに対応した、さまざまなファイル形式が出回っています。今回は主に、論文の原稿を入稿するさいに最もよく使われているMicrosoft WordとPortable Document Format(いわゆるPDF)を例に、それぞれの利点と欠点を考えてみたいと思います。
Microsoft Word (MS Wordとも呼ばれる。拡張子は「.doc」または「.docx」)

多くのジャーナルで推薦されている形式です。いろいろな機能を駆使すれば、かなり複雑なレイアウトの文書をつくることができます。また、文書作成・原稿執筆のソフトとして市場の大部分を占めていますので、仮にほかのファイル形式への変換が必要となっても、必ず変換方法がみつかるといっても過言ではないでしょう。また、 わからないことがあったときに、答えを知っている人が必ず身近で見つかるというのも魅力です。


ただし、簡単に変更や上書きができるので、ちょっとしたキー操作で全体のレイアウトが変わったり、誤って文字を消してしまったりしやすいという欠点があります。このため、ジャーナルでの掲載が決定した後、編集局から誤字脱字やフォーマット変更に関する最終確認を依頼されたら、質問された箇所のみでなく、全体に目を通すことが必要となります。とくに「最終版」といわれたときには、原稿をタイトルから参照文献一覧まで、もう一度ゆっくりと時間をかけて読むよう心がけてください。
なお「一太郎」などMS Word以外のワープロソフトを使っている方も少なくないと思われます。その場合、原稿を保存するとき、形式をWord形式に(拡張子を「.doc」または「.docx」に)変換しておけば、「一太郎」などを用意していない編集部でも、そのファイルを簡単に開くことができます。

Portable Document Format (いわゆるPDF。MS Wordなどさまざまなソフトで作成し、Adobe Readerで読む。Adobe Acrobatがあれば、編集・加工することもできる。拡張子は「.pdf」)

原本がどのようなファイル形式で書かれていても、PDF形式で保存すれば、どのコンピュータでも閲覧しても、全体のレイアウトが変わることがありません。そのため、複雑な図形を含んだ論文を投稿する場合、図やグラフに記載された数字や線の配置が少し変わるだけで意味をなさなくなってしまいますから、場合によってはMicrosoft Wordより適した形式だと思われます。また、一般的に解像度がMicrosoft Wordより高いため、印字された時の品質もよいものとなります。
ただし、PDF形式の文書ではちょっとしたミスでも、Adobe Readerしかなければ、原本のファイルで変更し、新たにPDF形式で保存し直さなければなりません(Adobe Acrobatがあれば修正・加工が可能です)。このため、ジャーナルによっては、PDF形式を受け付けない場合もありますので、投稿前に確認が必要です。
そのほか
WordやPDF以外のファイル形式が、まったく使われないかといえば、そんなことはありません。図や写真はJPEG(拡張子は「.jpeg」)、表組はExcel(「.exl」または「.exlx」)で入稿することも可能です。図や写真、表に関しては、Power Point(「.ppt」や「.pptx」)も使えないわけではありませんが、そこからテキストや画像を抜くのは面倒なので編集部にも印刷会社にも嫌がられます。避けたほうがいいでしょう。
ところでひと昔前、フロッピーディスクで原稿をやり取りしていたころには、文章に関しては「テキスト形式(テキスト・ファイル)」が一般的でした(拡張子は「.txt」)。ほとんどどんなソフトウェアでも開くことができるので、いまでも利用可能です。
そしてここだけの話ですが、WordのファイルにJPEGの写真やExcelの表組などを張り込むと、デザイナーやDTPオペレーターにとっては、かえって面倒になることもあります。デザイナーやDTPオペレーターにとって最も喜ばれる原稿は、文章(題名や要約、本文など)はテキスト形式でまとめられ、写真などは文章とは別にそれぞれの形式でまとめられているものです。Wordが推奨されるのは、主に編集者の都合です。
投稿した論文がアクセプト(受諾)されたら、編集部と相談してみてください。

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