第11回 デジタル画像 作成時のひと工夫

国際学会でのプレゼンを成功させるには、聞き手を引きこむ英語スピーチに加え、見やすいスライド作りも重要な鍵となります。より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい色覚 バリアフリー なスライドを作るために覚えておきたい「カラー ユニバーサル デザイン」について迫る連載シリーズです。


学術発表におけるデジタルカラー画像の使用頻度が高まっています。第11回の今回は、医学生物学領域で使用頻度の高い蛍光多重染色画像を例にとり、多くの色覚型に伝わりやすい“ほんの一工夫”を紹介します。
 

  1. 単色画像はグレースケールで
  2. 今日、蛍光顕微鏡や共焦点レーザー顕微鏡の画像はデジタルカメラで撮影して、パソコン上で疑似カラーを用いて表現します。単色の画像を黒バックに赤や緑や青で提示しているものが多くありますが、この場合、色には意味がありません。むしろデメリットの方が多くなります。特にP型の人には黒い背景に赤い色は見にくく、一般型の人にとっても黒い背景に青色などは見にくいものです。

    また、ポスターや論文などの印刷物においてカラー画像は不鮮明になる欠点があります。特に緑色はトラブルが多いと言われます。これは、顕微鏡で取得された画像がRGB 形式であるのに対し、印刷は一般的にCMYK方式であるため、変換により階調が飛んでしまうためです。白黒画像であれば、細かいシグナル強度の差も鮮明に表現でき、印刷時のトラブルが少なくなります。単色画像はぜひ白黒のグレースケールで提示しましょう。
     

  3. 2重染色画像では「赤―緑」を「マゼンタ―緑」に
  4. 蛍光2重染色では、黒い背景に「赤」と「緑」で表現し、赤と緑が共存する部分が「黄色」で表現されるのが一般的です。ところが、この色の組み合わせは、P型、D型の人には非常に見づらいものです。P型色覚の見え方をシミュレーションしたものが図11-1下段の一番左の画像です。赤が暗く、緑と黄色が見分けにくいことがわかります。

    そこで、岡部正隆氏(東京慈恵会医科大学解剖学講座)は、P型、D型のみならず一般型のC型の人も含め、ほぼすべての人に理解できる蛍光二重染色画像の提示方法として、赤のシグナルをマゼンタ(赤と青を1対1で混ぜた赤紫色)に変更することを提唱しています。こうすれば、もともと赤かった部分は青寄りに見え、マゼンタと緑が共存する部分は「白色」で表現されるため、3つの色が明確に区別できます(図11-1下段の一番右の画像)。
     

  5. Photoshop上で赤チャンネルの絵を青チャンネルにコピーするだけ!
  6. では、「赤―緑」から「マゼンタ―緑」への変更はどのようにすればよいのでしょうか。多くの顕微鏡では疑似カラーとしてマゼンタを選択できますので、それを活用するのが最も簡単ですが、すでに撮影した赤緑画像についても、RGBモードの画像であればPhotoshopで簡単に変更できます。

    具体的な手順は図11の通りです。Photoshopで赤緑画像を開き、レイヤーウィンドウの中のチャンネルのタグを選択します。次に、赤チャンネルだけを表示させ(ショートカットは⌘+1またはctl+1)、赤チャンネルの画像のすべてを選択し(⌘+Aまたはctl+A),これをコピーします(⌘+Cまたはctl+C)。そして、青チャンネルだけを表示させます(⌘+3またはctl+3)。赤緑画像であれば青チャンネルには何も表示されませんので、先程コピーした赤チャンネル画像をペーストします(⌘+Vまたはctl+V)。そして全チャンネルを表示させると(⌘+^またはctl+^)、「マゼンダ―緑」の画像ができます。慣れれば数秒でできる操作です!
     
    Cyan_Magenta1

    Cyan_Magenta2

    図11 蛍光二重染色において「赤―緑」を「マゼンダ―緑」に変更する方法[岡部正隆氏の許可を得て次の文献より転載:岡部正隆、伊藤啓(2005)医学生物学者向き 色盲の人にもわかるバリアフリープレゼンテーション法(http://www.nig.ac.jp/color/bio/)。下段は上段画像に対するP型色覚のシミュレーション(Vischeck使用)]

  7. 各チャンネルの画像はグレースケールで提示
  8. 多重染色においては、各チャンネル単独の画像も並べて提示することが多く、それらをカラーで提示しているものが多く見られます。しかし先に述べた通り、カラー画像は印刷物においては階調が飛び不鮮明になってしまいます。したがって、各チャンネルの画像はぜひ白黒のグレースケールで提示しましょう。
     

  9. 3重染色画像では最も有効な提示方法を
  10. 3重染色画像には、赤緑青の各色に加え、2色の重なり部分、3色の重なり部分の合計7色が混在することとなります。このような画像はカラフルで一見情報豊富ですが、色弱の人のみならず一般色覚型の人にも伝えられる情報はむしろ少なくなります。

    3重染色では、2つのチャンネルで示す分布関係が重要で、残りの1チャンネルは位置情報を示すためのみに使用されている場合があります。そのような場合は、重要な2チャンネルを「マゼンタ―緑」で提示し、もう1つのチャンネルを別にグレースケールで提示する方法もあります。

    発表者が伝えたいことを多くの人に正確に伝えられるよう、撮影に利用した色にこだわらず、最も有効な デジタル画像 作成方法を選択しましょう。
     
     


    参考資料:
    岡部正隆(2010)蛍光顕微鏡画像におけるカラーユニバーサルデザイン. 顕微鏡 45(3)184-189
    岡部正隆、伊藤啓(2005)医学生物学者向き 色盲の人にもわかるバリアフリープレゼンテーション法
    Masataka Okabe, Kei Ito(modified 2008)Color Universal Design(CUD)- How to make figures and presentations that are friendly to Colorblined people
    岡部正隆、伊藤啓(2002)色覚の多様性と色覚バリアフリーなプレゼンテーション 第3回すべての人に見見やすくするためには、どのように配慮すればよいか. 細胞工学21(9)1080-1104
     

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