目指せ!効率的なタイムマネジメント

1日24時間。誰もが限られた時間をいかに効率的に使うかに頭を悩ませていることでしょう。かのベストセラー『7つの習慣』(1996年、スティーブン・R・コヴィー、キングベアー出版)でも「緊急度」と「重要度」を指標としたタイムマネジメントの重要性が提唱されています。そして、タイムマネジメントが重要なのは研究者も同じ。雇用契約や研究助成金の支給期間に限りがある場合には一層、時間は貴重です。今回は、限られた時間をいかに有効に使うか、効率的なタイムマネジメントについて考えてみます。

■ タイムマネジメントは何故必要か

研究者は、実験、レポート作成、論文執筆、出版、助成金申請といった研究関連業務に加え、学生や後進への教育指導、さらに職員/教員としての事務作業といった異なるタスクをこなすことが求められます。諸業務をこなしながら、自分自身も研究者として成長し、成果を残さなければならない――このような状況で業務を遂行し、よい研究成果を出すためには、効率的なタイムマネジメントが不可欠です。タイムマネジメントがうまくできれば、生産性を向上させ、業務上の時間の無駄を最小限に留め、さらにはストレスの軽減にもつながり、結果としてより大きな研究の成功につながることが期待できます。

■ 効率的タイムマネジメントの5つのポイント

緊急度と重要度。効率よく研究の結果を出すには、作業の優先付けが重要です。そして、成果が得られる(であろう)作業に時間と労力をつぎ込むことも必要です。では、そのためのタイムマネジメントで注意すべきポイントはどこでしょう。

① 脳の働きに合わせたワークスケジュール
人によって最も生産性が高くなる時間は異なります。最近は「朝活」をする人も増えていますが、脳科学的に見ても朝は最も脳が効率よく働く「ゴールデンタイム」そうです。1日の時間帯によって脳の活性も違うので、脳科学を意識しつつ1日のワークスケジュールを考えるのもよいでしょう。集中できるサイクルに合わせた“to-do list”(すべきことのリスト)を作成しておくのも一案です。もうひとつ注意すべきは、集中力です。人間の集中力の持続時間には限りがありますので、適宜休憩を入れることで集中力を維持した方が効率はよいでしょう。

② 中長期プランニング
研究を行う上で中長期のプランニングも大切です。実験を行う場合、実験計画を事前にしっかり立てて準備しておくことは、失敗を防ぎ、作業ロスを減らし、安全を確保する意味でも重要です。また、実験の結果をいつまでにどんな形で成果としてまとめ、発表するかまでプランニングしておくべきでしょう。学会参加申込みや学術ジャーナルへの投稿には、決まったスケジュールがあるものです。大枠を把握した上で、作業全体をプランニング・管理するようにします。

③ スキマ時間を有効活用
作業の合間に違うことをすれば気分転換になるということもありますが、時間のムダ使いは避けたいところです。SNSなどの情報ツールは便利な反面、仕事が中断されがちです。一日のうちコミュニケーションに対処する時間をあらかじめ割り当ててしまうなどの工夫が必要でしょう。一度作業の流れが止められてしまうと、集中力を取り戻すのに30分程度が必要になるとも言われていますので、侮れません。実験の待ち時間や移動中などのスキマ時間をメールチェックなどに利用するのも一案です。ところで、朝一でメールをチェックしてから仕事を開始――まさにやりがちなことですが、先述の脳科学の話によれば、1日のうちで脳が一番冴えている「ゴールデンタイム」をメールチェックに使うのはもったいないそうです。この時間こそ、創造性を発揮する作業に適しているそうなので、自分の行動を見直してみてください。

④ 作業をデジタルツールで「見える化」する
タイムマネジメントというと、つい複数のタスクを詰め込みがちですが、マルチタスクは40%もの生産性を下げるという研究や、過度なマルチタスクを行う人は適切な情報を選別する力が低下するという研究もあります。こうなると、詰め込みすぎを避けつつワークスケジュールを管理する必要性が高まってきます。そこで、プロジェクト管理を助けてくれる便利なソフトやアプリなどのデジタルツールを使って、作業とその所要時間を「見える化」し、時間管理に役立てることをお勧めします。例えば――
時間のトラッキングができるサービス「Toggl」。英語のサイトですが構造はシンプルで、日本語表記への設定変更可。日本語版を開発中という噂も。無料と有料のプランがあり、自分の作業時間の把握だけでなく、チームメンバーを招待してそれぞれの作業時間を同じ管理画面で見ることもできるので、共同研究にも活用できそうです。Windows版もMac版もある上、モバイルにも対応。

入力するのも面倒なので、自動でトラッキングして欲しいという場合には「RescueTime」。実際に行った作業を「Communication & Scheduling」「Social Networking」などのカテゴリ別に自動でトラッキングできるタイムマネジメント・ツールです。グラフで表示されるので生産性はもちろん、時間帯ごとに何に時間を費やしていたかなどが一目で分かるので、まさに「見える化」が可能です。
もちろん、これら以外にも多くのタイムマネジメント・ツールが出回っていますし、更新されています。それらの機能や特徴を検索・比較して、自分に合ったツールを選んでください。作業時間を計測し、「見える化」することで時間の使い方を意識するようになれば、スケジュールにメリハリを付けながら時間管理ができるようになるでしょう。

⑤ 余白を残す
タスクが見えたら、スケジュールに余白を残すように心がけましょう。スケジュールには5割程度の余裕をもっておくとよいとも言われますが、余白がないと何か起こったときに対処するのが難しくなります。実験はもちろん、すべての物事が思い通りに進むとは限りません。余白があれば、想定外のことが起きても柔軟に対応できます。突発的な作業の追加で、予定していた作業が先送りになったり、無駄な時間が生じたりすれば効率性は下がってしまうので、時間のロスを出さないためにも余白を残しておくという発想が必要です。

 

与えられた期間内で成果を出すことが求められる研究者の中には、「タイムマネジメントを考える時間すらない」という方もいるでしょう。しかし、タイムマネジメントのやり方次第で、作業効率は大きく変わりますし、ストレスやプレッシャーの感じ方も変わってきます。自らが時間(タイム)を管理(マネジメント)すべく、自分のスケジュールを振り返ってみてください。ここで挙げたポイントが効率的なタイムマネジメントに役立つことを願っています。

 

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