間違いやすい用語や表現 – abbreviate

日本人学者の論文において、動詞「abbreviate」が誤用されているのをしばしば目にします。最もよく見受けられる誤用は、「abbreviate」が「omit」や「delete」の意味を表すものとして用いられていることです。「abbreviate」にはこうした意味はありません。
上述の誤用はおそらく、日本語の「省略する」の誤訳に起因するものでしょう。「省略する」は、「短くする」という意味で用いられている多くの場合には「abbreviate」に相当しますが、それ以外の意味だと「abbreviate」は誤訳とみなされます。特に、「省く」の同義語として使用される場合には、「省略する」は「abbreviate」ではなく、「omit」、「delete」、「remove」、「eliminate」、「drop」などに訳すべきです。このような意味を示すのに「abbreviate」は全く不適切と思われます。
以下は「abbreviate」の典型的な誤用を示します。


(1) [誤] From this point, we abbreviate the dependent variables and write g(x,y)
(1) [誤] simply as g.
(1) [正] From this point, we /omit/drop/ the dependent variables and write g(x,y)
(1) [正] simply as g.

(2) [誤] Here, we abbreviate the derivation of the solution to Eq. (3.4), and instead
(2) [誤] merely present its result.
(2) [正] Here, we /omit/do not carry out/ the derivation of the solution to Eq. (3.4),
(2) [正] and instead merely present its result.

詳しくはグレン・パケット:『科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現』(京都大学学術出版会,2004)の第1章をご参照下さい。


Dr. Paquette

グレン・パケットGlenn Paquette

1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。

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