研究を発表するジャーナルについて思い悩むのは、あなただけではありません。データを集め、あらゆる可能性を考察し、自信を持って投稿できる論文を完成させるのに膨大な時間と労力を要したはずですから、その発表の場に最適なジャーナルを選びたいと思うのは当然です。面倒な投稿プロセスを考えると、尚更です。
ここでは、それぞれの論文に最適なジャーナルを探すのに考慮すべき16のポイントをご紹介します。
読者層
始めから当たり前のようなポイントに思われるかもしれませんが、想定読者層の決定は、ジャーナル選択において特に重要なプロセスですので、慎重に行うべきです。自分の原稿を誰に届けたいかを明確にしましょう。たとえば、研究成果を広く知ってもらうのが目的であれば、読者数が多く、オンラインに強みのあるジャーナルを探すのがよいかもしれません。
一般読者が興味を持つ研究内容か、それとも特定の集団のみを対象とするものかをはっきりさせることが重要です。例えば、医学研究の中でも一般の人々にとっても有用な内容もあれば、医療従事者の中でもごく限定された読者に向けて書かれた内容もあるでしょう。
ジャーナルの目的や扱う領域
読者層が、自分の想定読者層に合致するジャーナルがあれば、そのウェブサイトを熟読し、その主な目的や重要視していることを把握しましょう。サイトに目を通すことで、そのジャーナルがどのような種類の論文に重きを置いているかはすぐに分かります。
掲載論文を読みながら、それらの論調や情報、視点が自分の研究と親和性のあるものかを確かめ、かけ離れたものであれば別のジャーナルを検討しましょう。また、自分の論文の目的が、ジャーナルの掲げる目的に合致するかも大切です。
その雑誌のスコープ(収録範囲)も調べましょう。幅広い分野を網羅しているのか、あるいは特定の分野に絞った論文のみを掲載しているのかで、自分のニーズに合うかどうかを判断できます。
刊行年数
長い歴史を持つジャーナルへの投稿を目指しましょう。出版部数の多さに加え、刊行年数の長さによってオンラインや大学図書館での注目度は左右されます。ジャーナルは古ければ古いほど良いと考えるのが無難で、創刊5年未満のジャーナルには注意が必要です。
リジェクト率
ジャーナルにリジェクトされることを望む人はいませんが、不採択は必ず発生します。ジャーナルによってリジェクト率は異なり、そのジャーナルがどのようなものかを理解する指標となります。例えばリジェクト率の高いジャーナルは、権威も高いかもしれませんが、出版の基準を満たすことが非常に難しいのかもしれません。逆にリジェクト率が低いジャーナルは、刊行を続けるために多くの投稿を必要としているのかもしれません。むやみに論文を出版することは、ジャーナル自体と投稿された論文の評価を下げることになります。
リジェクト率が中程度のジャーナルが総じて最良の選択となるでしょう。定評のある出版社から出版され、論文が評価を受けることになるからです。
海外の読者層
発表する言語も重要です。論文を翻訳すれば、より多くの読者に研究を届けることも可能になります。国際的に認知されたジャーナルを選び、そのジャーナルとの関係を築きましょう。それにより研究を世界に発信することもできるでしょう。
国際的に通用する外国語論文に仕上げるには、論文翻訳を専門的に行う会社の利用が推奨されます。
倫理面
倫理に関するジャーナルの基準は、ウェブサイト上に明確に記載されているはずです。サイトを確認すると、機密保持、利益相反、剽窃・盗用、内部審査委員会の承認、ゴーストオーサーシップ、画像操作に関する情報が簡単に見つかるでしょう。ジャーナルが倫理的な説明責任を果たしていない場合、研究論文がどのように扱われるかは自明です。
また、自分の論文が倫理的基準を満たしていることを確認するため、投稿前にを利用しましょう。
出版までに掛かる時間
それぞれの研究に重要性がありますが、より発表が急がれる種類の情報が存在します。論文発表を急ぐ場合は、オンラインと紙媒体の両方で、ジャーナルの出版頻度をチェックし、締め切りや独自の出版スケジュールを守っているかを確認しましょう。
ジャーナルによって、論文の出版までにかかる時間は異なります。論文を投稿してから出版されるまでにどれくらいの時間がかかるか調べてみましょう。プロセスが長引けば、研究発表が遅れるだけでなく、情報が古くなる可能性もあります。進行中の研究に寄与するため、早期の発表が必要な研究の場合は、出版スケジュールを特に気にかけましょう。
過去に投稿した研究者
投稿先候補のジャーナルにすでに発表した著者について知ることで、そのジャーナルの評判や目標が分かります。手始めに、著者のGoogle Scholarの引用スコアから、その論文が他から何回引用されたかを確認し、著者が他に論文を発表した版元や、分野での知名度などを調べます。
ジャーナルのクオリティ
ジャーナルを読む際は、誤字脱字や句読点の間違い、文の明瞭さなどに注意しましょう。文法ミスが見落とされていることに気づいたら、編集の質が悪いと判断してよいでしょう。さらに、論文のタイトルや要旨にも気を配りましょう。意味が分からないものや、研究の要点が十分に説明されていないものがある場合は、適切な査読がなされていない可能性があります。
査読プロセス
ジャーナルの査読プロセスについての透明性にも注目しましょう。評判の良いジャーナルであれば、以下の情報を開示しているはずです。
– 査読の基準
– 査読者の名前
– 査読の際の手法
– 査読者に与えられる時間
– 編集委員会が査読プロセスを管理する方法
また、機密保持、利益相反、バイアス、倫理基準など、査読者に関わる問題にどう対処しているかについても、ジャーナルが開示しているかを確認してください。
出版社
投稿先の目標のひとつとなるのが、学術機関が運営する雑誌です。特に学術界では、掲載誌の格が後々にまで影響を及ぼします。商業誌でも、一流企業や著名な編集者が携わるものはそれなりの評価を受けます。いずれも難しいという場合でも、その他の商業誌を探してみる価値はあるでしょう。しかし無数に存在する商業出版社の中には、その分野に新規参入したばかりの企業や、まったく無名の版元もあるため注意が必要です。確実に信頼できる出版社に論文を投稿するのが一番です。
編集委員のメンバー
ジャーナルの編集委員は、その分野で高く評価されている研究者で、その研究はジャーナルの目的とスコープに合致しているべきです。有名な機関に所属し、その分野で高い実績のある研究者で編集委員が構成される雑誌は、優れた雑誌である可能性が高いでしょう。また、サイト上に編集委員の連絡先が記載されているジャーナルも、自分たちの評価に自信を持っている印です。
著作権契約
著作権には、著者が自分の論文をあらゆる媒体で使用、拡散、普及、表示、修正する権利が包括されています。自分の論文を将来どのように再使用したいかを念頭に置いて、著作権契約書に署名すべきです。学術ジャーナルの中には、著者に自身の論文についての全権を与えるか、少なくとも出版後の論文の利用を許可するものもあります。
論文を投稿することを決める前に、ジャーナルの著作権方針と契約書を必ずよく読んでください。投稿支援サービスを利用すれば、自分の希望が満たされるかどうか、契約書の内容を確認することができます。
インデックス
研究者が研究を始めるとき、多くの場合、評価の高いインデックス付きのデータベースで情報を探すことから始めます。ですから、投稿先には、主要な書誌・引用データベースで索引(インデックス)付けされているジャーナルをターゲットにすることが不可欠です。
索引付けされたジャーナルのメリット
- 読者の増加 データベースで情報を探そうとする研究者は、索引付けされた雑誌を読むようになります。そして、閲覧が増えれば、さらに多くの読者の目に触れるようになります。
- 評価の向上 アクセスのしやすさはそのジャーナルの評価にプラスの影響を与えます。研究者が頻繁に利用するジャーナルは、高い評価を受けるようになり、信頼できる情報源として受け止められるのです。
- アクセシビリティの向上 ジャーナルの一番の目的は、研究者に届くことであり、索引付けはそれを後押しします。データベースが雑誌のインデックスを作成すると、ユーザーはすぐにそれを利用できるようになります。
オープンアクセスジャーナル
オープンアクセス(OA)出版は、代金を支払って論文にアクセスできる購読型の出版とは違って、読者が無料で論文にアクセスできる出版形式です。
OAでは、ジャーナルは論文を集めて一度に発行するのではなく、準備ができ次第、随時オンラインで公開します。そのため論文の公開までのプロセスがより迅速に進み、重要な研究を、関心を持つ人々に早く届けられるようになるのです。
ジャーナルのインパクトファクター
ジャーナルのインパクト・ファクター(JIF)は、引用分析の一種で相対的な重要度によってジャーナルを分類またはランク付けするものです。インパクトファクター(IF)の低いジャーナルは、インパクトファクターの高いジャーナルほど頻繁に引用されないため、IFの高さもジャーナルを選択する際の指標になります。
インパクトファクターは、以下のような人々にとって参考となるでしょう。
- 自分の論文を発表するにふさわしいジャーナルを探している著者
- 蔵書の質を向上させたい図書館
- 学術的な生産性を判断し、昇進や終身在職権に関する決定を行おうとしている学術研究機関
ジャーナル投稿で考慮すべき点は数多くありますが、最も重要な点は、あなたの研究が敬意を持って扱われ、可能な限りの最善の方法で広められることです。要件に満たないジャーナルや、手法に疑問のあるジャーナルに妥協してはいけません。自分に合った出版を確実に行うには、ジャーナル選択や投稿を支援するサービスをご活用ください。
概要
発行されているジャーナルの数を考えると、研究論文の投稿は面倒な作業に思えるかもしれません。この記事では投稿先を選択する際に考慮すべき重要なポイントをリストアップしました。このポイントに沿って、あなたの研究に最適なジャーナルを見つけてください。