第12回 カラーユニバーサルデザイン・日本から世界へ

国際学会でのプレゼンを成功させるには、聞き手を引きこむ英語スピーチに加え、見やすいスライド作りも重要な鍵となります。より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい色覚 バリアフリー なスライドを作るために覚えておきたい「カラー ユニバーサル デザイン」について迫る連載シリーズです。


世界に先駆ける日本の「カラーユニバーサルデザイン(CUD)」の取り組みはどのような背景から生まれてきたのか、CUDO副理事長の伊賀公一氏と同副理事長の田中陽介氏にお話を伺いました。

    1. 色が「使える」条件

色をなぜ使うのか?色が「使える」から使うのだ、と伊賀氏は言います。モノクロが当たり前だった状況からカラー化を進めるには一定のコストがかかりますが、日本にはその経済力がありました。
また、日本には教育上の共通インフラのようなものがあり、色で情報を伝えることのできる素地がありました。色に意味を持たせる場合に必要な一定レベルの印刷技術や塗装技術もありました。つまり日本には、いろいろな意味で色を使える条件が(色弱者以外には)そろっていました。海外旅行に行くと、言語、文化、宗教の多様性を実感します。そのようななかで、公共のサインなどにはアイコンを使うのが最も確実であって、色分けしておけば情報が伝わるという認識はほとんどないといいます。

    1. 「左利きと何が違うの?」

一方、日本の小学校では2002年まで全員に色覚検査を行っていました。これは世界に類をみないものです。また、色弱者にはかなりの職業の制限があり、身内からも黙っておくように言われることが普通でした。ひと昔前は左利きも修正されたことを考えれば、皆と同じであることがそれほどに重要だったということです。
田中氏によれば、米国では鉄道・航空など交通系や警察官の就職試験時に色覚検査が行われるものの、消防では行われなかったり、学校での一斉検査もないため、問題意識は低いといいます。特に西洋の文化は個人主義で、色覚についても個人の問題と捉えられているようです。実際、伊賀氏は 色弱 のイギリス人科学者に「左利きと何が違うの?」と言われたことがあるそうです。

    1. 日本発の成功事例になれば

日本はよい意味でも悪い意味でも色に対してセンシティブであるがゆえに、CUD (Color Universal Design) という新たな概念が生まれたと言えそうです。CUDはより多くの色覚型に情報が正しく伝わるデザインを目指している点において画期的です。田中氏は、「個人主義もあいまって孤立した色弱者は世界中にいるはずだが、日本の取り組みを成功事例として、独りで悩まずにすむ社会になればよい」と述べています。


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