論文翻訳を行う時に注意するポイント

論文翻訳は、世界中の読者に論文を届けるために有効な手段ですが、翻訳する際には、いくつか押さえておくべき注意点があります。研究内容に応じたトーン、意味、要点を保ちつつ、ターゲットとなる読者に響く訳文に仕上がるようにしなければなりません。

ここでは、論文(原稿)を翻訳して投稿するにあたって、注意すべきポイントを確認しておきましょう。

やるべきこと:翻訳作業の前に注意すべきこと

まず、翻訳作業を成功させるために、作業の前にやっておくべきことを挙げておきます。

文化的に特有な表現を見直し、修正する

慣用句や文化的背景を反映した表現の翻訳は、直接的あるいは簡単な表現に訳せないことが多いため、学術論文の翻訳において最も困難な問題の一つです。

また、元言語では一般的な文化的引用でも、そのまま訳したのでは対象読者が理解できずに、内容がきちんと伝わらない、さらには読者に不快感を与えてしまう可能性すらあります。例えば、地元の祝日、本、イベント、音楽など、読者になじみのないものに言及すると、すぐに興味を失ってしまうことでしょう。

これを解決するには、次のような対策をとりましょう

– 翻訳する前に、言及した文化的背景に関連した文脈を追加する(特に翻訳会社に依頼する場合は、認識を共有させておくことが望ましい)。

– どうしても必要ではなければ、誤解を生む可能性のある文化的記述を削除する。

– 対象読者にとって適切な表現に文章を修正するように翻訳者に依頼する(翻訳者が対象言語の文化的背景についても知識があることが前提となります)。

シンプルな表現にする

著者がで論文を書くときは長いフレーズや複雑な文章を書きがちです。言語ペアによっては、元言語にターゲット言語には存在しない語句やフレーズが多く、単純な言葉の置き換えでは意味が伝わらない翻訳となってしまいます。文章が理解しにくくなること、誤訳されることを防ぐには、複雑な言い回しなどを避け、シンプルな表現で書くようにします。

内容の編集と修正を行う

翻訳作業を準備する段階で、原稿の内容を見直し、必要な修正を行うことをお勧めします。例えば、誤字脱字がある場合や、より分りやすい表現に置き換えられる場合には、翻訳前に修正しておきます。

原稿の見直しを行う際には、ターゲット言語を念頭に言葉を選択し、より簡潔な文章にするよう心がけましょう。

また、内容を読み返しながら、執筆時にはなかった文献や研究についての言及を追加することも検討します。新しい情報を加えることで、研究の妥当性と関連性を大幅に高めることができます。

さらに、翻訳後の対象言語で書かれた著書や論文についての引用を加えることも一案です。そうすることで、読者にとってあなたの論文がよりインパクトの高いものになるでしょう。

きちんと事前準備をして翻訳された文章は、より多くの読者に読まれることとなり、結果として著者・研究者の影響力を高めることができます。

新しい読者の視点で論文を読んでみる

著者が自分の書いた原稿をより良くするために、読者の視点から客観的に論文を読むという手法があります。特に翻訳書は、新しい読者に良い第一印象を与えるチャンスが限定されてしまうので、読者の目線で論文を見直しておくことは重要です。

ターゲットとなる地域での研究動向を調べたり、出版されている論文を読んだりすることで、自分の論文がどのように受け取られるかを理解することができます。また、ターゲット読者の興味を引くために、自分の原稿をどのように修正する必要があるかを知ることもできます。

さらに、ターゲットとする市場によって、受け入れられやすい文章の長さやグラフィックの好みに差がある可能性が高いことも考慮すべきです。

原稿を読みながら、アブストラクト(要旨)やキーワードを見直し、論文の重要性が明確になるように修正し、論文の露出を増やすことで、より多くの読者を惹きつけられるようにしましょう。

書式の要件に準拠する

特に国際的に読まれている学術雑誌(ジャーナル)や学会誌などでの出版を目指す場合には、出版社や学会によって書式の要件が異なることを念頭に置いておきます。投稿先が指定する書式の仕様に対応するため、要件を熟読し、指定の書式に準拠し、必要に応じた調整を行います。

投稿先が好むフォントの種類からページ数の制限など、出版社の方針も踏まえ、早い段階で書式要件に合わせておきます。早めに対処しておけば、後で修正に要する手間が省け、予定通りに論文投稿準備を進めることができます。

翻訳者に背景知識となる情報を共有する

学術論文には、その分野の専門用語や論文投稿時点で定訳が確立されていない用語などが

使用されています。専門用語の直訳は困難なことも多いので、翻訳作業を依頼する際には、キーワードをまとめた用語集を作成し、そこに使用頻度の高い専門用語も記載しておくと、翻訳作業がスムーズになります。特に翻訳会社に依頼する場合には、こうした用語集を提供しておくと、希望する表現に合った翻訳原稿を作成してくれるでしょう。

学術用語の中には、世界共通で使用される用語もあり、翻訳が必要ない場合もあります。このような用語は拾い出しておき、どのように記載するかの対処法を翻訳者と協議しておくと翻訳作業がスムーズに進行します。

やってはいけないこと:翻訳作業で注意すべきこと

ここまでは「やるべきこと」を見てきましたが、ここから「やってはいけないこと」、つまり翻訳作業で注意すべきことを見ていきます。以下に挙げる失敗を避けることで、翻訳と投稿作業をより迅速に進めることができるでしょう。

翻訳会社の選択ミス

一番大きな落とし穴となりうるのが、翻訳会社の選択ミスです。適切な翻訳会社を慎重に吟味しましょう。優れた翻訳会社を見つけるには、それぞれの研究分野に精通した言語スペシャリストを擁しているかを見極めることが肝心ですが、それに加えて以下の点についても確認しましょう。

– ターゲット言語を母国語とする翻訳者が在籍しているか

– 翻訳メモリによる用語集の管理が可能か

校正の追加などのアフターサービスが利用可能か

– 論文投稿先の選択サポートなどの投稿支援サービスの有無

機械翻訳を利用する翻訳サービスが選択できるか、機械翻訳が利用可能な場合には機械翻訳後の正確性を保証する(MTPE)の提供はあるか

これらの点を踏まえ、依頼原稿を理解し、課題を克服するためのサービスを提供してくれる、実績のある翻訳会社を見つけることが重要です。

複数の意味を持つ言葉の使用

原稿に複数の意味に受け取れる言葉が含まれている場合、誤訳される可能性があります。意図したのとは異なる意味でとられたり、文脈の中で意味が変わってしまったりすることを避けるため、こうした言葉は使用すべきではありません。

– 同音異義語(homonyms):発音や綴りは同じだが、異なる意味を持つ単語

– 同綴異音異義語/同形異音異義語(heteronyms):綴りは同じだが、発音と意味が異なる単語

可能であれば、紛らわしい単語は別の選択肢に置き換えましょう。もし、これらの特定の単語を文中に残す必要がある場合は、翻訳者がその単語を意図通り認識できるように工夫が必要です。優良な

に在籍する熟練した翻訳者であれば、最適な訳文を提案してくれるでしょう。

皮肉やジョークを入れ込むこと

皮肉やジョークは、他の言語に翻訳されると、意図した目的や意味を失ってしまうことがあり、理解されない、または不快な印象を与えることもあります。

誤訳や誤解されることを避けるために、翻訳前に原文から皮肉やローカルジョークを省くことを検討してください。ただし、これらの要素が文章に不可欠な場合は、翻訳者にその旨を伝え、読者にとってより意味のあるターゲット言語での同等の表現を考えてもらうようにしましょう。

イデオロギーの違いへの配慮の欠如

対象読者の文化について配慮するとき、研究で提示するイデオロギーとの違いと、ターゲット地域の読者があなたの研究をどう受け止めるかに配慮します。学術論文はコンセプトや視点を共有するために書かれることが多く、こうした視点はターゲット市場で主流の考え方と大きくぶつかる可能性があります。だからと言ってその市場への進出を諦めるということではなく、原稿の読者を選ぶ際には、対象とする市場・読者層のイデオロギーの違いにも配慮することを留意すべきです。

翻訳作業に必要な時間をとらないこと(時間的配慮の不備)

研究論文を翻訳すると決めたら、急いで翻訳しなければと焦るかもしれませんが、翻訳に十分な時間をかけず、最終的な訳文の質が下がっては本末転倒です。訳文に間違いが生じないように注意して作業を進めるとともに、翻訳の品質を確保するための品質保証プロセスを省くべきではありません。

翻訳プロセスは、次のように進められるのが望ましいとされますので、依頼する翻訳会社がどのようなプロセスで作業を進めるかを確認しておきましょう。

– バイリンガルかつ、分野の専門知識を有する翻訳者が翻訳作業を行う

– 分野の専門家である別の(2人目の)バイリンガル翻訳者が、原文と照らし合わせて訳文の確認を行う

– 校正者が訳文全体を確認し、文章の調整を行う

こうした翻訳および品質保証プロセスを経ることによって、品質を確保できるだけでなく、後から間違いを修正するための時間を費やす必要がなくなり、結果的には時間の節約になります。

膨大な時間をかけて書き上げた研究論文を翻訳し、出版することは、論文を新しい読者と共有するためには不可欠です。研究の認知度を上げ、より多くの読者に論文を読んでもらうようにするためには、良質な翻訳が必要です。

論文著者の要望に柔軟に対応してくれる翻訳会社を見つけ、翻訳作業を依頼することが大切なのです。

まとめ

国際的な学術ジャーナルや学会誌などに論文を発表するために、論文を翻訳するのであれば、できるだけ良質な翻訳となるように、いくつかの点に注意してください。押さえておくべきポイントに留意することで、翻訳と出版の両プロセスを効率的に進め、より多くの読者に論文を読んでもらい、研究成果を広めることができるようになります。

 

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